Trick or Treat?

「俺は・・・、三年前はお前の魔法学校に通ってた魔導帥やったんや・・・」
「あたしの・・・?」
「せや。せやから最初お前に出会った時びびったわ・・・。もしかして俺の事知っとるんやないか思ったから・・・」
その言葉に柳宿は黙って首を振った「それがえぇんや・・・。俺の名前はその学校から帳消しにされたから・・・」
「何で・・・?如何してよ・・・?」
「さっきの奴にこの人間界から俺のデータを全て消された・・・。俺は人間やない・・・。吸血鬼やというデータが代わりに植え付けられたんや・・・」
「そんな・・・」
「まぁ、周りは大袈裟に騒がせたなんて言うとるけどな。そんな凄い奴でもかった・・・。せやけど悪霊祓いくらいは任された事あるな・・・」
「それでも凄いじゃないの・・・」
それはコウジに聞いていた
「でも如何して吸血鬼なんかに・・・」
「・・・・」
そこで翼宿に影が射した様な気がした
「俺の・・・女が・・・」
女?
「殺されたんや・・・」
「殺・・・」
「さっきの奴に・・・。俺は仮にも魔導帥で有りながら彼女を死なせてしまったんや・・・。自分の無力さに腹が立って情けなくて絶望した・・・」
「・・・・」
「そんな時に悪魔が俺の心の隙に入り込んで人間の心を蝕んでいったんや・・・」
「タスキ・・・」
「そして俺は吸血鬼の道を選んだ・・・。女なんかに関わらず只痛めつけるだけのそんな吸血鬼にな・・・」
拳が震えていた
「せやけどそれは自分を痛めつけてる事と同じやった・・・。ずっとずっとあいつへの想いを無視してる様な感じがして・・・。せやけど・・・」
そこでタスキはヌリコに向かい合った

「お前に会って俺は変わった・・・」

ヌリコの喉の奥がかあっと熱くなった
「お前は今まで会った女とは違うて強くて気高い女やった・・・。それで俺は今度こそお前を襲わずに護ってやりたい思った・・・。まぁ性格は前の女とは正反対やったけどな・・・」
切なく笑うタスキに胸が痛んだ
「すまんな。こんな話・・・」
「ううん・・・」
ヌリコは泣いていた
泣きながらも首を必死に振った
そんなに彼女を愛していたんだ
こんなになっても
その代わりの女に自分はなれるのだろうか
なれる自信なんてない
でも自分も、こいつを護ってやりたいんだ
悪魔から
全ての災いから
「大丈夫だよ・・・」
タスキに抱きついて小さく呟いた
「あたしがいるよ。あんたを護ってあげるよ・・・。絶対にあんたを間違った道になんて進ませやしない・・・」
その言葉にタスキもヌリコの小さな身体をきつく抱きしめた
その涙を見せないように

二人の涙
それは静かに混ざり合い、お互いの絆を深く確かめ合っている
そんな気がした
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