Trick or Treat?
「ん・・・」
小鳥の囀りで目を覚ましたヌリコ
目の前には身繕いをしているタスキ
昨夜の事が思い出せない
何が如何したっけ
「お。起きたか?ヌリコ・・・」
今日の彼はやけに落ち着いている
そうだ
昨夜タスキと・・・
「・・・あの・・・」
「もう学校へ行く時間やろ?服着替えろ・・・」
見ると無防備な姿でシーツに包まって寝ていた
タスキはヌリコを見ない様にして服を手渡した
すぐにそれを羽織って入り口へ向かう
「じゃ・・・。また放課後来るから・・・」
「おい、ヌリコ・・・」
「ん?」
「その・・・、昨日の晩の事は婆さんには何て・・・」
タスキが恥ずかしそうにヌリコに問うた
微笑すると
「・・・大丈夫。学校の緊急お泊り会だったって言っておく・・・」
と、答えた
「さよか・・・」
「じゃ、行ってきます・・・」
「行ってらっさい」
お互い素直になれたのは、昨夜お互いの全てを知ったから
そう
お互いに我が身を捧げたあの晩から・・・
「ヌリコ。おはよう!!」
ホウキが今日も元気に声を掛けてくる
「おはよう・・・」
「如何したの?顔色悪いわよ?」
「ちょっと寝不足なだけよ・・・」
「そうなの?貴女また今度の試験に向けて勉強でもしてるんでしょ?」
「ま、まぁね・・・」
「気をつけてよ!貴女すぐ無理するんだから!」
さすがのホウキも昨夜自分に何が有ったのか気づかなかった
鞄から鏡を取り出す
今朝から一度も見ていないから
少し大人になった自分を
鏡に映った自分を見てヌリコは鏡をバッと隠した
「・・・どうしたの?ヌリコ・・・」
「何でもないっ!」
顔面真っ赤にして言葉を吐いた
何でもなくない
自分の髪の毛から見え隠れする首筋に、彼の痕が付いていたのだから・・・
「ふぅ・・・」
何とか一日やり過ごした
しかしその間中不自然な動きをしてしまったかもしれない
(しょうがないじゃない。これでもまだ思春期真っ盛りだもの)
自分に言い聞かせて箒で空を泳ぐ
その時
タスキと同じ服装の男性が目に付いた
(あの人・・・確か、コウジって人・・・タスキの親友の人よね・・・)
多分タスキの教会帰りなのだろう
そっと降りてみる
「・・・あの!」
「どわぁぁぁっ!びっくりしたぁ!」
一瞬派手に驚いてすぐに体勢を整える
「・・・あれ?もしかしてヌリコはん?」
「今日和・・・」
「どないしたんやぁ?あ。またあいつの所行くんか?妬けるなぁv」
「あの・・・、少しお話聞いてもらえませんか・・・?」
「・・・は?」
ヌリコの様子にコウジもやっと気づいたようだ
「さよか・・・。そないな事が・・・どうりであいつも変やと思った・・・」
「如何してあたしなんかにそんな事望んだんでしょうか・・・?」
「・・・・」
コウジはその真実を知っていた
しかしこの娘に自分から話してしまって良いものか迷った
でもタスキが我が身を捧げた相手
話しても如何もしないだろう
「あのな?ヌリコはん?驚かないで聞いてくれ・・・」
「・・・・」
「・・・あいつはな、昔魔導帥やったさかい・・・」
「えっ!?」
「しかもこの国を騒がせた・・・せやけどある事がきっかけで吸血鬼になってもうた・・・。それはもう少し経ってからあいつが話してくれるやろけどな・・・」
案の定開いた口が塞がらなかった
「そいで多分お前に会って自分のあるべき姿に戻りたくなったんやないか?」
「・・・どうして?」
「タスキの中に良心が芽生えたんやな・・・。あんたを護りたい言う・・・。魔導帥に戻れる方法は魔女と結納を交わす事なんや・・・」
「・・・・」
「あんたが火あぶりにされる日、あいつの目の色は吸血鬼やなかった・・・。本物の人間の目やったんや・・・。多分あの頃から・・・、あんたの事が好きやったんやないか?」
「タスキが・・・?」
「やなかったらそんな簡単に君に身体預けたりせぇへんやろ?」
ヌリコは恥ずかしそうに俯いた
「あんたはどうなんや?」
「え?」
「タスキの事好きなんやろ・・・?」
しばらく黙っていたが静かに首を縦に振った
「せやったらこれからもタスキに協力してくれるか?もう結納は無いで?せやけどほれ、ずっと側におってくれるとか・・・」
「はい・・・」
「あ、せやけど俺がタスキの本心ばらした事は言わんといてな!」
念押しされてヌリコは微笑んだ
「有難う御座いました・・・」
ヌリコはぺこんと頭を下げるとまた箒で空中浮遊へと出かけていった
その後姿を見て一言
「・・・タスキ・・・。今度こそ幸せになれるとえぇな・・・」
ギイッ
静かに扉を開ける
そこには、タスキが何時ものように座って自分を待っていた
「タスキ・・・」
その後姿に呼びかける
「おぉ。やっと来たか・・・」
「ごめん。遅くなって・・・」
ヌリコはタスキの横に腰掛けた
「あのさ・・・」
「ん?」
「これ、どうすれば良い?」
ヌリコは静かに自分の髪の毛を少しずらして首筋を見せた
その光景に一瞬タスキも度肝を抜かれた
「んなっ・・・!」
「消した方が良いの?」
しばらく慌てふためいていたがタスキは落ち着くと
「お前の好きにせぇ・・・」
とだけ呟いた
「じゃあ、消さない!」
ヌリコは笑顔で答えた
その言動にまたもや相手も唖然
そして呆れ返ってフッと笑った
その笑顔に胸が痛くなって、タスキの腕に自分の腕を絡めた
「護ってね・・・」
「・・・・」
「あたしの事ずっと・・・」
こいつはまさかもう真実を知っているのかもしれない
そうタスキも思った
タスキは小さなヌリコの頭を撫でながら
「あぁ・・・」
一言呟いた
貴方の優しさ
貴方の強さ
貴方の気持ち
全て知ったよ
だから、私の気持ちもいつか伝えたい・・・
小鳥の囀りで目を覚ましたヌリコ
目の前には身繕いをしているタスキ
昨夜の事が思い出せない
何が如何したっけ
「お。起きたか?ヌリコ・・・」
今日の彼はやけに落ち着いている
そうだ
昨夜タスキと・・・
「・・・あの・・・」
「もう学校へ行く時間やろ?服着替えろ・・・」
見ると無防備な姿でシーツに包まって寝ていた
タスキはヌリコを見ない様にして服を手渡した
すぐにそれを羽織って入り口へ向かう
「じゃ・・・。また放課後来るから・・・」
「おい、ヌリコ・・・」
「ん?」
「その・・・、昨日の晩の事は婆さんには何て・・・」
タスキが恥ずかしそうにヌリコに問うた
微笑すると
「・・・大丈夫。学校の緊急お泊り会だったって言っておく・・・」
と、答えた
「さよか・・・」
「じゃ、行ってきます・・・」
「行ってらっさい」
お互い素直になれたのは、昨夜お互いの全てを知ったから
そう
お互いに我が身を捧げたあの晩から・・・
「ヌリコ。おはよう!!」
ホウキが今日も元気に声を掛けてくる
「おはよう・・・」
「如何したの?顔色悪いわよ?」
「ちょっと寝不足なだけよ・・・」
「そうなの?貴女また今度の試験に向けて勉強でもしてるんでしょ?」
「ま、まぁね・・・」
「気をつけてよ!貴女すぐ無理するんだから!」
さすがのホウキも昨夜自分に何が有ったのか気づかなかった
鞄から鏡を取り出す
今朝から一度も見ていないから
少し大人になった自分を
鏡に映った自分を見てヌリコは鏡をバッと隠した
「・・・どうしたの?ヌリコ・・・」
「何でもないっ!」
顔面真っ赤にして言葉を吐いた
何でもなくない
自分の髪の毛から見え隠れする首筋に、彼の痕が付いていたのだから・・・
「ふぅ・・・」
何とか一日やり過ごした
しかしその間中不自然な動きをしてしまったかもしれない
(しょうがないじゃない。これでもまだ思春期真っ盛りだもの)
自分に言い聞かせて箒で空を泳ぐ
その時
タスキと同じ服装の男性が目に付いた
(あの人・・・確か、コウジって人・・・タスキの親友の人よね・・・)
多分タスキの教会帰りなのだろう
そっと降りてみる
「・・・あの!」
「どわぁぁぁっ!びっくりしたぁ!」
一瞬派手に驚いてすぐに体勢を整える
「・・・あれ?もしかしてヌリコはん?」
「今日和・・・」
「どないしたんやぁ?あ。またあいつの所行くんか?妬けるなぁv」
「あの・・・、少しお話聞いてもらえませんか・・・?」
「・・・は?」
ヌリコの様子にコウジもやっと気づいたようだ
「さよか・・・。そないな事が・・・どうりであいつも変やと思った・・・」
「如何してあたしなんかにそんな事望んだんでしょうか・・・?」
「・・・・」
コウジはその真実を知っていた
しかしこの娘に自分から話してしまって良いものか迷った
でもタスキが我が身を捧げた相手
話しても如何もしないだろう
「あのな?ヌリコはん?驚かないで聞いてくれ・・・」
「・・・・」
「・・・あいつはな、昔魔導帥やったさかい・・・」
「えっ!?」
「しかもこの国を騒がせた・・・せやけどある事がきっかけで吸血鬼になってもうた・・・。それはもう少し経ってからあいつが話してくれるやろけどな・・・」
案の定開いた口が塞がらなかった
「そいで多分お前に会って自分のあるべき姿に戻りたくなったんやないか?」
「・・・どうして?」
「タスキの中に良心が芽生えたんやな・・・。あんたを護りたい言う・・・。魔導帥に戻れる方法は魔女と結納を交わす事なんや・・・」
「・・・・」
「あんたが火あぶりにされる日、あいつの目の色は吸血鬼やなかった・・・。本物の人間の目やったんや・・・。多分あの頃から・・・、あんたの事が好きやったんやないか?」
「タスキが・・・?」
「やなかったらそんな簡単に君に身体預けたりせぇへんやろ?」
ヌリコは恥ずかしそうに俯いた
「あんたはどうなんや?」
「え?」
「タスキの事好きなんやろ・・・?」
しばらく黙っていたが静かに首を縦に振った
「せやったらこれからもタスキに協力してくれるか?もう結納は無いで?せやけどほれ、ずっと側におってくれるとか・・・」
「はい・・・」
「あ、せやけど俺がタスキの本心ばらした事は言わんといてな!」
念押しされてヌリコは微笑んだ
「有難う御座いました・・・」
ヌリコはぺこんと頭を下げるとまた箒で空中浮遊へと出かけていった
その後姿を見て一言
「・・・タスキ・・・。今度こそ幸せになれるとえぇな・・・」
ギイッ
静かに扉を開ける
そこには、タスキが何時ものように座って自分を待っていた
「タスキ・・・」
その後姿に呼びかける
「おぉ。やっと来たか・・・」
「ごめん。遅くなって・・・」
ヌリコはタスキの横に腰掛けた
「あのさ・・・」
「ん?」
「これ、どうすれば良い?」
ヌリコは静かに自分の髪の毛を少しずらして首筋を見せた
その光景に一瞬タスキも度肝を抜かれた
「んなっ・・・!」
「消した方が良いの?」
しばらく慌てふためいていたがタスキは落ち着くと
「お前の好きにせぇ・・・」
とだけ呟いた
「じゃあ、消さない!」
ヌリコは笑顔で答えた
その言動にまたもや相手も唖然
そして呆れ返ってフッと笑った
その笑顔に胸が痛くなって、タスキの腕に自分の腕を絡めた
「護ってね・・・」
「・・・・」
「あたしの事ずっと・・・」
こいつはまさかもう真実を知っているのかもしれない
そうタスキも思った
タスキは小さなヌリコの頭を撫でながら
「あぁ・・・」
一言呟いた
貴方の優しさ
貴方の強さ
貴方の気持ち
全て知ったよ
だから、私の気持ちもいつか伝えたい・・・