Trick or Treat?

あなたは、もし魔法が使えたら何をしますか?
テストでいい点を取る?もっと綺麗になる?
好きな人を振り向かせる・・・?
このお話は、小さな小さな魔女が、野蛮な吸血鬼に恋をしてしまうそんな物語


「もう~また、魔女検定不合格~?これで落ちるの・・・何回目よ~・・・」
箒にまたがり、金切り声をあげる一人の魔女
彼女の名は、ヌリコ
彼女は、先ほど受け取った魔女検定の不合格の通知を見つめてため息をついた
「試験官の目が節穴なんじゃないのぉ~?あたしより出来ない子いっぱいいるじゃない!!」
ヌリコは、通知を掌の上で燃やした
プライドが高くて負けず嫌いだったヌリコは、自分一人だけ合格出来ないのが何よりも不満だった
「も~~~・・・ホトホリ先生の馬鹿野郎~~~~~~~~~~」
ピタッ
すると、突然箒が止まった
「へ?」
次に起こる事は大体予想はつくであろう
ヌリコは、まっさかさまに街へ急降下
「きゃあああああああああああああああ」
ドガッ
バサバサッ
洞窟の天井をぶち壊し、毛布のようなものに飛び込んだ
「いたたっ・・・何よぉ~・・・箒まで言う事聞かなくなっちゃった訳~?」
どうにか無傷で済んだヌリコは、ため息をついて起き上がった
すると自分の下の毛布がのっそりと動いた
見ると・・・
橙色の髪の毛をした男が自分の下に寝そべっていた
「ひゃあああ!!!人ぉぉぉ!!!」
ヌリコは、悲鳴をあげてのけぞった
気絶しているのかと思い、ゆさゆさと揺さぶる
「ちょっと・・・あなた・・・大丈夫!?」
すると
「・・・あし」
「は?」
「じゃかあしい!!!誰や、俺の昼寝の邪魔をするんは!!!」
突然荒々しい口調で起き上がった男に、ヌリコは目をぱちくりさせた
「ん?」
「???」
「何や?その薄汚い格好はぁ?年頃の女がみっともあらへん」
その言葉に、ヌリコはかちんときた
「しっつれいねぇ!!!これは、れっきとした魔女の格好よ!!!」
「魔女~?魔女が何でこんなトコに落ちてくんねん!!」
「あれは・・・箒が言う事を聞かなかっただけで・・・」
ふと、箒の方に目をやる
「あ~~~~~~~~~~~~~~~!!!!」
「何やねんっ!!!さっきから、きーきーきーきー」
「あたしの箒が・・・折れちゃったぁ・・・」
さっきまで威勢がよかったヌリコの顔がみるみる青ざめていく
「これは・・・ばあやに魔女学校入学の時に貰った大切な箒なのに・・・」
男は暫く黙っていたが、手を差し出した
「何」
「貸せ」
「へ?」
「えぇから、貸せ!!!」
ヌリコは、首を傾げながら箒を男に手渡した
男は、箒に手をかざし何やら呪文を唱え出した
すると、みるみる内に箒の割れ目が修復した
「・・・・!!!???」
「ふぅ・・・これでえぇやろ。こうでもせんと、あんたやかましいのおさまらんやろ」
「あんた・・・一体・・・」
「見て分からんか?俺は、吸血鬼や!!」
「きゅ・・・吸血鬼!!!???じゃあ・・・あんた・・・人の血を・・・吸うの?」
「当たり前やん。俺らの好物さかいな」
その言葉に、ヌリコはうっとたじろいた
「んな警戒すんなて!!お前のまずそうな血なんぞ、誰も吸わんわ」
「なっ・・・!!あんたねぇ!!」
そこでヌリコは、また伏目がちになる

「本当・・・最低・・・何で、あたしってこんなついてないのかしら・・・」

「は?」
「あんたみたいなこんなトコでぐうたら昼寝してるような奴には分からないんでしょうけどねぇ!!あたしは今・・・不幸のどん底なのよ」
「それは、ご愁傷様」
男はあくびをしながら、立ち上がって入口へ行こうとした
「悩める女の話くらい聞きなさいよ、馬鹿!!」
ヌリコは、男の足元の落ち葉を魔法で燃やした
「どわっ!!何すんねん!!誰が好き好んで人の家の天井突き破ってきた女の話聞くかい!!」
「何で落ちてきた場所が、こんなデリカシー0な男の塒なのよ!!」
口を開けば痴話喧嘩
一体何なんだこいつはとお互いは睨み合う
「あたしだってねぇ・・・頑張ってるのよ、色々。一生懸命勉強してやっと入れた魔法学校なのに・・・検定にはあたしだけ受からないのよ?毎回、どう考えても納得が行かない結果・・・検定に合格しないとあたしだけ留年なの!!!」
男はボリボリと頭を掻いた
「そないな事、俺に言われてもなぁ」
「・・・もういいよ。失礼しました。あたし、帰るわ」
確かに
何を得体の知れない吸血鬼に話して聞かせているのか
ヌリコは、箒を持つと立ち上がった
すると
「待てぃ!!」
男に足をひっかけられ、ヌリコは無様に転んだ
「何すんのよぉ!?か弱い乙女に・・・」
「誰が乙女じゃ。ちゃんと直すもん直していかんとなぁ」
「何をよ!?」
「ん」
男は、天井を指差した
そこには、先ほど自分が落ちて壊した天井
太陽の光がさんさんと差し込んでいる
「俺、太陽の光が嫌いなんや。ちゃーんと直してって貰うで」
「なっ・・・直すったって、どうやって・・・?」
「落ち葉を燃やす事が出来るんやったら、欠片を集めて天井に戻す事くらい出来るやろ!!」
「あ・・・」
ヌリコは少し考えた
「~~~分かったわよ!!」
ヌリコは、天井の下まで行くと呼吸を整えた
手をかざし、呪文を唱え始めた
するとゆっくりと欠片が天井に浮かび上がり、完全に天井は修復した
「やれば出来るやんか」
「ふぅ・・・この魔法・・・体力使うのよね」
ヌリコは、額の汗を拭った
「よし!!これで、あたしの役目は終わり!!では、お世話になりましたぁ!!」
今度こそ、入口に向かうヌリコの足をまたもや男は引っ掛けた
「たっ!!!何なのよ!!??」
「まだや。まだ、お前には条件がある」
「はぁ~~~???何言ってんの!?これ以上、あんたに付き合って・・・」
「俺の三分の二の魔力使わせて箒治させた癖して、これで終わらせるとは言わせへんで!!!」
彼の言動には苛付く
「何なのよ!?一体」
「これから一週間、ここまで菓子を持って来い!!!」
「はぁ~~~???何であたしがそんなパシリみたいな事・・・」
そこで、男はヌリコの顎をぐいと引いた
「忘れてへんやろな?俺は、吸血鬼や。その気になれば、お前なんぞいつでも殺せるんさかいな」
三白眼を剥き出しにして不敵に微笑む男に、さすがのヌリコもびびってしまった
「返事は?」
「あ~~~もう!!!分かったわよ!!」
「よし★」
意外とひょうきんに微笑んだ男の手を、ヌリコは乱暴に引き離した
「明日からやで!!忘れんなよ!!」
「分かってるわよ!!」
「おい!!」
「何よっ!!!???」
「お前の名前は?」
「ヌリコよっ!!!あんたこそ、何て名前よ!?」
「俺は一応、タスキって名前や」
「タスキね!!はいはい・・・」

最悪な出会いを遂げた二人
しかし、出会いとは不思議なものです
それは運命に変わる事もあるんです
1/14ページ
スキ