LOVE HOSPITAL
コンコン
重苦しい扉を叩く音がした
今日は翼宿が戻ってくる日
柳宿は待ちきれない様子で昨夜は眠れなかったようだ
扉が開かれる
しかし入ってきたのは若い女医師だった
柳宿は首を傾げた
「あの・・・?」
「初めまして。此処の女医師の田中という者です・・・」
女医師は丁寧にお辞儀をした
「今日から貴方の担当をさせていただきます・・・」
「・・・!?・・・あの・・・、翼宿は・・・?」
「・・・翼宿医師は、自ら貴方の担当を降りました・・・。貴方の希望する女医師と交替してくれと・・・」
「えっ・・・!?」
「訳は知りませんが・・・。とにかく今日から宜しくお願いします・・・」
「待ってください!どうしてですか!?だって・・・」
「すみません。翼宿医師はもう貴方とは関わりたくないらしいです・・・」
その言葉に柳宿は失望した
「でわ・・・」
女医師は静かに病室から出て行った
「どうして・・・?」
柳宿は手の平の小さな鈴を見た
「どうしてよ・・・」
事務室で仕事をする翼宿
しかしその顔には活気がなかった
そこに助手の中井がやってきた
「・・・翼宿。本当にいいのか・・・?美奈子看護婦、どうかしてるんだよ・・・」
「いや・・・。美奈子看護婦の言う通りや。医者は患者を差別してはいけないんや・・・」
「そんな事でいいのかよ。あっちは何も分かってないんだぞ・・・?」
「・・・これがあいつのためにもなるんや・・・。それに・・・」
「それに?」
「俺、美奈子看護婦と付き合う事になった・・・」
「!?」
「えぇっ!?」
陰で聞いていたナースチームも一斉に二人の前に踊り出た
「わっ!何ですか!?皆さん!」
中井がのけぞった
「何で美奈子なんかと付き合うんですか!?」
「そうよ!あの子大人しいのに・・・」
ナースチームは翼宿に詰め寄った
「・・・しゃあないんや・・・。これがあいつの請求する口止め料なんや・・・」
「口止め・・・?お前何かしたのか・・・?」
「いや・・・、何でもあらへん・・・」
「でも・・・、柳宿さん、ショックですよ・・・」
「そうですよ。ずっと貴方を待ってたのに・・・」
ナースチームも今となっては二人を応援しているようだ
廊下をとぼとぼ歩く柳宿
(どうして・・・?翼宿・・・。あたし、何かしたの・・・?)
すると廊下の向こうから翼宿が歩いてきた
「・・・・!」
二人は目が合ってその場に立ちすくんだ
「・・・翼宿・・・」
「・・・・・」
翼宿はためらうように柳宿の横を通り過ぎようとした
「待って!」
柳宿に腕を掴まれた
顔はそのまま背けたまま翼宿は立ち止まった
「どうしてなの・・・?約束したじゃない・・・」
柳宿の声が震えている
翼宿は瞳をきゅっと閉じた
「・・・すまん。仕事あるから・・・」
ふりほどこうとしたが柳宿は離さない
「答えてよ・・・」
柳宿は涙を流した
「・・・俺ら、誤解されてんねん・・・。せやからもうお前とは会えない・・・」
「誤解・・・!?」
「この前の夜の事、見られてたんや」
柳宿はハッとした
「えぇやないか・・・。希望してた女医師やで・・・?結構腕も立つ人やから・・・」
「それでいいの!?あんたはそれでいいの!?あたしとの二つの約束破るのよ!?」
誰もいない廊下に二人の影が長く伸びた
「・・・すまん・・・」
もう問えなかった
柳宿は脱力したように翼宿の腕を離した
翼宿はコツコツと廊下を歩いていった
「翼宿医師・・・。お疲れのようですね・・・」
夜勤の翼宿に美奈子は問い掛けた
「じゃなくて、今は翼宿かしら・・・?」
美奈子は昼間とは打って変わっての態度で翼宿に接した
いきなり翼宿の胸に美奈子が寄り添った
「辞めろ・・・。仕事中やろ・・・?」
「どうして・・・?あの子とはこんな事やってたのに・・・」
翼宿は唇をかんだ
「ねぇ・・・・、あの子の事本当はどう思ってるの・・・?」
「・・・・!どうって・・・」
「私となんか本心で付き合ってる気ないって分かってるわ・・・。貴方の心の中には別の子がいるのよね・・・」
美奈子はうつむいた
「私は本気で貴方の事愛してるわ・・・。でも貴方は・・・?」
「美奈子看護婦・・・。やっぱり俺考え直すわ・・・。今朝は軽すぎた・・・」
「何言ってるのよ?あの夜の事ばらしてもいいの・・・?」
美奈子は計画的な顔で翼宿を仰ぎ見た
「ね?貴方は私から離れられないのよ・・・。あの子が退院するまでは・・・」
「・・・ねぇ。翼宿君・・・」
「はい?」
田中に声をかけられて翼宿は振り向いた
「あのね。柳宿さんの事なんだけど、あの子食事も食べないし薬も飲む気になってないのよ・・・。このままじゃ、やばいのよ・・・」
田中は顔をしかめた
「そうですか・・・」
「やっぱり、貴方がいいみたいなのよ・・・」
翼宿は目をそむけた
「すみません・・・。それは・・・」
「ちょっと!柳宿さん!?何やってるんですか!?」
美奈子の声に二人は一斉に声のする方を見た
見ると柳宿がナースステーションに来ている
「翼宿医師を出して!!このままじゃ、駄目になるのよ!!」
「何をわがまま言ってるんですか!?病院内では静かにしてください!!」
「翼宿!!聞こえてるんでしょ!?あたし、このままなんて許せない!納得いかない!!」
翼宿は陰で黙って聞いていた
「あたし、最初はあんたが担当医なんて嫌だった・・・。でも今はあんたしかいないって分かった・・・」
「さぁ、病室に戻りましょう!」
「あんたが戻ってくるの楽しみにしてたんだよ!?この病気もあんたと一緒なら乗り越えられるって思ってたのよ!!」
美奈子が柳宿の両腕を掴んだ
「離して!!あたしはこの病気を翼宿に治してもらいたいんだから!!!」
柳宿の涙が流れ落ちた
翼宿は歩みだした
「翼宿ぃ・・・!!」
柳宿がその場に崩れ落ちた
そこに翼宿が来た
「翼宿医師・・・!!」
美奈子が意味をこめた表情で翼宿を見た
「ばらすなら、ばらせ。でも、俺はこいつを治さなあかんのやから・・・」
翼宿は崩れ落ちた柳宿を抱き起こした
「翼宿・・・」
「すまんな・・・。柳宿・・・」
「翼宿!!」
柳宿は翼宿に抱きついた
翼宿もよしよしと柳宿の頭を撫でた
そして柳宿を抱き上げると柳宿を病室に連れて行った
「ちょっと・・・!」
美奈子が声をかけようとした時、誰かに手を掴まれた
見ると中井だった
「もうやめてください・・・。あの二人は本当に信頼し合っているんですから・・・」
美奈子はチッと舌打ちした
病室のベッドに寝かされた柳宿は翼宿の手をしっかり握っていた
「翼宿・・・。もう絶対あたしの側から離れないでね・・・」
「あぁ・・・」
「約束だからね・・・」
二人は互いの小指を絡めた
「これからも・・・、宜しく・・・」
重苦しい扉を叩く音がした
今日は翼宿が戻ってくる日
柳宿は待ちきれない様子で昨夜は眠れなかったようだ
扉が開かれる
しかし入ってきたのは若い女医師だった
柳宿は首を傾げた
「あの・・・?」
「初めまして。此処の女医師の田中という者です・・・」
女医師は丁寧にお辞儀をした
「今日から貴方の担当をさせていただきます・・・」
「・・・!?・・・あの・・・、翼宿は・・・?」
「・・・翼宿医師は、自ら貴方の担当を降りました・・・。貴方の希望する女医師と交替してくれと・・・」
「えっ・・・!?」
「訳は知りませんが・・・。とにかく今日から宜しくお願いします・・・」
「待ってください!どうしてですか!?だって・・・」
「すみません。翼宿医師はもう貴方とは関わりたくないらしいです・・・」
その言葉に柳宿は失望した
「でわ・・・」
女医師は静かに病室から出て行った
「どうして・・・?」
柳宿は手の平の小さな鈴を見た
「どうしてよ・・・」
事務室で仕事をする翼宿
しかしその顔には活気がなかった
そこに助手の中井がやってきた
「・・・翼宿。本当にいいのか・・・?美奈子看護婦、どうかしてるんだよ・・・」
「いや・・・。美奈子看護婦の言う通りや。医者は患者を差別してはいけないんや・・・」
「そんな事でいいのかよ。あっちは何も分かってないんだぞ・・・?」
「・・・これがあいつのためにもなるんや・・・。それに・・・」
「それに?」
「俺、美奈子看護婦と付き合う事になった・・・」
「!?」
「えぇっ!?」
陰で聞いていたナースチームも一斉に二人の前に踊り出た
「わっ!何ですか!?皆さん!」
中井がのけぞった
「何で美奈子なんかと付き合うんですか!?」
「そうよ!あの子大人しいのに・・・」
ナースチームは翼宿に詰め寄った
「・・・しゃあないんや・・・。これがあいつの請求する口止め料なんや・・・」
「口止め・・・?お前何かしたのか・・・?」
「いや・・・、何でもあらへん・・・」
「でも・・・、柳宿さん、ショックですよ・・・」
「そうですよ。ずっと貴方を待ってたのに・・・」
ナースチームも今となっては二人を応援しているようだ
廊下をとぼとぼ歩く柳宿
(どうして・・・?翼宿・・・。あたし、何かしたの・・・?)
すると廊下の向こうから翼宿が歩いてきた
「・・・・!」
二人は目が合ってその場に立ちすくんだ
「・・・翼宿・・・」
「・・・・・」
翼宿はためらうように柳宿の横を通り過ぎようとした
「待って!」
柳宿に腕を掴まれた
顔はそのまま背けたまま翼宿は立ち止まった
「どうしてなの・・・?約束したじゃない・・・」
柳宿の声が震えている
翼宿は瞳をきゅっと閉じた
「・・・すまん。仕事あるから・・・」
ふりほどこうとしたが柳宿は離さない
「答えてよ・・・」
柳宿は涙を流した
「・・・俺ら、誤解されてんねん・・・。せやからもうお前とは会えない・・・」
「誤解・・・!?」
「この前の夜の事、見られてたんや」
柳宿はハッとした
「えぇやないか・・・。希望してた女医師やで・・・?結構腕も立つ人やから・・・」
「それでいいの!?あんたはそれでいいの!?あたしとの二つの約束破るのよ!?」
誰もいない廊下に二人の影が長く伸びた
「・・・すまん・・・」
もう問えなかった
柳宿は脱力したように翼宿の腕を離した
翼宿はコツコツと廊下を歩いていった
「翼宿医師・・・。お疲れのようですね・・・」
夜勤の翼宿に美奈子は問い掛けた
「じゃなくて、今は翼宿かしら・・・?」
美奈子は昼間とは打って変わっての態度で翼宿に接した
いきなり翼宿の胸に美奈子が寄り添った
「辞めろ・・・。仕事中やろ・・・?」
「どうして・・・?あの子とはこんな事やってたのに・・・」
翼宿は唇をかんだ
「ねぇ・・・・、あの子の事本当はどう思ってるの・・・?」
「・・・・!どうって・・・」
「私となんか本心で付き合ってる気ないって分かってるわ・・・。貴方の心の中には別の子がいるのよね・・・」
美奈子はうつむいた
「私は本気で貴方の事愛してるわ・・・。でも貴方は・・・?」
「美奈子看護婦・・・。やっぱり俺考え直すわ・・・。今朝は軽すぎた・・・」
「何言ってるのよ?あの夜の事ばらしてもいいの・・・?」
美奈子は計画的な顔で翼宿を仰ぎ見た
「ね?貴方は私から離れられないのよ・・・。あの子が退院するまでは・・・」
「・・・ねぇ。翼宿君・・・」
「はい?」
田中に声をかけられて翼宿は振り向いた
「あのね。柳宿さんの事なんだけど、あの子食事も食べないし薬も飲む気になってないのよ・・・。このままじゃ、やばいのよ・・・」
田中は顔をしかめた
「そうですか・・・」
「やっぱり、貴方がいいみたいなのよ・・・」
翼宿は目をそむけた
「すみません・・・。それは・・・」
「ちょっと!柳宿さん!?何やってるんですか!?」
美奈子の声に二人は一斉に声のする方を見た
見ると柳宿がナースステーションに来ている
「翼宿医師を出して!!このままじゃ、駄目になるのよ!!」
「何をわがまま言ってるんですか!?病院内では静かにしてください!!」
「翼宿!!聞こえてるんでしょ!?あたし、このままなんて許せない!納得いかない!!」
翼宿は陰で黙って聞いていた
「あたし、最初はあんたが担当医なんて嫌だった・・・。でも今はあんたしかいないって分かった・・・」
「さぁ、病室に戻りましょう!」
「あんたが戻ってくるの楽しみにしてたんだよ!?この病気もあんたと一緒なら乗り越えられるって思ってたのよ!!」
美奈子が柳宿の両腕を掴んだ
「離して!!あたしはこの病気を翼宿に治してもらいたいんだから!!!」
柳宿の涙が流れ落ちた
翼宿は歩みだした
「翼宿ぃ・・・!!」
柳宿がその場に崩れ落ちた
そこに翼宿が来た
「翼宿医師・・・!!」
美奈子が意味をこめた表情で翼宿を見た
「ばらすなら、ばらせ。でも、俺はこいつを治さなあかんのやから・・・」
翼宿は崩れ落ちた柳宿を抱き起こした
「翼宿・・・」
「すまんな・・・。柳宿・・・」
「翼宿!!」
柳宿は翼宿に抱きついた
翼宿もよしよしと柳宿の頭を撫でた
そして柳宿を抱き上げると柳宿を病室に連れて行った
「ちょっと・・・!」
美奈子が声をかけようとした時、誰かに手を掴まれた
見ると中井だった
「もうやめてください・・・。あの二人は本当に信頼し合っているんですから・・・」
美奈子はチッと舌打ちした
病室のベッドに寝かされた柳宿は翼宿の手をしっかり握っていた
「翼宿・・・。もう絶対あたしの側から離れないでね・・・」
「あぁ・・・」
「約束だからね・・・」
二人は互いの小指を絡めた
「これからも・・・、宜しく・・・」