LOVE HOSPITAL

「ちょっと~!?こんなに食べなきゃいけないわけ?」
「何わがまま言うとるんや!これくらいお前の胃なら入るわい!」
「永遠の胃袋じゃないんだから勘弁してよね!」
目の前に詰まれた食料を前に柳宿はため息をついた
これが彼が言う健康プランなのか
「さぁ!さっさと食べる!食堂の方も心込めてこんなに作ってくれたんやで!」
「分かりましたよ・・・。でもこれで本当に治るんでしょうね?」
「俺を信じろ!何処に患者をじわじわ弱らせてく医者がおるんや!」
今度は翼宿がため息をついた
「いただきま~す・・・」
柳宿は箸をとった
「ほな、食い終わった頃にまた来るからな!」
と言うと翼宿は病室から出て行った

「ねぇねぇ。此処の310号室の柳宿さんと翼宿医師、仲いいよね~」
「何でも昔二人とも同じ医学部だったんだってよ?」
「え~?じゃ、翼宿医師とられちゃうかもしれないじゃない?」
「そうよね~。あの子結構可愛いし・・・」
「これは負けてられないわよ!ナースチーム!」
「おぉ!!」
近くで二人の会話を聞いていた翼宿医師強奪ナースチームはそう言うと拳を振り上げた
「何やってんの!?あんた達!仕事中でしょ!?それに病院内でそんな大声出さない!」
後ろで主任がしかめっ面をした
「すみません~」
看護婦は一斉に散らばった

「翼宿。あの子のレントゲンからこんな物が見つかったんだ・・・」
助手の医師からレントゲンを渡され、翼宿は目を見開いた
「!これは・・・」
「そうだ。悪性新生物。あの子肝臓にこんな物まで持ってたんだ・・・」
「・・・・・」
「病状もかなり悪化してきてるし、このままだと・・・」
翼宿は険しい表情になった
「かなり苦しい戦いになるな・・・」
「あぁ・・・」
「俺に出来る事あったら何でも言ってくれよな!」
「おおきに・・・」
心強い医師に軽く翼宿は笑顔を返した。

「どや?もう食い終わったか?」
「もう~!二日目からこんなのきついわよ~!!」
「何言うてるんや!まずは食べる事が健康への近道や!!」
お膳を片付けながら翼宿は柳宿に念押しした
「・・・ねぇ?」
「何や?」
「あたしさ、不治の病じゃないよね?」
そこでお膳を片付ける翼宿の手が止まった
「大丈夫よね・・・?あたし、治るよね?・・・あたしさ、実はまだ看護婦目指してるのよ・・・。小さい頃から闘病生活続けててその時三回くらい入院して・・・。その時随分色々な看護婦さんに助けられたの・・・」
翼宿は柳宿に振り向いた
「・・・お前らしいな」
翼宿はフッと笑った
「・・・治る?」
「あぁ。治るで。治してみせるから」
ふいに翼宿にかけられた言葉に柳宿はドキリとした
やっぱり担当医こいつでよかったな
そう思えた

午前0時
翼宿は今朝渡されたレントゲンとにらめっこしていた
「どうだ?何か解決策は見つかったか?」
横で相棒の医師がコーヒーを翼宿の前に置いた
「おおきに・・・。やっぱり分からんのや・・・。見ると結構拡大しとるし・・・」
「緊急手術しかないのか?」
「そうなる事に・・・」
プルルルル
ナースコールが二人の会話を妨げた
「何や?」
「・・・310号室・・・。柳宿さんか・・・?」
翼宿はすぐさまナースコールに出た
「何や!?どないした!?」
「・・・・・・・」
「柳宿!?おい!どないしたんや!?」
受話器の向こうから苦しそうな息が聞こえる
すぐに受話器を切ると翼宿は駆け出した

310号室の扉を勢いよく開けた
そこには苦しそうに机にナースコールを握って突っ伏している柳宿の姿があった
「柳宿!!」
翼宿はすぐさま柳宿に駆け寄った
「大丈夫か!?発作か!?」
「・・・胸が苦しいの・・・」
その言葉に翼宿はドキッとなった
まさか悪性新生物・・・
柳宿は汗をびっしょりかいている
「待っとけ!今助手を・・・」
「いい!!」
「え?」
振り向く翼宿に柳宿が抱きついた
「何・・・!」
「こうしてれば・・・、治るから・・・」
「柳宿・・・」
「あたしの病気治してくれるんでしょ?絶対・・・」
柳宿の息の荒さが伝わってくる
「あぁ・・・」
「どんな事があっても・・・、絶対に・・・?」
「あぁ・・・!」
翼宿は柳宿の背中に手を回して、背中を摩った
「よかった・・・」
柳宿は翼宿の胸の中で安堵の息をついた
「絶対治して・・・、お前を看護婦にしてみせるからな・・・」
「そしたらさ・・・、あたし、あんたと一緒に仕事したい・・・」
「・・・えぇで・・・。その代わり厳しいからな・・・」
「うん・・・」
翼宿は柳宿の頭を撫でた
それを見ている一人の影が憎しみに燃えていたとも知らずに・・・

翌朝
柳宿が目を覚ますと、そこには翼宿がいた
自分の手を握って眠っている
柳宿は一瞬ドキンとなった
そうだ
昨夜からずっと此処にいてくれたんだっけ
あたしのわがまま珍しく聞いてくれて・・・
やっぱりこいつ患者には本当は優しいんだね・・・
柳宿はおととい見た翼宿の優しい笑顔を思い出した
(素直じゃないんだから・・・)
柳宿はそっと翼宿の頭に手を置いた
(あたし、昨日翼宿にしか来てほしくないって思った・・・何で・・・?)
柳宿は自分の中に芽生えつつあるもう一つの病に気付いたのだった

「だ~か~ら!今日は勘弁しなさいよ!!健康プランは!」
「あかん!!そんな事言ってたらちっとも治らへん!!」
「もう~!!昨日あんなひどい目に遭ってるあたしを忘れたの!?」
「あんな事でへこたれてたら病気に負けるで!!」
今日も病室に響く怒鳴り声
それを歯を食いしばって見ているナースチーム
「諸君!やばいわ!昨日何かあの二人にあったのよ!!」
「そうよ!みんな今日は翼宿医師へのコーヒー誰が早く美味しく作れるかゲームしましょう!!」
「おぉ!!」
拳を振り上げるナースチーム
その後ろで眉をひくつかせる主任
「げ・・・」
「病院内はお静かに!!」
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