TEACHER×STUDENT

担任にセクハラされて
理科教師に助けられて
担任が理科教師を脅した
神に運命を決められた
教師と生徒
二人運命から
逃げました

ブロロロロロロ
黒い車が車道を滑る
運転しているのは理科教師
助手席には俯いたままの生徒
「・・・柳宿、何処行こか?」
少し明るく尋ねる
「・・・何処でも良いよ・・・。何処か遠くまで行ければ・・・」
相手はぽつりと呟くだけ
その両の拳は固く握り締められたまま、唇を噛んでいる
この狂った生徒を連れて、さて何処へ行こうか
翼宿は迷った

あれから中々立ち上がらない柳宿を駐車場までおぶって来た
まるで泣いた赤ん坊をあやすみたいに

とりあえず車を停めた
何故かって?
彼女がまた泣き出したからだ
小さく肩を震わせて顔を覆って
今の自分に出来る事
それはこのボロボロの生徒を癒してあげるだけだ
黙って彼女が泣き止むのをじっと待っていた
何度か泣き出してはまた車を止めての繰り返しだったが、それでも翼宿は一言も言葉を発しなかった
彼女の傷には、誰も触れてはいけないのだ
只じっと待ってやって、癒してあげる事しか他人には出来ない

「着いたで!」
車を走らせて約一時間
着いた場所は牧場の様に広い土地
緑が生い茂っていて青空との地平線を綺麗に彩っている
「此処は・・・?」
涙で景色がぼやけていたので一瞬天国に来たのかと思った
翼宿がそっと柳宿の手を握った

「天国や・・・」

その言葉に時間が止まった様な気がした
そうか
彼は私を「天国」に連れてきたのだ
誰とも関わらない誰とも会わない
「天国」に・・・

「翼宿!」
遠くで手を挙げて呼びかける一人の青年
天国の番人だろうかと思ったくらいだ
「敦!!」
翼宿も答えた
「如何したんだ?まだ今の時間は仕事中だろ?」
「否、都合で抜け出して来たんや・・・。こいつのお守りにな・・・」
「あれ?この子、お前の生徒か?」
「あぁ」
「可愛いな~vんでもってコレか?」
そう言って小指を突き出す
「そんなんちゃうて!・・・なぁ、敦・・・。久々に乗せてくれへんか?」
「良いけど、お前あの時の手際覚えてるのか?」
「安心せぇ!バッチリや!」
柳宿は会話の流れに着いていけないようだった
「ほな、行こか?柳宿!」
翼宿が柳宿に向かって笑顔を作った
そう言って手を引かれた

そこには大きな熱気球

「昔な、教師になる前、此処でバイトしてたんや」
翼宿は夢の道化師みたい
「さ、乗れや」
少し戸惑ったが翼宿に支えられて籠に乗った
「誰も居ないトコに行こか」
その言葉と同時に頭上のパイプに火が点けられた
ゴオオオオオオッ
激しい音を立てて、ゆっくりと気球が上がった
空へ高く高く
柳宿は本当に天国に居る気分だった
もうすぐで夕焼けに染まりそうな青空の彼方へ吸い込まれていく
驚きの表情を隠せない柳宿を見て翼宿は話しかけた

「柳宿・・・。明日は学校へ行け・・・。お前にまた鬼澤が何かしてきたら俺が護ったる・・・。俺がクビになったってお前の側から離れたりせぇへんから・・・。せやから安心せぇ・・・」

そうだよ
こいつが味方だよ
何時だってどんな時だって

静かに頷いた
そんな柳宿の頭を撫でると翼宿は気球の加速をさせた
少し背伸びした翼宿に柳宿は抱きついた
少しバランスを崩して気球は傾いたが、翼宿はすぐに柳宿を抱きしめてやった
お互い固くその絆を確かめ合った
青い青い天国の空の上で
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