TEACHER×STUDENT
「翼宿先生・・・」
書類の整理をしていた所を呼びかけられた
振り返るとそこには、3-5の担任鬼澤
柳宿の担任だ
むさ苦しそうな顔と図体がでかい身体の彼は、生徒からの笑われ者か嫌われ者であった
その顔にお似合いな表情で此方を見ている
「如何したんですか?怖い顔して・・・」
大体話の筋は見えていたが、顔を背けて尋ねた
「ふざけるな・・・!」
突然襟首を掴まれた
「・・・何なんですか?一体・・・」
少し不機嫌そうにもう一度尋ねる
「ウチのクラスの柳宿を毎日此処に連れ込んでいるそうではないか・・・。言っておくがウチの生徒はお前の暇潰しの為に居る訳では無いぞ・・・!」
その言葉にフゥとため息をつくと襟首の手を自分から振り解いた
「別にそんなんではありません・・・。柳宿が悩んでいるからその相談に乗ってあげてるだけです・・・。変な誤解はよしてください・・・」
お前みたいな性格の教師など信用できないから、柳宿は此処に来るんだといった様な目で鬼澤を睨む
「フン!お前みたいな誑かし教師はな!その内この学園から追い出してやるからな!」
乱暴に理科室の扉を閉めて鬼澤は出て行った
落ち着いて椅子に座る
確かに最初はそうだった
只誑かして、あいつの事知ろうとしてた・・・
でも今はあいつも自分を信用しかけている
この前だって笑ってくれた
これ以上あいつに地獄を味合わせたくない
自分が護ってやらねば
そう誓ったのだ
「柳宿・・・」
「何?」
フラスコの中の液体をかき混ぜながら返事をする柳宿
「鬼澤ってどんな先生や?」
「居たっけ?そんな人・・・」
「お前の担任やろ?」
「あぁ・・・。あの親父・・・。もう一緒に居るだけで嫌・・・。自分の名誉だけで物事言う最低な奴よ・・・。生徒の事何処まで考えてるのか全然判らない奴・・・」
「そうか・・・」
「何か言われた?」
そこでフラスコをかき混ぜていた手を止めて此方を向く
「否・・・、如何やらお前が此処に来てる事感づかれてるんや・・・。せやから今度から気ぃつけて此処来いよ・・・。」
「あいつに目つけられたの・・・。厄介ね・・・」
「そんな人事みたいに・・・」
「ま、大丈夫よ。あいつ生徒指導にすぐ教室出ちゃうし。滅多にはち合わせる事なんて無いから・・・」
落ち着いてるな、こいつは
安心して信用した
鬼澤が裏をかいた作戦を立てていたとも知らずに
次の日
生徒がすぐに部活に出かけた午後四時半・・・
柳宿は日直の仕事で教室に一人残っていた
もう少しで仕事が終わろうとした時
ガラッ
鬼澤が入ってきた
身を竦めた
如何して?
こんな時間に教室に来るなんて
柳宿は言い知れぬ不安にかられ始めた
「まだ残ってたのか?」
嫌に優しい
「えぇ・・・。でももうすぐ終わりますので・・・」
「柳宿・・・」
「・・・はい」
低く押し殺した様な声に鳥肌が立った
「最近、翼宿先生の所へ通ってるのか?あんな教師の何処が良いんだ?」
あんたなんかよりよっぽど良い教師よ
そう言いたくなるのを抑えた
「別に・・・。只気まぐれで通ってるだけですから・・・」
「相談事が有るなら先生に相談してくれよ・・・。柳宿・・・」
振り返ると怖い鬼澤の顔
「あの・・・。あたしもう行きますので・・・」
鞄を持って出口へ向かおうとした
そこに大きな鬼澤が立ちはだかった
「・・・・!」
「・・・先生、辛いんだよ。柳宿・・・。みんな俺を避けて俺を嫌ってな・・・。しまいには妻と娘に逃げられて・・・。もう俺如何して良いか判らないんだよ・・・。なぁ。柳宿・・・。教えてくれよ・・・。先生を頼ってくれよ・・・」
ゆっくりと近づいてきて毛むくじゃらの手が柳宿の肩を掴んだ
「離してください・・・」
顔を背けた
その仕草にかっとなった鬼澤は
バシッ
柳宿を殴った
ガラガラッ
机に思い切りぶつかる
「・・・っ・・・」
打撲が出来た様な痛みが頭に走る
「お前まで何故俺を避けるんだ!!」
眉間に皺が寄っている鬼澤
その大きさに怖くて動けない
机の脚に体が凭れ、追い詰められた
「・・・何だ?このスカートの丈の短さは・・・。ったく・・・。生徒指導の俺が泣くよ・・・。俺のクラスの女子はみんなそうだ・・・」
じろじろと下半身を見つめる鬼澤に震え上がった
太腿を掴まれた
「嫌っ・・・!離して・・・!!」
「・・・俺の言う事聞かない奴はなぁ、身体で教えてやるんだよ!」
そう怒鳴るとスカートの中に手を入れた
「嫌っ・・・!」
最悪だ
こいつは只、生徒のセクハラをしたいだけだ
校則だの何だのといちゃもんをつけて
怖くて声が出ない
唇を噛んで耐える
入り口から声が聞こえたけど、助けを呼べない
机の海で気づかれない
涙が零れる
怖いよ
翼宿
ガラッ
誰かが扉を開けた
鬼澤の手の動きが止まる
後ろには息を切らしている翼宿
「鬼澤・・・!!貴様・・・!」
襟首を掴み、鬼澤を殴った
ガラーン
鬼澤は派手に机の脚に頭をぶつけた
「・・・何しとんねん!!お前は!!」
こんな怖い顔の翼宿
初めて見た
「何って・・・。生徒に身体で校則の厳しさを教えてやってたんだよ・・・。それの何処が悪い!?」
鬼澤も頭に血が上って叫んだ
「教えるだと・・・!?今お前がやってたんはセクハラとちゃうんか!?これがこの学園の指導やと!?ふざけんな!!」
「翼宿・・・!」
「ちくしょお!翼宿!クビだぞ!お前は!即刻クビだ!!」
鬼澤は唾を撒き散らして怒鳴ると教室を逃げる様に出て行った
静まり返る教室
二人息を切らしていた
翼宿がしゃがみ込んだら、柳宿の体が竦んだ
「大丈夫か・・・?」
本当に心配そうに覗き込んでくれる
どうフォローして良いか翼宿にも判らない様だ
さすがの翼宿でも・・・
涙で顔がぐちゃぐちゃで、髪の毛がバサバサのまま翼宿に抱きついた
「っ・・・く・・・。ひっ・・・く・・・」
震える柳宿の頭を撫でてやることしか翼宿には出来なかった
「柳宿・・・」
呼びかけると
「連れて行って・・・」
「え?」
「何処か遠くへ連れてって・・・。あたしを・・・、この街から・・・」
どうせ明日には翼宿はクビだろう
二人とも判っていた
翼宿は頷くと
「行こか・・・」
とだけ答えた
いつも冷静だった柳宿へ向けられた刃
それは誰もが予想もしない展開へと進んでいった
そして今大きな傷が柳宿の心の中に出来たのだ
それを癒せるのは、翼宿しかいない
書類の整理をしていた所を呼びかけられた
振り返るとそこには、3-5の担任鬼澤
柳宿の担任だ
むさ苦しそうな顔と図体がでかい身体の彼は、生徒からの笑われ者か嫌われ者であった
その顔にお似合いな表情で此方を見ている
「如何したんですか?怖い顔して・・・」
大体話の筋は見えていたが、顔を背けて尋ねた
「ふざけるな・・・!」
突然襟首を掴まれた
「・・・何なんですか?一体・・・」
少し不機嫌そうにもう一度尋ねる
「ウチのクラスの柳宿を毎日此処に連れ込んでいるそうではないか・・・。言っておくがウチの生徒はお前の暇潰しの為に居る訳では無いぞ・・・!」
その言葉にフゥとため息をつくと襟首の手を自分から振り解いた
「別にそんなんではありません・・・。柳宿が悩んでいるからその相談に乗ってあげてるだけです・・・。変な誤解はよしてください・・・」
お前みたいな性格の教師など信用できないから、柳宿は此処に来るんだといった様な目で鬼澤を睨む
「フン!お前みたいな誑かし教師はな!その内この学園から追い出してやるからな!」
乱暴に理科室の扉を閉めて鬼澤は出て行った
落ち着いて椅子に座る
確かに最初はそうだった
只誑かして、あいつの事知ろうとしてた・・・
でも今はあいつも自分を信用しかけている
この前だって笑ってくれた
これ以上あいつに地獄を味合わせたくない
自分が護ってやらねば
そう誓ったのだ
「柳宿・・・」
「何?」
フラスコの中の液体をかき混ぜながら返事をする柳宿
「鬼澤ってどんな先生や?」
「居たっけ?そんな人・・・」
「お前の担任やろ?」
「あぁ・・・。あの親父・・・。もう一緒に居るだけで嫌・・・。自分の名誉だけで物事言う最低な奴よ・・・。生徒の事何処まで考えてるのか全然判らない奴・・・」
「そうか・・・」
「何か言われた?」
そこでフラスコをかき混ぜていた手を止めて此方を向く
「否・・・、如何やらお前が此処に来てる事感づかれてるんや・・・。せやから今度から気ぃつけて此処来いよ・・・。」
「あいつに目つけられたの・・・。厄介ね・・・」
「そんな人事みたいに・・・」
「ま、大丈夫よ。あいつ生徒指導にすぐ教室出ちゃうし。滅多にはち合わせる事なんて無いから・・・」
落ち着いてるな、こいつは
安心して信用した
鬼澤が裏をかいた作戦を立てていたとも知らずに
次の日
生徒がすぐに部活に出かけた午後四時半・・・
柳宿は日直の仕事で教室に一人残っていた
もう少しで仕事が終わろうとした時
ガラッ
鬼澤が入ってきた
身を竦めた
如何して?
こんな時間に教室に来るなんて
柳宿は言い知れぬ不安にかられ始めた
「まだ残ってたのか?」
嫌に優しい
「えぇ・・・。でももうすぐ終わりますので・・・」
「柳宿・・・」
「・・・はい」
低く押し殺した様な声に鳥肌が立った
「最近、翼宿先生の所へ通ってるのか?あんな教師の何処が良いんだ?」
あんたなんかよりよっぽど良い教師よ
そう言いたくなるのを抑えた
「別に・・・。只気まぐれで通ってるだけですから・・・」
「相談事が有るなら先生に相談してくれよ・・・。柳宿・・・」
振り返ると怖い鬼澤の顔
「あの・・・。あたしもう行きますので・・・」
鞄を持って出口へ向かおうとした
そこに大きな鬼澤が立ちはだかった
「・・・・!」
「・・・先生、辛いんだよ。柳宿・・・。みんな俺を避けて俺を嫌ってな・・・。しまいには妻と娘に逃げられて・・・。もう俺如何して良いか判らないんだよ・・・。なぁ。柳宿・・・。教えてくれよ・・・。先生を頼ってくれよ・・・」
ゆっくりと近づいてきて毛むくじゃらの手が柳宿の肩を掴んだ
「離してください・・・」
顔を背けた
その仕草にかっとなった鬼澤は
バシッ
柳宿を殴った
ガラガラッ
机に思い切りぶつかる
「・・・っ・・・」
打撲が出来た様な痛みが頭に走る
「お前まで何故俺を避けるんだ!!」
眉間に皺が寄っている鬼澤
その大きさに怖くて動けない
机の脚に体が凭れ、追い詰められた
「・・・何だ?このスカートの丈の短さは・・・。ったく・・・。生徒指導の俺が泣くよ・・・。俺のクラスの女子はみんなそうだ・・・」
じろじろと下半身を見つめる鬼澤に震え上がった
太腿を掴まれた
「嫌っ・・・!離して・・・!!」
「・・・俺の言う事聞かない奴はなぁ、身体で教えてやるんだよ!」
そう怒鳴るとスカートの中に手を入れた
「嫌っ・・・!」
最悪だ
こいつは只、生徒のセクハラをしたいだけだ
校則だの何だのといちゃもんをつけて
怖くて声が出ない
唇を噛んで耐える
入り口から声が聞こえたけど、助けを呼べない
机の海で気づかれない
涙が零れる
怖いよ
翼宿
ガラッ
誰かが扉を開けた
鬼澤の手の動きが止まる
後ろには息を切らしている翼宿
「鬼澤・・・!!貴様・・・!」
襟首を掴み、鬼澤を殴った
ガラーン
鬼澤は派手に机の脚に頭をぶつけた
「・・・何しとんねん!!お前は!!」
こんな怖い顔の翼宿
初めて見た
「何って・・・。生徒に身体で校則の厳しさを教えてやってたんだよ・・・。それの何処が悪い!?」
鬼澤も頭に血が上って叫んだ
「教えるだと・・・!?今お前がやってたんはセクハラとちゃうんか!?これがこの学園の指導やと!?ふざけんな!!」
「翼宿・・・!」
「ちくしょお!翼宿!クビだぞ!お前は!即刻クビだ!!」
鬼澤は唾を撒き散らして怒鳴ると教室を逃げる様に出て行った
静まり返る教室
二人息を切らしていた
翼宿がしゃがみ込んだら、柳宿の体が竦んだ
「大丈夫か・・・?」
本当に心配そうに覗き込んでくれる
どうフォローして良いか翼宿にも判らない様だ
さすがの翼宿でも・・・
涙で顔がぐちゃぐちゃで、髪の毛がバサバサのまま翼宿に抱きついた
「っ・・・く・・・。ひっ・・・く・・・」
震える柳宿の頭を撫でてやることしか翼宿には出来なかった
「柳宿・・・」
呼びかけると
「連れて行って・・・」
「え?」
「何処か遠くへ連れてって・・・。あたしを・・・、この街から・・・」
どうせ明日には翼宿はクビだろう
二人とも判っていた
翼宿は頷くと
「行こか・・・」
とだけ答えた
いつも冷静だった柳宿へ向けられた刃
それは誰もが予想もしない展開へと進んでいった
そして今大きな傷が柳宿の心の中に出来たのだ
それを癒せるのは、翼宿しかいない