TEACHER×STUDENT

「翼宿・・・!?」
「随分遊んでくれた様やなぁ。聡史」
倉庫に現れたのは翼宿と警官二人
途端に警官が走り出して聡史を捕まえた
「なっ・・・何や!お前等!!」
「獄城聡史。強姦罪の疑いで逮捕する!!」
「なっ・・・!」
両手に手錠をかけられた聡史はもちろん柳宿までもが呆気にとられていた
そのまま訳が分からない顔で聡史は警官二人に連れられた
聡史とすれ違う時翼宿は呟いた
「もっと男気を持てや」
その言葉に聡史は少し顔を上げた様だったがパトカーにすぐに乗り込んだ
パトカーがサイレンを上げて走り去った

取り残された翼宿と柳宿
互いに向かい合っていた
柳宿は制服を破かれた無残な姿で震える瞳を翼宿に向けていた
翼宿は優しく微笑むと羽織っていた白衣を静かに柳宿にかけてやった
途端に柳宿が翼宿に抱きついた
「もう・・・もう・・・会えないと思ってた・・・」
泣きじゃくりながら翼宿にしがみつく
そんな頭を優しく撫でる翼宿
「・・・阿呆」
それだけ言った
「決着をつけたかった・・・あんたまで巻き込んだ聡史と・・・でも・・・こんな足じゃ抵抗できなくて・・・」
「ホンマに阿呆やな」
翼宿の顔を見た
「決着なんぞ汚い事はするもんやない。人間同士の付き合いは戦闘やないんや。今はホンマに汚い世の中やけどお前が染まってしまっては何もならん・・・」
嗚呼
また一つ教わったね
貴方に大切な事を
「ごめんなさい・・・」
「分かればよろしい」
翼宿は笑顔を作ると柳宿を静かに抱き上げてやった
大きな優しい手と白衣の暖かさは、柳宿をとても安心させてくれた


それから数ヵ月後
朱雀学園の卒業式
柳宿は一年遅れの卒業となったが、この一年間で彼女はとても大きく変わった
そう。それは、あの教師との出会いが有ったから
「柳宿!!」
式の終了後に声をかけられ、長く伸びた髪の毛を束ねた頭をくるりと回転させた
そこには、あの着任式の様なびしっとしたスーツ姿の翼宿
「翼宿!!」
嬉しそうに車椅子で駆け寄る
「卒業おめでとう」
「有難う」
「留年女の涙の卒業やな」
「何それ」
「まぁ、俺はお前が留年してくれて良かったかもな」
「・・・あたしもよ」
咲きかけの蕾の桜を見上げて二人は談笑した
「柳宿。せっかくの卒業なんやけど連れて行きたい所が有んねん」
「何処よ?」
「えぇからついてこい」
そう言って車椅子を押された

刑務所
翼宿が見張りの人に事情を話して中へ入れてもらった
面会室には、あの地獄の番人
「よ」
翼宿がやけに親しげに声をかける
「何やねん。また」
「今日はお前にとって嬉しい奴を連れてきたで」
「・・・誰や?」
「入れや」
翼宿が通したその人物は柳宿
「柳宿」
聡史は戸惑いを隠せなかった
事情を先に話された柳宿は微動だにしなかった
実はあの逮捕の日から、翼宿は聡史のカウンセラーとして刑務所に通っていたのである
人は変わるもの
そう信じて翼宿は接してきた
そのせいか彼も随分変わっていったのだ
そして今日
その「彼」と柳宿の対面
柳宿は車椅子を止めて窓越しに聡史を見つめた
「久しぶりね」
「おう・・・」
「染め直したんじゃない」
「柳宿・・・あのな・・・」
「ごめんなさい」
「え・・・?」
突然頭を下げられ聡史は驚いた
「あんたの事を酷く貶してた・・・。ずっと謝ろうとしてたの・・・」
「・・・柳宿」
「確かに貴方のした事は間違っていたわ。でもどんなに悪びれた事しても所詮は同じ人間。その人間を私は軽蔑してきた・・・。でも違うのよね・・・あんたもあたしも同じ人間・・・」
聡史の瞳が涙で濡れた
柳宿は窓の隙間から聡史の手をとって握った
「あんたがあたしを本当に愛していてくれていたなら・・・嬉しかったよ」
そう言うと微笑んだ
「すまん・・・すまんな・・・柳宿・・・」
「昔の・・・聡史ね・・・」
その言葉に聡史はハッとなった
「そういうあんたがあたしは大好きだったのよ」
「柳・・・」
「また会いましょう」
そう別れを告げ面会室を出た

外へ出た柳宿の瞳からは涙が伝っていた
そんな柳宿の頭を翼宿は撫でてやった
「あれが昔のお前等やったんやな」
「うん・・・」
「あいつも変わった。また新しい幸せを見つけるやろ」
「そうよね」
涙を拭って翼宿に微笑んだ
「柳宿。俺も言うで。お前に」
「ん?」
「卒業祝いや」
そう言うと懐から小さな箱を取り出した
不思議そうに見つめる柳宿
「えぇから開けてみ」
開けてみるとそこには小さな指輪
「翼宿・・・?」
「俺はお前とずっと一緒に歩んでいきたい」
拭った涙がまた溢れ出した

「俺と結婚してください」

何も言わずに頷いた
そして抱き合った
永遠に離れないように

教師と生徒
二人が愛し合ったって、ちっともおかしい事では有りません
理科室で色々話をしたり、バスケを楽しんだり、気球に乗ったりする事だって出来ます
そうして愛を育めるのです

地獄の淵に立たされた彼女を、天国の太陽で有る彼が救った
今度は二人で歩いていこう
そうしていつか二人だけの太陽を育める様に
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