TEACHER×STUDENT

彼が、喧嘩帰りの暴走族の様にその橙色の頭にお似合いの顔で登場した
あの日の朝

放課後
理科室で実験器具の片付けをしていた翼宿
「・・・あいつに・・・」
その言葉にふと後ろを振り返った
自分の生徒
「・・・聡史に・・・やられたのね・・・?」
車椅子で扉の前に立つ自分の生徒
翼宿は静かに首を振った
「・・・嘘」
「嘘ちゃう」
「嘘じゃない。どうして自分が罪を被る様な真似をするのよ?」
途端に車椅子を翼宿の前まで動かしてきた
「・・・あんたはすぐ無茶するから・・・だから言いたくなかったのよ」
まるで予想でもしていたかの様な発言
気落ちして俯く柳宿の肩にそっと手を置く
「・・・お前が辛い目に遭ってるのに放っておけないやろ・・・?」
自分の行動が当然だと胸を張っているように見えた
馬鹿みたい
「馬鹿みたい・・・」
思ってた事が口から出る
相手は微笑して聞き返す
「何で?」
「せっかくの大好きな顔が台無し・・・」
「面食いか?」
笑われた
「そうじゃないわよ・・・。許せないわよ・・・。あいつを・・・」
「・・・お前はもう関わるな。あいつとは」
「何言ってるの!?関係無いあんたまで巻き込む奴を放っておけないわ!!」
「お前がこれ以上関わるともっと傷つく。それくらい分かるやろ?」
「・・・どうやって」
「ん?」
「どうやってあいつの居場所を・・・?」
「あぁ。そんなん教師の勘や。大体そんなワルは同じクラブにだらだら通ってるんや。手当たり次第クラブ回って見つけて呼び出したらこの通りや」
喧嘩はあの馬鹿野郎の十八番
「あんたは何も・・・?」
「俺はホンマの事を言ったまでや」
それだけで、ボコボコにされたの・・・?
「ごめんなさい・・・」
柳宿の瞳から涙が流れた
翼宿は黙って首を振った
「・・・帰れるか?送ってく・・・」
翼宿は残りの器具を片付けて車のキーを取った

「・・・有難う。わざわざ・・・」
「否」
結局車で家に送られた柳宿は申し訳なさそうに翼宿に御礼を告げる
「じゃあな。もうあいつの事は忘れろ」
「・・・うん」
柳宿の頭を笑顔で撫でると翼宿は車を発進させた
クラクション音を残して

翼宿の車が消えた途端に、柳宿は懐から携帯電話を取り出した
結局消していなかった電話帳の名前
「獄城聡史」
メールアドレスなんて変えてるかもしれないが、そっとメールボタンを押して作成
送信

「それでその時俺はよぉー」
♪♪♪~
クラブでいつもの様に女性に囲まれて話をしていた聡史の携帯が鳴った
「ごめんね」
女性の人だかりから少し出て携帯のウインドウを見る
「メール 柳宿」
その名前に聡史は少々驚いた
とても懐かしかったから
口元を微かに持ち上げながら携帯を開く
「今夜九時に第三倉庫に来なさい」
何度か改行

「決着をつけるわ」

そこでEND
聡史の口元の微笑は
変わらなかった

LOVEゲームは終わりを迎える
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