TEACHER×STUDENT

理科の授業
柳宿は何時になく憂鬱だった
「柳宿・・・。如何したのよ?珍しくため息なんかついちゃって・・・」
「別にぃ?気が重いだけ・・・」
「そうなの!?あたしなんて翼宿先生と今日も会えると思うとわくわくしてるわよ!今日携帯番号教えてもらうの!」
「へぇ・・・。良かったわね・・・」
そんな話上の空

『柳宿!見とけ!お前を笑わせたるからな!』

一昨日の台詞が頭から離れない
あれは何?只のからかい?

「授業、始めるで~」
ガラッと扉を開けて入ってきた人物にまたため息
何が笑わせるよ
馬鹿らしい・・・
今日もかったるい実験だった
柳宿はいつものように窓の外ばかり眺めている
そんな頭に手紙が投げられた
見ると翼宿がこちらを見て軽くウインクしている
ため息をついて手紙を開く

(今日もつまんないか?放課後、屋上に来い。)

始まったよ
しょうもない作戦
良いや
何かされたら問題教師で訴えてやる
その手紙を右手で握りつぶして翼宿を睨み見た

「・・・何よ?」
「おぉ。来たか。我が生徒!」
「こんな屋外に呼び出す必要無いでしょ?あたし、早く帰りますので・・・」
「まぁまぁ、座れや」
ベンチに座って煙草を吸っていた翼宿は柳宿を隣に誘った
ため息をつくと鞄を下ろして距離を置いて座った
「で、話が有るならさっさとしてよ」
「まぁ、そう焦るなや。まず、あんたが何でそんなに冷血人間になったか聞きたいんや」
「・・・何でそんな事あんたに話さなきゃいけないのよ?」
「せやかて、昨日言ったやん。お前の正体突き止めるて・・・」
「・・・呆れた。本人に事情聴取してどうすんの?そんなのあんたなんかに話せる訳無いでしょ?」
相変わらず冷静を保つ
「馬鹿馬鹿しくて話になんない・・・」
入り口に戻ろうとしたら、翼宿が前に割って入った
「・・・どいてよ」
「あかん・・・」
「何でよ!どうしてそこまであたしにこだわるのよ!」
そう問うと翼宿が柳宿の顎をぐいっと引いた
「・・・判らんか?お前に興味有る言うたんや・・・」
その言葉に柳宿は即座に顔が赤くなった
何時も口説かれて交わしてきたのに、何でこいつにだけは
教師だから?只それだけで?
そこで翼宿はふっと笑った
「・・・冗談や」
「・・・は?」
「お前みたいな餓鬼誰が相手にするかい。いつまでも素直やないからちょっと苛めてみたんや」
「なっ・・・!」
「せやけどやっぱ女やん。こういう事されるとすぐに顔赤うなる」
「あんたね・・・」
「せっかく可愛えぇ顔しとるんやからもっと喜怒哀楽激しくせぇや」
血が上りかけて今度はまた別の意味で顔が赤くなった
何だかこいつは今までの男と違う
今までは回りくどいやり方しかしてこなかった奴等ばっかりだったけど、こんなストレートにぶつけてくる人は初めてだった
呼吸を整えるとまたベンチに腰掛けた
「お?少しリラックスしてきたか?」
ニッと牙を剥き出しにして笑う翼宿
「・・・何があった?先生に何でも言ってみなさい!」
誰があんたなんか教師だと思えるか
「じゃ、あんたから話しなさいよ」
「は?」
「あたしと似てるって言ってたじゃない?あんたが話したらあたしも話す・・・」
「・・・判った。約束やで?」
「・・・判ってるわよ」
「俺もなぁ、つまらんかったんや。毎日。最初は高校入って晴れ晴れとしてたけど何や、同じ事の繰り返しで何か面白い事がやってみたなったんや・・・。で、酒飲んで煙草吸って族とつるんでそしたら退学になった・・・」
「・・・ふ~ん。そんな退学者さんが何で教師になったのよ?」
「何でやろなぁ。俺みたいな生徒を育てたくない為やな。俺の様にならん様にちゃんと勉強して部活して卒業して就職して欲しいんや・・・」
「正義感ねぇ・・・」
「さ、話したで。お前も話せや」
「・・・・あたしは」
「翼宿先生!こんな所に居たんですか!今日は職員会議でしょう?」
屋上に教師がやってきた
「あ、やべ・・・」
助かったという風に柳宿は鞄を持って入り口へ向かった
「おい・・・」
「さようなら・・・。正義の教師さん・・・」
聞きそびれたと翼宿は頭を掻き毟った
卑怯な手使ったけどあいつの事知れると思ったのに
ま、明日また聞くか
そう思っていた


明朝
掲示板がやけに騒がしかった
ちらりと見やると、そこには大きな文字で
「退学教師翼宿」
と、書かれていた
その下には昨日柳宿に話した全ての事情が詳しく書かれていた
「・・・これは」
翼宿に気づいた生徒達がわっと翼宿に飛びかかった
「先生!本当なんですか!?退学って!」
「しかも族だったなんて!その頭はその名残ですか!?」
いろんな質問攻めに遭って翼宿は動揺した
「あのなぁ・・・、これには深い訳が・・・」
階段をふと見上げるとそこには柳宿が居た
冷たい瞳で翼宿を見下ろしている
「柳宿・・・」

「・・・誰があんたなんかに話すもんですか!!この変態教師!生徒誑かして無理矢理過去聞き出そうなんて最悪な真似してくれて!!この学園から出て行きなさいよ!!」

そう言うと柳宿は階段を駆け上がって行った

彼女に近づくには、まだまだ時間が掛かりそうだった
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