TEACHER×STUDENT
「交通事故に遭ったんやってな・・・」
あれから、嫌がる柳宿の車椅子を無理矢理押して聡史は人気の無い公園に連れ込んだ
柳宿は相変わらずむすっと黙っている
「・・・んなに怒るなや。昔相思相愛した仲やないか・・・」
「そんなの過去よ・・・。あんたの事なんて忘れたわ・・・」
柳宿は相手の顔など見ないように答えた
その横顔は聡史には今まで以上に綺麗に見えた
欲望を抑えて問いかけた
「・・・腹の餓鬼は・・・?」
「堕ろしたわ」
すんなり答えた
「お前・・・っ!!」
「誰があんたとの子供なんて・・・!」
まるで獣を睨むような鋭い目つきで初めて相手に向かい合った
柳宿の唇がわなわなと震えだした
「・・・忘れたの・・・!?あんたはあたしなんてこれっぽっちも愛してなんてくれてなかった・・・。結局遊びだけの付き合いであたしを女として見てくれなかった・・・!それどころかあたしをあんな目に・・・!冗談じゃないわよ・・・!!」
夕陽が沈んで空が漆黒の青に染まった
「あんたと会うのもこれまでね・・・。バイバイ・・・」
そう言って車椅子を自分で動かした
その時
グイッ
乱暴に車椅子を戻された
振り返る柳宿の唇が乱暴に奪われた
片方の手で制服を掻き乱される
「・・・嫌っ・・・!」
パンッ
思い切り頬を殴った
聡史は反動で車椅子から転げ落ちた
息切れをしながら口の回りを拭う
涙が零れた
「また・・・、汚すの・・・?」
「・・・・・」
「またそうやってあたしを汚すの!?」
勢いよく車椅子を発進させて逃げ出した
涙の粒が聡史の頬を濡らした
「・・・チッ」
聡史は舌打ちをした
車椅子は歩道を猛スピードで走っていたが、バランスを崩して転んだ
ガシャーン
歩道に叩きつけられた柳宿の横にはカラカラと回る車椅子の車輪
「うっ・・・」
涙が後から溢れてきた
如何して?
如何してまたあたしの目の前に現れたの?
またあたしをボロボロに傷つけにきたの?
あんたのせいで、あたしは
その時
キキッ
側で車が止停まる音
続いてドアを開ける音が聞こえた
大好きな煙草の香り
「柳宿!?」
抱き起こしてくれた相手は、大好きなあいつ
「何しとんねん!!こんなトコで・・・!!」
屑男と同じ関西弁だって、素敵な関西弁
「さっき夏休みの理科の宿題渡そ思て家に取りに帰ってきたんやが・・・」
袖を掴んで抱きついた
声をあげて泣きながら
自分は車椅子のまま、下半身は抵抗出来ない
さっきもし両手を拘束されてたら、きっと今頃・・・
そんな恐怖で体が異常に震えた
「どした・・・?柳宿・・・?」
そう問いかけて翼宿は柳宿を優しく抱きしめた
それからの夏休みは、地獄と隣り合わせの期間だった
ほとんど外に出ないまま
その間何度か翼宿は家に顔を出してくれたが、何を聞いても黙ったまま
まるで昔の柳宿に戻ったみたいな・・・そんな状態だった
あいつが見てる
夜になるとそんな恐怖が頭を駆け巡って、ろくに眠れなかった
幾ら大好きなあいつにも、こんな事は言える筈も無かった
二学期
暗い面持ちで登校
痩せていて顔色が悪い柳宿
クラスメイトは打って変わった柳宿の様子に驚いていた
翼宿も心配そうに柳宿ばかり見ていた
そんな時、理科室に呼び出された
「柳宿・・・。どないしたんや?やっぱ話したく無いんか?」
「・・・・・」
俯いたまま
「あの夜何が有ったんや?」
「・・・・・」
翼宿はそっと柳宿の頬に触れる
「こんなに痩せて・・・気になるやろ・・・?」
まるで幼児みたいに質問に答えようとしない
嫌われるかもしれない
幾らこいつだって
しかし翼宿は、ずっと待っててくれた
文句一つ言わないまま
噤んでいた口を徐々に開き始めた
「・・・あいつに会ったの・・・」
「あいつ・・・?」
「あたしの・・・元彼・・・」
「!?」
「あたしを訪ねてきたの。今更何だって思った。お腹の赤ちゃんの事聞いてきて・・・」
「・・・・」
「堕ろしたって言ったら急に取り乱して襲われて・・・」
「柳宿・・・」
瞳から夏休みの恐怖が流れ出した
「抵抗して逃げた途中であんたに会ったの・・・」
「さよか・・・」
そんな事が
それでは引きこもりも無理は無い
自分に言える筈も無い
「分かった・・・」
翼宿は立ち上がった
「今日は部活見ないで明るい内に帰れよ」
そう言って柳宿の頭を撫でると翼宿は理科室を去った
柳宿はぽかんとしていた
翌朝
その言葉の意味が分かった
彼は、頬にガーゼ、頭に包帯を巻いて学校に登校してきたのだ
あれから、嫌がる柳宿の車椅子を無理矢理押して聡史は人気の無い公園に連れ込んだ
柳宿は相変わらずむすっと黙っている
「・・・んなに怒るなや。昔相思相愛した仲やないか・・・」
「そんなの過去よ・・・。あんたの事なんて忘れたわ・・・」
柳宿は相手の顔など見ないように答えた
その横顔は聡史には今まで以上に綺麗に見えた
欲望を抑えて問いかけた
「・・・腹の餓鬼は・・・?」
「堕ろしたわ」
すんなり答えた
「お前・・・っ!!」
「誰があんたとの子供なんて・・・!」
まるで獣を睨むような鋭い目つきで初めて相手に向かい合った
柳宿の唇がわなわなと震えだした
「・・・忘れたの・・・!?あんたはあたしなんてこれっぽっちも愛してなんてくれてなかった・・・。結局遊びだけの付き合いであたしを女として見てくれなかった・・・!それどころかあたしをあんな目に・・・!冗談じゃないわよ・・・!!」
夕陽が沈んで空が漆黒の青に染まった
「あんたと会うのもこれまでね・・・。バイバイ・・・」
そう言って車椅子を自分で動かした
その時
グイッ
乱暴に車椅子を戻された
振り返る柳宿の唇が乱暴に奪われた
片方の手で制服を掻き乱される
「・・・嫌っ・・・!」
パンッ
思い切り頬を殴った
聡史は反動で車椅子から転げ落ちた
息切れをしながら口の回りを拭う
涙が零れた
「また・・・、汚すの・・・?」
「・・・・・」
「またそうやってあたしを汚すの!?」
勢いよく車椅子を発進させて逃げ出した
涙の粒が聡史の頬を濡らした
「・・・チッ」
聡史は舌打ちをした
車椅子は歩道を猛スピードで走っていたが、バランスを崩して転んだ
ガシャーン
歩道に叩きつけられた柳宿の横にはカラカラと回る車椅子の車輪
「うっ・・・」
涙が後から溢れてきた
如何して?
如何してまたあたしの目の前に現れたの?
またあたしをボロボロに傷つけにきたの?
あんたのせいで、あたしは
その時
キキッ
側で車が止停まる音
続いてドアを開ける音が聞こえた
大好きな煙草の香り
「柳宿!?」
抱き起こしてくれた相手は、大好きなあいつ
「何しとんねん!!こんなトコで・・・!!」
屑男と同じ関西弁だって、素敵な関西弁
「さっき夏休みの理科の宿題渡そ思て家に取りに帰ってきたんやが・・・」
袖を掴んで抱きついた
声をあげて泣きながら
自分は車椅子のまま、下半身は抵抗出来ない
さっきもし両手を拘束されてたら、きっと今頃・・・
そんな恐怖で体が異常に震えた
「どした・・・?柳宿・・・?」
そう問いかけて翼宿は柳宿を優しく抱きしめた
それからの夏休みは、地獄と隣り合わせの期間だった
ほとんど外に出ないまま
その間何度か翼宿は家に顔を出してくれたが、何を聞いても黙ったまま
まるで昔の柳宿に戻ったみたいな・・・そんな状態だった
あいつが見てる
夜になるとそんな恐怖が頭を駆け巡って、ろくに眠れなかった
幾ら大好きなあいつにも、こんな事は言える筈も無かった
二学期
暗い面持ちで登校
痩せていて顔色が悪い柳宿
クラスメイトは打って変わった柳宿の様子に驚いていた
翼宿も心配そうに柳宿ばかり見ていた
そんな時、理科室に呼び出された
「柳宿・・・。どないしたんや?やっぱ話したく無いんか?」
「・・・・・」
俯いたまま
「あの夜何が有ったんや?」
「・・・・・」
翼宿はそっと柳宿の頬に触れる
「こんなに痩せて・・・気になるやろ・・・?」
まるで幼児みたいに質問に答えようとしない
嫌われるかもしれない
幾らこいつだって
しかし翼宿は、ずっと待っててくれた
文句一つ言わないまま
噤んでいた口を徐々に開き始めた
「・・・あいつに会ったの・・・」
「あいつ・・・?」
「あたしの・・・元彼・・・」
「!?」
「あたしを訪ねてきたの。今更何だって思った。お腹の赤ちゃんの事聞いてきて・・・」
「・・・・」
「堕ろしたって言ったら急に取り乱して襲われて・・・」
「柳宿・・・」
瞳から夏休みの恐怖が流れ出した
「抵抗して逃げた途中であんたに会ったの・・・」
「さよか・・・」
そんな事が
それでは引きこもりも無理は無い
自分に言える筈も無い
「分かった・・・」
翼宿は立ち上がった
「今日は部活見ないで明るい内に帰れよ」
そう言って柳宿の頭を撫でると翼宿は理科室を去った
柳宿はぽかんとしていた
翌朝
その言葉の意味が分かった
彼は、頬にガーゼ、頭に包帯を巻いて学校に登校してきたのだ