TEACHER×STUDENT

「今まで有難う御座いました・・・」
ぺこりと医師にお辞儀をする柳宿
「良かったですね・・・。回復が早くて・・・。我々スタッフも娘さんには驚いていますよ・・・」
横で安心そうに微笑む両親に医師は笑いかけた
「みんな先生のお陰です・・・。先生が娘の記憶を・・・」
皆が一斉に翼宿に振り返る
「否・・・、俺は何も・・・」
照れる翼宿の腕に柳宿が車椅子のまま飛びついた
「行こっか!」
柳宿は前にも増した人懐っこい笑顔を翼宿に向けた
その光景に家族はおやおやと驚いていた

「先輩!もう治ったんですか!?」
「良かったーv」
バスケ部に久々に顔を出してみると後輩がどっと駆け寄ってきた
「みんな心配掛けてごめんね・・・。もう大丈夫だから・・・」
柳宿は皆に微笑みかける
「夏休みはなるべく来るようにするね!だからみんな!大会は優勝するよ!!」
その言葉に後輩は飛び上がって喜んだ
「でも先輩・・・。無理しないでくださいね・・・。その・・・」
部長の薫は心配そうに柳宿の車椅子を見た
「大丈夫よ。薫ちゃん。心配してくれて有難う・・・」
部員との会話のやり取りに車椅子を押していた翼宿も微笑した

「良かったな・・・」
「え?」
「部員と久々に会えて嬉しかったやろ?」
街中の喫茶店で一休み
翼宿と柳宿二人向かい合って談笑していた
「そうね。でもみんなすっかり大きくなっちゃって・・・」
懐かしそうに窓の外を眺める
「有難うね・・・」
「何が?」
「あんたがあたしを呼び寄せてくれたんだから・・・」
「・・・そないな事・・・。お前が戻ってきてくれただけで俺は・・・」
「泣いてたもんねぇ・・・」
少し意地悪く翼宿を見上げる
「んなっ、何言うてんねん!あれは夕陽が綺麗やったからついなぁ・・・」
「ふーん・・・。夕陽ねぇ・・・」
柳宿はくすくすと笑う
もう二度と二人を引き裂く悪魔は現れない
そう思っていた
喫茶店の窓越しの交差点の向こう側から拳を震わせている柳宿を地獄に陥れた張本人に気づくまでは・・・

「今日は有難う」
車で送ってもらった柳宿は翼宿に車の窓越しからお礼を言った
「お前もゆっくり休めよ・・・。二学期には学校に復帰出来るようにな・・・」
「そうね・・・」
「ほな、またな」
翼宿の車を見送る
そして玄関の門を開けた
その時
ふいに背後から冷たい視線を感じて振り返った
そこには

「よぉ。柳宿。久しぶりやん」

あの憎たらしい顔、声、姿
もう二度と会う事も無いだろうと思っていた相手
二年前にクラブで知り合った元彼だった
そう。彼の名は

「聡史・・・!!」

獄城聡史
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