TEACHER×STUDENT
柳宿は日差しにゆっくりと目を開けた
涙の痕がうっすらと残って目の周りの皮膚が痛かった
昨夜どれだけ泣いたのだろう
隣には、荷物を運んでいる「先生」
「よ」
「・・・・」
「よく眠れたか?」
「はい・・・」
「さよか。今日はな、お前の為に特別に外出許可が出たんや。せやから先生と出かけるか!」
「本当ですか?」
柳宿の表情がほんの少し明るくなった
笑顔で頷くと柳宿も笑った
午前九時
朝食を済ませた二人は翼宿の車で久々に外出に出た
もしかしたら記憶を取り戻せるかもしれないと、柳宿は制服に身を包んだ
『娘さんの足はもう動きません』
医師からそう告げられた通り柳宿の足は回復を見せなかった
車椅子でのお出かけになる
外は夏の日差しがじりじりと照りつけている
街の間から見える海がキラキラ輝いていた
柳宿はまるで初めて外に出たように景色を見ながらはしゃいでいた
翼宿はそんな柳宿を見て少し嬉しくなった
最初は、朱雀学園
今日から夏休みなので運動部以外は生徒は居なかった
理科室には鍵が閉められていた
「久々やな・・・」
翼宿も懐かしそうに辺りを見回す
理科室の鍵を開けると、懐かしい薬品の匂い
柳宿はきょろきょろと辺りを見回した
「此処で・・・、俺達は出会ったんや・・・。それから俺らは此処で色々な事を話した・・・」
「・・・・」
「ま、覚えてへんやろな・・・」
「ごめんなさい・・・」
「気にすんなて!!さ、次行こか!!」
次は市民体育館
バスケットコートの前に立つ
「此処はな、俺とお前でバスケットっちゅうスポーツで対戦した場所や。お前はホンマにバスケが上手くてな。この俺を勝ち抜いたんやで!!」
そう言うと翼宿はボールを柳宿に投げてよこした
そのボールを不思議そうに見つめる柳宿
やはり此処でも記憶は戻らないようだ
翼宿は小さくため息をついた
最後は気球場
また敦に頼んで気球に乗せてもらった
柳宿は記憶を失くして「初めて」の気球に度肝を抜かれていた
夕焼けが沈んでいく
「・・・柳宿。此処は天国や。どんな嫌な事も此処に来たら忘れてまう・・・」
「天国・・・」
柳宿は静かに呟いた
翼宿は胸が急に痛くなった
これ以上永遠に彼女の記憶が戻らなければどうすれば良いのか
もう「柳宿」には会えないのか
意地っ張りで素直じゃないけど、本当はすごく女らしい柳宿
自分が愛した柳宿に・・・
翼宿は柳宿の手を掴んだ
「柳宿・・・。俺はな、お前の事が一番大事やった・・・」
「・・・・え?」
「お前に惚れとったんや・・・」
「惚れた・・・?」
感覚が掴めていなかった
「今のお前には愛の意味が分からないやろな・・・。惚れる言うんはな、その人の事を一生護りたいと思う事なんや・・・。その人の全てを求めたい、俺の全てを求めて欲しいと思うもんなんや・・・」
「・・・・」
翼宿は俯いた
「俺は・・・、学校が嫌いなお前を変えたくてな・・・。一生懸命柳宿を理解しようとしてた・・・。最初は教師の使命感かと思うとった。せやけどホンマのお前はホンマに魅力的で・・・。俺いつの間にかホンマのお前を好きになっとった・・・」
「・・・・」
「お前も俺を欲してくれたんやで・・・」
「・・・・」
「・・・覚えとらんやろな・・・。もう俺はお前の瞳には他人としか映っとらんのやろな・・・」
声が震えてきた
「戻ってきてほしいんや・・・。俺が愛した柳宿に・・・!!」
何故だろう
涙が流れてきた
柳宿の指を自分の唇に当てる
全てを伝えられるように
「愛しとる・・・」
そう口元で呟いた
その時
柳宿の指がぴくっと動いた
瞳に光が・・・戻った
それは翼宿にもすぐに分かった
柳宿の瞳から涙が流れている
そっと翼宿は微笑した
「・・・どやった?長旅の感想は・・・?」
「・・・楽しかったわ。過去の自分に出会ったり今の自分に出会ったり未来の自分に出会ったり・・・」
「さよか・・・」
「でもあたしは・・・、此処が良い・・・」
柳宿の表情が歪む
「あんたが愛してくれたこの場所が・・・」
二人は固く抱きしめあった
共に涙を流しながら
「お帰り。柳宿・・・」
柳宿が、戻ってきました・・・
涙の痕がうっすらと残って目の周りの皮膚が痛かった
昨夜どれだけ泣いたのだろう
隣には、荷物を運んでいる「先生」
「よ」
「・・・・」
「よく眠れたか?」
「はい・・・」
「さよか。今日はな、お前の為に特別に外出許可が出たんや。せやから先生と出かけるか!」
「本当ですか?」
柳宿の表情がほんの少し明るくなった
笑顔で頷くと柳宿も笑った
午前九時
朝食を済ませた二人は翼宿の車で久々に外出に出た
もしかしたら記憶を取り戻せるかもしれないと、柳宿は制服に身を包んだ
『娘さんの足はもう動きません』
医師からそう告げられた通り柳宿の足は回復を見せなかった
車椅子でのお出かけになる
外は夏の日差しがじりじりと照りつけている
街の間から見える海がキラキラ輝いていた
柳宿はまるで初めて外に出たように景色を見ながらはしゃいでいた
翼宿はそんな柳宿を見て少し嬉しくなった
最初は、朱雀学園
今日から夏休みなので運動部以外は生徒は居なかった
理科室には鍵が閉められていた
「久々やな・・・」
翼宿も懐かしそうに辺りを見回す
理科室の鍵を開けると、懐かしい薬品の匂い
柳宿はきょろきょろと辺りを見回した
「此処で・・・、俺達は出会ったんや・・・。それから俺らは此処で色々な事を話した・・・」
「・・・・」
「ま、覚えてへんやろな・・・」
「ごめんなさい・・・」
「気にすんなて!!さ、次行こか!!」
次は市民体育館
バスケットコートの前に立つ
「此処はな、俺とお前でバスケットっちゅうスポーツで対戦した場所や。お前はホンマにバスケが上手くてな。この俺を勝ち抜いたんやで!!」
そう言うと翼宿はボールを柳宿に投げてよこした
そのボールを不思議そうに見つめる柳宿
やはり此処でも記憶は戻らないようだ
翼宿は小さくため息をついた
最後は気球場
また敦に頼んで気球に乗せてもらった
柳宿は記憶を失くして「初めて」の気球に度肝を抜かれていた
夕焼けが沈んでいく
「・・・柳宿。此処は天国や。どんな嫌な事も此処に来たら忘れてまう・・・」
「天国・・・」
柳宿は静かに呟いた
翼宿は胸が急に痛くなった
これ以上永遠に彼女の記憶が戻らなければどうすれば良いのか
もう「柳宿」には会えないのか
意地っ張りで素直じゃないけど、本当はすごく女らしい柳宿
自分が愛した柳宿に・・・
翼宿は柳宿の手を掴んだ
「柳宿・・・。俺はな、お前の事が一番大事やった・・・」
「・・・・え?」
「お前に惚れとったんや・・・」
「惚れた・・・?」
感覚が掴めていなかった
「今のお前には愛の意味が分からないやろな・・・。惚れる言うんはな、その人の事を一生護りたいと思う事なんや・・・。その人の全てを求めたい、俺の全てを求めて欲しいと思うもんなんや・・・」
「・・・・」
翼宿は俯いた
「俺は・・・、学校が嫌いなお前を変えたくてな・・・。一生懸命柳宿を理解しようとしてた・・・。最初は教師の使命感かと思うとった。せやけどホンマのお前はホンマに魅力的で・・・。俺いつの間にかホンマのお前を好きになっとった・・・」
「・・・・」
「お前も俺を欲してくれたんやで・・・」
「・・・・」
「・・・覚えとらんやろな・・・。もう俺はお前の瞳には他人としか映っとらんのやろな・・・」
声が震えてきた
「戻ってきてほしいんや・・・。俺が愛した柳宿に・・・!!」
何故だろう
涙が流れてきた
柳宿の指を自分の唇に当てる
全てを伝えられるように
「愛しとる・・・」
そう口元で呟いた
その時
柳宿の指がぴくっと動いた
瞳に光が・・・戻った
それは翼宿にもすぐに分かった
柳宿の瞳から涙が流れている
そっと翼宿は微笑した
「・・・どやった?長旅の感想は・・・?」
「・・・楽しかったわ。過去の自分に出会ったり今の自分に出会ったり未来の自分に出会ったり・・・」
「さよか・・・」
「でもあたしは・・・、此処が良い・・・」
柳宿の表情が歪む
「あんたが愛してくれたこの場所が・・・」
二人は固く抱きしめあった
共に涙を流しながら
「お帰り。柳宿・・・」
柳宿が、戻ってきました・・・