TEACHER×STUDENT

左足骨折
柳宿はその後病院に運ばれた
ぐるぐる巻きの包帯が重かった
全治一ヶ月
絶望的な医師の発言
後輩も皆心配そうにしている
そんな後輩に一言
「大丈夫よ・・・。みんな・・・。これは事故だったのよ・・・。だから心配しないで部活続けて・・・」
笑顔で言った

翌朝
親に車で見送られた
初めて握る松葉杖
自分は今まで五体満足で、どんなに幸せだったかを思い知らされた
友達は優しくしてくれたけど、何よりも気になるのは・・・翼宿

放課後
翼宿が声を掛けてきた
「大丈夫か・・・?」
「・・・大丈夫よ」
「すまん・・・。花憐のせいやな・・・。俺がもっときつく言っとれば・・・」
「出来ないでしょ・・・?優しいお兄さんだもの・・・」
冷たく突き放した
「早く行ってあげたら?妹の所へ・・・」
「柳宿・・・」
「バイバイ」
柳宿は不自由そうに松葉杖を突きながら教室を出た
本当は、慰めてもらいたい
だけど

朱雀市役所
翼宿はある用事があってそこに来ていた
受付の女性に声をかける
「こんにちは」
「すんません・・・戸籍を見せていただきたいんですが・・・」
疑問は確信に変わる

Plllll
柳宿の携帯の着信音が鳴った
着信「あきこ」
『あ、柳宿?足大丈夫?』
「うん・・・。まぁ、何とか・・・」
『それでね、あんたの慰めになるかどうか分からないけど明日花火大会が有るのよ!!』
「花火大会・・・」
『みんなで行かない?あんた部活以来友達と遊んで無いでしょ?』
「・・・ごめん。あたし、明日は病院に・・・」
『そうなの~?残念・・・。じゃ、また今度ね!』
「うん・・・。有難う・・・」
そのまま電源を切る
花火大会
チャンスだ
何のチャンスかは分からないが、そう思った

♪♪♪
メールの着信音
翼宿は携帯を開けた
柳宿からだった

「明日、花火大会が朱雀公園で21:00~有ります。・・・来て欲しい。待ってるから」

翼宿は意味が掴みかねた
しかししばらく改行してあった文字を見て凍りついた

「もしも来なかったら私はこの街から消えます」


翌日17:00
柳宿は親に内緒で家から抜け出した
慣れない松葉杖を引きずりながら、微かな希望を信じて

Plllll
職員室の電話が鳴った
翼宿はこの日部活で遅くまで職員室に残っていた
この後の柳宿の約束にどうしても間に合わなければならない
翼宿は大急ぎで仕事を片付けていた
「はい、朱雀学園・・・」
「翼宿先生ですね!?柳宿の母です!!」
「・・・どうしたんですか?」
「家の柳宿が居ないんです!!あの子、まだ足が完治してないのに・・・。学校に来てませんか!?」
その言葉に翼宿は一瞬で感づいた
「いえ、此処には来てないです・・・。でもお母さん、安心してください。私が必ず連れて帰りますから・・・」
そう言って翼宿はジャケットを羽織った

今日は花火大会
車は混雑しているだろう
だったら、この足であいつの元へ

その時
廊下に見覚えの有る太い男
鬼澤
「そんなに急いで何処へ行く?翼宿先生・・・」
「鬼澤先生・・・」
「楽しいですか?三年五組の担任は・・・」
その目は虚ろだった
「すみません。急ぎますので・・・」
その時鬼澤がその手にキラリと光る刃を持って、一気に駆け出してきた
反応が遅れた

ドスッ


ブロロロロロロ
車は渋滞している
走り出す車は加速をあげて、渋滞に巻き込まれないようにしている
横断歩道
柳宿は一人電柱に寄りかかり信号が変わるのを待つ
足の痛みが酷くなってきたような気がする
もう家から二キロは歩いている
体力も限界に達していた
それでも瞳だけは真っ直ぐに前を見据えて
信号が青に変わった
「翼宿・・・」
名前を呼んで松葉杖を前に突き出す
その時
ギュルルルル
激しいブレーキ音

柳宿は、宙を舞った

叩きつけられた身体から、大量の血が流れ出した
そのまま気を失った

柳宿は己さえも忘れていたのだ
視界には別の物が写っていた
信号が変わった向こうに翼宿が笑顔で待っていた
しかし現実は、信号はまだ赤だった・・・
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