TEACHER×STUDENT
朝
目覚めると目の前に橙色の頭
昨夜そのまま泊まってしまった
親に何て言い訳しよう?
でも今は、こいつの腕の中に居たい・・・
背中に回していた手を改めて強く抱きしめる
翼宿の寝顔にそっとキスした
もう二度と離れない様に・・・
意外と美味しかった翼宿の朝食を二人で済ませて、二人は暫く向かい合っていた
「何処行こか?」
「え?」
「最後にこの街で二人で過ごさへんか?」
笑顔で尋ねてきた翼宿に柳宿も素直に頷く
「海に行きたいな・・・」
「海か。そういや俺も行きたかったな・・・」
そう言うとコーヒーカップを台所で洗って翼宿はジャケットを羽織った
車を走らせてこの街の一番綺麗な海岸へ行く
車から降りると涼しい海岸の風に誘われて砂が足元にぶつかる
もうすぐ夏
しかし夏休みではないので人は居なかった
手を繋いで、二人で歩く
「夢みたいだね・・・」
「何が?」
「あんたとこうやって歩くの・・・」
「・・・せやな」
海岸に座る
このまま時間が止まってしまえば良いのに
二人同じ事を思っていた
永遠に離れないこの時間が
「・・・本当に教師続けてくの?」
「あぁ・・・。せっかくなれたんやからな・・・。退職にならないだけマシや・・・」
「あたしは、あんたみたいな先生増えていった方が絶対良いと思う・・・。あたしみたいに自分の殻に閉じこもっている生徒を救ってあげられるんだもの・・・」
「そら、おおきに・・・」
翼宿の横顔は少し寂しそうだった
こいつだって傷ついた筈だ
初めて教師になった学校から、追い出されてしまったのだから
肩に頭を乗せた
「大丈夫よ・・・。あたしが居るから・・・」
翼宿はすぐに微笑むと
「・・・あぁ」
と返事をした
帰路に着いた車
「なぁ・・・」
「ん・・・?」
「最後に学校行ってみてえぇか?」
「え?」
そういえば自分も今日学校を休んでしまったのだ
今頃自分達が居なくなった学校は、清々しているのだろうか
「良いわよ・・・」
「最後のお別れやな・・・」
「うん・・・」
自分もサヨナラだ
あんな学校
これから翼宿と共にこの街から逃げていくのだから・・・
校門の前に車を停める
何やら騒がしい事に気づいた
「何かあったんかいな?」
翼宿が少し覗き込んだ
その光景を見て、二人は唖然とした
そこには幾つもの旗が上っていた
『翼宿先生 COME BACK』
『鬼塚を辞めさせろ』
『柳宿に賛同!!』
そんな文字が大きく書かれていたのだ
その旗を掲げた全校生徒が校長室の窓へ向かって主張していたのだ
「校長!!私達は間違っていました!!退学が怖くて何時もこの学校に縛られてばかりいて!!」
「でも違うんです!!この学校は私達が変えていかなければいけないのです!!」
「生徒を、柳宿さんを信じてください!!柳宿さんは鬼澤先生に性的嫌がらせをさせられていてそこを翼宿先生が助けただけなんです!!」
「これをどうとるつもりですか!?私達は鬼澤先生の辞職を強く希望します!!」
代表生徒が鉢巻を巻いて必死に主張していた
柳宿はハッとした
まさか桑島先生が・・・?
そこに彼女が来た
「翼宿先生・・・!柳宿さん・・・!!」
「先生・・・、これは・・・」
「私が生徒に貴女から聞いた真実を話したの。そしたらみんな怒り出して朝からあれを・・・」
二人とも驚きの表情を隠せなかった
そこに生徒達が気づいた
「先生!!」
「柳宿!!」
一斉に集まった
「先生!私達先生がそんな事しないって分かってたよ!だって先生は私達の大好きな先生だから!!」
「それなのに先生自分だけ背負って私達が止めてあげられなくてごめんなさい!!」
「帰ってきて!!先生!この学校には先生みたいな人が必要だよ!!」
その数々の言葉に翼宿は戸惑っていたがそれと共に深く感動していた
「お前ら・・・」
柳宿の親友明子が柳宿の手を握った
「柳宿・・・。気づいてあげられなくてごめんね・・・。あんたの度胸、あたし見習ったよ。あんた、変わったじゃん・・・」
その瞳にはうっすら涙が浮かんでいた
「明子・・・」
名前を初めて呼んだ
そこにバスケ部の後輩が駆けてきた
「先輩!明日バスケ部の練習見に来てください!」
「部長の先輩が来ないんじゃバスケ部も強くなれません!」
「昨日の度胸を私達にもつけてください!」
「みんな・・・」
柳宿は静かに頷いた
「部長!?お前が・・・!?」
翼宿が遅れて仰天していたので、柳宿はぺろっと舌を出した
翼宿は気を取り直すと
「ほな、今から授業始めるか!今日は特別体育館で手品ショーや!!」
と白衣を車から引っ張り出した
みんな飛び上がって喜んだ
その光景を窓から見ていた校長が鬼澤に辞職願いを出した
鬼澤はがっくりと項垂れていた
「・・・鬼澤先生・・・。学校は教師が作るものではなく生徒が作るものなのですよ・・・」
生徒に囲まれて体育館へ向かう翼宿を木陰からそっと覗く一人の少女
「・・・やっと見つけた・・・」
目覚めると目の前に橙色の頭
昨夜そのまま泊まってしまった
親に何て言い訳しよう?
でも今は、こいつの腕の中に居たい・・・
背中に回していた手を改めて強く抱きしめる
翼宿の寝顔にそっとキスした
もう二度と離れない様に・・・
意外と美味しかった翼宿の朝食を二人で済ませて、二人は暫く向かい合っていた
「何処行こか?」
「え?」
「最後にこの街で二人で過ごさへんか?」
笑顔で尋ねてきた翼宿に柳宿も素直に頷く
「海に行きたいな・・・」
「海か。そういや俺も行きたかったな・・・」
そう言うとコーヒーカップを台所で洗って翼宿はジャケットを羽織った
車を走らせてこの街の一番綺麗な海岸へ行く
車から降りると涼しい海岸の風に誘われて砂が足元にぶつかる
もうすぐ夏
しかし夏休みではないので人は居なかった
手を繋いで、二人で歩く
「夢みたいだね・・・」
「何が?」
「あんたとこうやって歩くの・・・」
「・・・せやな」
海岸に座る
このまま時間が止まってしまえば良いのに
二人同じ事を思っていた
永遠に離れないこの時間が
「・・・本当に教師続けてくの?」
「あぁ・・・。せっかくなれたんやからな・・・。退職にならないだけマシや・・・」
「あたしは、あんたみたいな先生増えていった方が絶対良いと思う・・・。あたしみたいに自分の殻に閉じこもっている生徒を救ってあげられるんだもの・・・」
「そら、おおきに・・・」
翼宿の横顔は少し寂しそうだった
こいつだって傷ついた筈だ
初めて教師になった学校から、追い出されてしまったのだから
肩に頭を乗せた
「大丈夫よ・・・。あたしが居るから・・・」
翼宿はすぐに微笑むと
「・・・あぁ」
と返事をした
帰路に着いた車
「なぁ・・・」
「ん・・・?」
「最後に学校行ってみてえぇか?」
「え?」
そういえば自分も今日学校を休んでしまったのだ
今頃自分達が居なくなった学校は、清々しているのだろうか
「良いわよ・・・」
「最後のお別れやな・・・」
「うん・・・」
自分もサヨナラだ
あんな学校
これから翼宿と共にこの街から逃げていくのだから・・・
校門の前に車を停める
何やら騒がしい事に気づいた
「何かあったんかいな?」
翼宿が少し覗き込んだ
その光景を見て、二人は唖然とした
そこには幾つもの旗が上っていた
『翼宿先生 COME BACK』
『鬼塚を辞めさせろ』
『柳宿に賛同!!』
そんな文字が大きく書かれていたのだ
その旗を掲げた全校生徒が校長室の窓へ向かって主張していたのだ
「校長!!私達は間違っていました!!退学が怖くて何時もこの学校に縛られてばかりいて!!」
「でも違うんです!!この学校は私達が変えていかなければいけないのです!!」
「生徒を、柳宿さんを信じてください!!柳宿さんは鬼澤先生に性的嫌がらせをさせられていてそこを翼宿先生が助けただけなんです!!」
「これをどうとるつもりですか!?私達は鬼澤先生の辞職を強く希望します!!」
代表生徒が鉢巻を巻いて必死に主張していた
柳宿はハッとした
まさか桑島先生が・・・?
そこに彼女が来た
「翼宿先生・・・!柳宿さん・・・!!」
「先生・・・、これは・・・」
「私が生徒に貴女から聞いた真実を話したの。そしたらみんな怒り出して朝からあれを・・・」
二人とも驚きの表情を隠せなかった
そこに生徒達が気づいた
「先生!!」
「柳宿!!」
一斉に集まった
「先生!私達先生がそんな事しないって分かってたよ!だって先生は私達の大好きな先生だから!!」
「それなのに先生自分だけ背負って私達が止めてあげられなくてごめんなさい!!」
「帰ってきて!!先生!この学校には先生みたいな人が必要だよ!!」
その数々の言葉に翼宿は戸惑っていたがそれと共に深く感動していた
「お前ら・・・」
柳宿の親友明子が柳宿の手を握った
「柳宿・・・。気づいてあげられなくてごめんね・・・。あんたの度胸、あたし見習ったよ。あんた、変わったじゃん・・・」
その瞳にはうっすら涙が浮かんでいた
「明子・・・」
名前を初めて呼んだ
そこにバスケ部の後輩が駆けてきた
「先輩!明日バスケ部の練習見に来てください!」
「部長の先輩が来ないんじゃバスケ部も強くなれません!」
「昨日の度胸を私達にもつけてください!」
「みんな・・・」
柳宿は静かに頷いた
「部長!?お前が・・・!?」
翼宿が遅れて仰天していたので、柳宿はぺろっと舌を出した
翼宿は気を取り直すと
「ほな、今から授業始めるか!今日は特別体育館で手品ショーや!!」
と白衣を車から引っ張り出した
みんな飛び上がって喜んだ
その光景を窓から見ていた校長が鬼澤に辞職願いを出した
鬼澤はがっくりと項垂れていた
「・・・鬼澤先生・・・。学校は教師が作るものではなく生徒が作るものなのですよ・・・」
生徒に囲まれて体育館へ向かう翼宿を木陰からそっと覗く一人の少女
「・・・やっと見つけた・・・」