ENDLESS STORY
少年は旅立つ
生まれて初めて見る異国の世界へ
母を母の仲間を救う為に・・・
「ん・・・?」
雨漏りの音で目覚めた光は辺りを見渡した
そこは何処かの宮殿の屋根で囲まれた路地だった
光にも何が起こったのかよく分からなかったが、この世界が全てあの巻物の中だという事を一瞬で把握した
「ここが・・・」
紅南国
都市の中心部に光はいた
ここから全てが始まる
朱雀七星士を救う為に・・・
光は少し怖くなったが自分は「鬼宿」の息子なのだ
こんなところで怖気づいては現実の世界で自分を信じて待ってくれている父と今この世界で仲間の為に頑張っている母に申し訳がつかない
とにかく母親と合流しなければ
光は歩き出した
「幻狼・・・ホンマに大丈夫なんか・・・?」
遠出の準備をする翼宿に功児が声をかける
「ああ!!この通り体は何ともあらへんわ!!他の仲間も見捨てておけんしなぁ!!」
翼宿は八重歯をニッと突き出して笑った
自分の危険も省みずに仲間の命を最優先するのが翼宿の長所だった
「巫女様・・・ホンマに気をつけてください・・・どうか幻狼の事よろしく頼んますわ」
美朱は力強く頷いた
「大丈夫です!!功児さん。きっと朱雀があたし達を護ってくれます!!」
「ほな行ってくるわ。山の事は頼むで、功児!!」
「あ・・・幻狼」
「ん?」
「・・・聖夏が」
そういえば聖夏の姿が見当たらない
「あれからずっと部屋にこもっとんねん。最後の挨拶くらいしてきたらどうや?」
「翼宿。行ってきなよ!!あたし、待ってるから!!」
翼宿は頭を掻きながらその場を離れた
キィ
扉を開けると聖夏は寝台に寝転がっていた
「聖夏・・・寝とるんか?」
その言葉に聖夏はがばと飛び起きた
「幻狼・・・」
その頬は涙で濡れていた
「ったく!!まだ泣いとるんか!!そんなんやと嫁の貰われ手がおらんぞ!!」
「あっ・・・あたしは・・・幻狼の・・・・・・お嫁さんになる資格なんて・・・もうないかな・・・」
聖夏は元気をすっかりなくしていた
翼宿はため息をつくと聖夏の寝台に腰掛けた
「・・・今から巫女と仲間助けに行かなあかんねん」
「・・・そっか・・・」
「昨日の俺みたいに朱雀七星を狙う物騒な奴がおるみたいなんや。はよそいつ見つけて息の根止めへんとな」
「だけど・・・幻狼だっていつまた命を狙われるか・・・」
「俺はもう大丈夫やて。少なくともしばらくはな」
無邪気に笑う翼宿に聖夏の胸はまた痛んだ
「・・・幻狼。ごめん」
「ん?」
「あたしのせいで・・・」
「何しけた顔しとんねん!!寧ろ俺こそすまんな。お前を囮にされたんや」
聖夏は静かに首を振る
そんな聖夏の頬を翼宿は左右に引っ張った
「痛っっっ!!!何すんのよ!!!」
「やっといつもの聖夏に戻ったやんけ!!さっきからお前らしくあらへん!!」
「そんな・・・幻狼ぉぉぉ~~~~~~」
聖夏は翼宿に抱きついた
「どわっ!!何すんねん!!抱きつくな言うに!!!」
聖夏は泣いていた
翼宿は大きくため息をつくとその頭をそっと撫でた
「・・・心配せんでええ。帰ってくるから」
「そしたら・・・あたしを嫁さんにしてくれる・・・?」
「さあ~?それはどうかいなあ」
「幻狼・・・好きな子・・・いる・・・?」
その問いに翼宿は押し黙った
そして
「うん」
静かに答えた
しばらく沈黙が続いたが
「そか・・・それならしょうがないよね・・・幻狼の幸せ・・・願わなきゃねぇ・・・」
「聖夏・・・すまんな」
「いいよ!!何か今涙止まっちゃった!!」
見ると本当に聖夏は笑顔に戻っていた
「だけど幻狼・・・一つだけお願い・・・あたしの事・・・見捨てないでくれる?」
その言葉に翼宿もまた笑顔になって聖夏の頭をくしゃくしゃと撫でた
「当たり前やろ~お前はホンマにアホでどうしようもない俺の妹のまんまや!!」
聖夏は微笑んだ
「行ってらっしゃい!!幻狼!!」
いつも笑顔のあなただから、私も笑顔でいるよ
一方光は紅南国の大通りを歩いていた
右も左も分からない初めてだらけの景色
段々光の中から抑えていた不安が再びこみ上げてきた
「ママ・・・」
ぽつりと呟いた時突然通りの角から腕を引かれた
「わわっ!?」
そのまますっぽり角に隠れた
暗がりで誰に引っ張られたかは分からなかった
しかし引いた本人は人差し指を立てていた
「し~っ」
「え?」
「今そこの角から身売りの奴らがあんたの事見てた・・・きっと珍しい子供だから何処かに売り飛ばすつもりだったのよ」
「ええっ?」
「もう!!そんなにぼーっと歩いてたらそういう奴らに目つけられんのも当然だわ!!」
自分と同い年くらいの少女は綺麗な髪の毛を二つに結わえ、くりくりした少し垂れ気味の目で光をじろじろと見た
「ねぇ?あんた家来ない?」
「えっ!?」
「どうせ行く当てないんでしょ!?だったら家で面倒見たげるよ!!家、宿屋と呉服問屋が先日合体したからさ!!あんたに似合う服丁度入ったトコなんだぁv」
一人でべらべら喋る少女
でもどうせ自分には行く当てはなかったから
今は甘えておくべきであろう
「じゃあ・・・お願いしようかな・・・」
「やった!!決まり!!」
そう言って再び光の手を引いた少女
胡玲春
朱雀七星が一柳宿の生まれ変わりだった・・・
生まれて初めて見る異国の世界へ
母を母の仲間を救う為に・・・
「ん・・・?」
雨漏りの音で目覚めた光は辺りを見渡した
そこは何処かの宮殿の屋根で囲まれた路地だった
光にも何が起こったのかよく分からなかったが、この世界が全てあの巻物の中だという事を一瞬で把握した
「ここが・・・」
紅南国
都市の中心部に光はいた
ここから全てが始まる
朱雀七星士を救う為に・・・
光は少し怖くなったが自分は「鬼宿」の息子なのだ
こんなところで怖気づいては現実の世界で自分を信じて待ってくれている父と今この世界で仲間の為に頑張っている母に申し訳がつかない
とにかく母親と合流しなければ
光は歩き出した
「幻狼・・・ホンマに大丈夫なんか・・・?」
遠出の準備をする翼宿に功児が声をかける
「ああ!!この通り体は何ともあらへんわ!!他の仲間も見捨てておけんしなぁ!!」
翼宿は八重歯をニッと突き出して笑った
自分の危険も省みずに仲間の命を最優先するのが翼宿の長所だった
「巫女様・・・ホンマに気をつけてください・・・どうか幻狼の事よろしく頼んますわ」
美朱は力強く頷いた
「大丈夫です!!功児さん。きっと朱雀があたし達を護ってくれます!!」
「ほな行ってくるわ。山の事は頼むで、功児!!」
「あ・・・幻狼」
「ん?」
「・・・聖夏が」
そういえば聖夏の姿が見当たらない
「あれからずっと部屋にこもっとんねん。最後の挨拶くらいしてきたらどうや?」
「翼宿。行ってきなよ!!あたし、待ってるから!!」
翼宿は頭を掻きながらその場を離れた
キィ
扉を開けると聖夏は寝台に寝転がっていた
「聖夏・・・寝とるんか?」
その言葉に聖夏はがばと飛び起きた
「幻狼・・・」
その頬は涙で濡れていた
「ったく!!まだ泣いとるんか!!そんなんやと嫁の貰われ手がおらんぞ!!」
「あっ・・・あたしは・・・幻狼の・・・・・・お嫁さんになる資格なんて・・・もうないかな・・・」
聖夏は元気をすっかりなくしていた
翼宿はため息をつくと聖夏の寝台に腰掛けた
「・・・今から巫女と仲間助けに行かなあかんねん」
「・・・そっか・・・」
「昨日の俺みたいに朱雀七星を狙う物騒な奴がおるみたいなんや。はよそいつ見つけて息の根止めへんとな」
「だけど・・・幻狼だっていつまた命を狙われるか・・・」
「俺はもう大丈夫やて。少なくともしばらくはな」
無邪気に笑う翼宿に聖夏の胸はまた痛んだ
「・・・幻狼。ごめん」
「ん?」
「あたしのせいで・・・」
「何しけた顔しとんねん!!寧ろ俺こそすまんな。お前を囮にされたんや」
聖夏は静かに首を振る
そんな聖夏の頬を翼宿は左右に引っ張った
「痛っっっ!!!何すんのよ!!!」
「やっといつもの聖夏に戻ったやんけ!!さっきからお前らしくあらへん!!」
「そんな・・・幻狼ぉぉぉ~~~~~~」
聖夏は翼宿に抱きついた
「どわっ!!何すんねん!!抱きつくな言うに!!!」
聖夏は泣いていた
翼宿は大きくため息をつくとその頭をそっと撫でた
「・・・心配せんでええ。帰ってくるから」
「そしたら・・・あたしを嫁さんにしてくれる・・・?」
「さあ~?それはどうかいなあ」
「幻狼・・・好きな子・・・いる・・・?」
その問いに翼宿は押し黙った
そして
「うん」
静かに答えた
しばらく沈黙が続いたが
「そか・・・それならしょうがないよね・・・幻狼の幸せ・・・願わなきゃねぇ・・・」
「聖夏・・・すまんな」
「いいよ!!何か今涙止まっちゃった!!」
見ると本当に聖夏は笑顔に戻っていた
「だけど幻狼・・・一つだけお願い・・・あたしの事・・・見捨てないでくれる?」
その言葉に翼宿もまた笑顔になって聖夏の頭をくしゃくしゃと撫でた
「当たり前やろ~お前はホンマにアホでどうしようもない俺の妹のまんまや!!」
聖夏は微笑んだ
「行ってらっしゃい!!幻狼!!」
いつも笑顔のあなただから、私も笑顔でいるよ
一方光は紅南国の大通りを歩いていた
右も左も分からない初めてだらけの景色
段々光の中から抑えていた不安が再びこみ上げてきた
「ママ・・・」
ぽつりと呟いた時突然通りの角から腕を引かれた
「わわっ!?」
そのまますっぽり角に隠れた
暗がりで誰に引っ張られたかは分からなかった
しかし引いた本人は人差し指を立てていた
「し~っ」
「え?」
「今そこの角から身売りの奴らがあんたの事見てた・・・きっと珍しい子供だから何処かに売り飛ばすつもりだったのよ」
「ええっ?」
「もう!!そんなにぼーっと歩いてたらそういう奴らに目つけられんのも当然だわ!!」
自分と同い年くらいの少女は綺麗な髪の毛を二つに結わえ、くりくりした少し垂れ気味の目で光をじろじろと見た
「ねぇ?あんた家来ない?」
「えっ!?」
「どうせ行く当てないんでしょ!?だったら家で面倒見たげるよ!!家、宿屋と呉服問屋が先日合体したからさ!!あんたに似合う服丁度入ったトコなんだぁv」
一人でべらべら喋る少女
でもどうせ自分には行く当てはなかったから
今は甘えておくべきであろう
「じゃあ・・・お願いしようかな・・・」
「やった!!決まり!!」
そう言って再び光の手を引いた少女
胡玲春
朱雀七星が一柳宿の生まれ変わりだった・・・