ENDLESS STORY

あいつ・・・・・・・・・・今も、玲春の中で頑張ってるやろか

今日で、あの戦いが終わって丁度一ヶ月
彼と別れて、一ヶ月だった
何も言わず、何も聞かず・・・朱雀七星はまた散らばった
確かに、遠く離れていても心は繋がる感覚はあった
それは、以前と変わらない筈なのに・・・それなのに、なぜか心細い
「・・・・・・・柳宿」
朱雀七星が輝く夜空を見上げ、翼宿は呟く
その時
ガンッ
また、愛瞳にでも殴られたのかという衝撃に襲われた
しかし、その力は破壊級で、人間にはとても耐えられるものではなかった
そして、そんな怪力に耐えられるのも、翼宿だけ

「あっらぁv打ち所が悪かったかしらぁ?ごめんなさいねぇv翼宿ちゃんvvv」

それは、生涯命を懸けて愛したただ一人の「七星士」

「ぬりこ・・・?」
「そぉよv見れば分かるでしょv」
「貴様・・・毎度毎度・・・挨拶代わりに俺を殺す気かっ!?」
「だって、こうでもなくちゃ翼宿ちゃんは翼宿ちゃんじゃないわv」
そんな冗談も、懐かしい
「・・・・・・・・・・・元気にしとったんやな・・・」
その体は、もう半透明で触れられないのは分かっていた
ある程度、距離を保って会話をする
「最後よ・・・これが本当に最後。体力使うのよ。あの子供の玲春から魂だけ離れるのは・・・」
「さよか・・・」
二人とも、「あの時」の話はしたくないように思っていた
が、お互いそれだけしか「大事な事」が見つからない
「「・・・・・・・・あのっ」」
二人が、同時に言葉を発した
「あ・・・柳宿、先でえぇ」
「こういうのは・・・翼宿が先でしょ?」
時間が限られているというのに、何とも要領が悪い二人だ
翼宿は、意を決したように話した
「あの時・・・ショックやった」
柳宿は、何も言わない
「・・・・・・・・・分かってたつもりやった。お前とは、この戦いが終わったら別れなければあかん。せやけど、ちゃんと別れの言葉くらい言いたかったんや。それが、男としてのけじめっちゅーもんやん。せやのに、お前は黙って帰った。探したくても見つけられんで・・・このまま会えへんかったら・・・俺、どないしようかと思っとったわ」
「ごめん・・・」
「・・・いや。えぇんやけどな・・・今、会えとるから」
沈黙
「・・・・・・・・あたしが、嫌だった」
「え?」
「あんたみたいに・・・けじめとか・・・つける自信がなかった」
「・・・・・・・・・」
「あたしっていう存在が、あんたを生きづらくさせてるんじゃないかとも思ったし・・・本当はいけない事だって分かってたの」
「・・・・・・・・・」
「けどさ、やっぱり勝てないのよね。理性って奴には」
「柳宿」
「だから、会いに来た・・・ごめん」
柳宿は、泣いていた
「謝んな」
「これが・・・あたしなりのけじめなのかもしれない・・・けど・・・遅くて・・・ごめん」
「待ってた・・・俺は、ずっとお前を」
翼宿は、もう触れられない柳宿の頬にそっと触れる
微かな涙の温かさ
「・・・・・・・・・・・・雪もいいけど、たまには玲春にも会いに来てよね・・・?」
「ああ」
「けど・・・引っ越すのよ。明日の朝、西廊国の外れに店構える事になった・・・」
「・・・・・そうなんか」
「けど、その俊足なら来れるわよね・・・?」
翼宿は、静かに微笑んだ
「おぉ。天下の翼宿様をなめんなv」
「・・・馬鹿」
翼宿は、そっと柳宿の髪を撫で、最後の接吻をした・・・
その瞬間、光が溢れた
柳宿の体が透けていく
「翼宿・・・」
翼宿は、柳宿を抱きしめた
「消えるトコは・・・見ぃひん・・・。お前は・・・絶対に消えないから・・・」
「翼宿・・・」

「愛しとる」

「・・・・・・・・・ありがとう」

柳宿は、静かに・・・・・消えていった


「たすきっ!!!!」
雪が、その場に駆けつけた
「どうしたの?おばさん達、探してたよ?」
その後姿に声をかける
翼宿は、笑顔で振り返った
「すまんなvすぐに行くわ!!」
その手にはしっかりと・・・柳宿の形見の腕輪

忘れない。絶対に忘れない
君と過ごしたあの淡い夢のような時間


「ママ~僕の帽子、どこぉ?」
「光~昨日、洗濯に出したでしょ?干してあるわよv」
「何だぁ?また、洗濯物取り込み忘れたんだろ?」
「主婦は、忙しいのよ!!」
宿南家に・・・変わらぬ朝
記憶をなくした光と・・・魏と美朱
また、平凡な毎日を送る
「ねぇねぇvママ!!パパ!!僕の学校に転校生が来たんだよv」
「へぇ~男か?女か?」
「女の子!!名前がね、雪ちゃんっていうんだ!!」
その言葉に、二人はハッとした
「まさか・・・光、その子の事気になってるんじゃないのぉ?v」
「なっ何で分かるのぉ~?ママ~」
「光の事なら、何でもお見通しだよvvv」
その場に、暖かい笑い声

机の上には、今も変わらず微笑む朱雀七星士

私たちの物語は、永遠に終わらない
永遠に、私たちの絆は消えない

だから・・・忘れないよ。私たちは・・・あの鮮やかな冒険を・・・永遠に。
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