ENDLESS STORY

「幻狼が怪我しよったぞぉ!!」
「担架用意しろ!医者呼べ!」
廊下で騒いでいる山賊の声を聞いて美朱が半開きの扉から外を覗いた
あわただしく何人もの山賊が駆けていた
その中に功児もいた
「功児さん!!どうしたんですか!?」
「あぁ朱雀の巫女さん。大変なんです!!幻狼が聖夏庇って大怪我を・・・!!」
「えっ!?」
美朱も山賊に続いて駆け出した

林檎の木の下には聖夏が頭を支えて横たえている血まみれの翼宿の姿があった
「翼宿!!」
遅かったか
「巫女さん!ごめんなさい!!私がぼーっとしてたからこんな事に・・・!!」
聖夏は涙をボロボロ流していた
翼宿の呼吸は微量だった
顔がみるみる蒼白になっていく
「ちくしょぉ!血が止まらへん!!」
「何でこんな事に・・・!!」

邪悪な者・・・!!
そいつが翼宿を・・・!?
私は・・・私はどうする事も出来ないの!?

美朱の心で煮えくり返った様な怒りが込み上げた

太一君
朱雀星君
鬼宿
お願い
翼宿を助けて!!

途端に美朱の体から朱い光が放たれた
「巫女さん!?」
皆が一斉に美朱を見た
美朱も何が起こっていたのか分からなかった
その光は翼宿の全身を包み、まるでその赤に吸収されるように傷口が消えていった
そして
翼宿は目を開けた
「幻狼!?」
聖夏の呼びかけに一斉に山賊が翼宿の周りに駆け寄った
「・・・あれ?俺何しとんねん?」
「げ・・・げ・・・げ・・・」
「何泣いとんねん。聖夏」
「げんろぉぉぉぉ!!」
聖夏と山賊の叫び声が交じり合一斉に翼宿に飛び掛った
美朱はその場にへたりと座りこんだ
「嘘・・・」
功児が駆け寄った
「巫女さん!今一体何があったんですか!?」
「私にも分からない・・・でも」

朱雀星君が助けてくれた・・・

そう感じたのだ


「タダイマ~」
魏が何も知らずに帰宅した
「ひぇ~びしょびしょだ。美朱~いるか~?」
「パパ・・・」
「お!光!どうしたんだ?ママは何処だ?」

「ママが・・・ママが・・・赤い巻物に吸い込まれて消えちゃったの」

「え・・・?」
「変なお婆さんに仲間が危ないとかって言われてそれで・・・」
困惑している光の肩を掴んだ
「本当か・・・?光」
光は力強く頷いた
子供の夢にしては何もかもが出来すぎている

「鬼宿。やっと帰ったか」

空中には

「砂かけババァ!!」

ゴン

鉄拳を放った太一君の姿
「何が砂かけババァじゃ!!美朱が大変な目に遭ってるというのに!!」
「どういう事なんだよ!太一君!!」
「その子供の言う通りだ。美朱はまた巻物の世界へ旅立った・・・」
「・・・・」
「朱雀七星士を救う為にな・・・」
「何言ってんだよ。もう戦いは終わった・・・」
「今更なる邪悪な天コウの手下が朱雀七星・・・勿論お前を含む七人を次々と狙っているのだ」
「俺達を・・・?」
「それでママは助けに行ったんだよ!!この人達を!!」
光が手にしていた写真たてを見て更に魏は仰天した
「何だよ!?この写真・・・美朱以外・・・」
「それがこの世界での暗示じゃ。そしてこの自然災害・・・」
「太一君。どうすれば・・・」
「お前は転生したから奴にまだ知られてはいないだろう。しかしそれも時間の問題だ・・・」
「俺は・・・みんなを救えないって・・・言うのかよ・・・」
拳を震わせる魏を見あげる光が突然こんな事を言い出した

「僕・・・僕が行くよ!!」

「え?」
「僕がママを朱雀七星士を助けてきてあげるよ!!」
「光・・・?何言ってるんだ。お前一人じゃ危険だよ!!」
「だって・・・放っておけないもん!!」

その時、光の額に朱文字が浮かび上がったのを太一君と魏は見た

「・・・よし。行ってよい。光」

「!?太一君!?」
「一人より二人の方が良いじゃろう」
「そんな事・・・」
「光。この巻物に入るのだ」
太一君は巻物を宙に広げた
魏も諦めたように光に向き直った
「光・・・何かあったらすぐにパパを思え。パパがお前を護ってやるから・・・お願いだ。パパの代わりにみんなを救ってくれ」
「うん!分かった!」
光は頷くと巻物へと飛び込んでいった
その場に落ちた巻物に魏はしばらく見入っていた
「・・・大丈夫じゃ。鬼宿。今の彼の額を見ただろう?」
「・・・あぁ。確かにあの文字は・・・」



「彼は今二人目の鬼宿になったんじゃ・・・」

その後二人は暫く黒光りの稲妻を見つめていた
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