ENDLESS STORY

ドサッ
「うっ・・・」
張宿は、床に強く投げ出された
「・・・皆さん・・・?」
そこは、広く冷たい廊下
周りにいた筈の美朱達の姿がない
「ここは・・・」
張宿は、立ち上がると嫌に鳥肌が立つのを感じた
「・・・・・・・怖いよぉ」
張宿は、ぐずった
今の張宿には、字がないからだ
彼に字がなければ、それは無能な泣き虫の子供と一緒
この場所がどこであるかも、判断できない
すると
『可哀想に・・・遊んであげるよ。坊や』
奥から、声が聞こえた
顔を上げると、そこにはゾンビの群れ
「わあああっ!!!」
張宿は、そのまま宛てどもなく駆け出した

カツッ
「ここは・・・」
軫宿は注意深く辺りを見渡す
(落ち着け・・・。これは、罠だ・・・)
分かっていたが、広く冷たい廊下
どうする事も出来なかった
すると、向こうに人影が見えた
軫宿は、素早く構える
すると、そこには
「少・・・華・・・?」
昔、愛した少華の姿
「寿安!?寿安なの!?」
少華は、気づくなり駆け出してきた
「お前・・・どうしてここに・・・」
「寿安!!会いたかったわ・・・」
「お前は、あの「少華」の中にいる筈では・・・」
「あなたに会いたくて、肉体から魂を切り離したの・・・。そしたら、豪焔に捉えられてしまって・・・」
どこか、その言葉に違和感を感じた
「寿安・・・ねぇ。早く・・・二人のあるべき場所へ還りましょう・・・?ここにいると、危ないわ」
「だけど・・・少華。俺はまだ・・・仲間の為にやるべき事が・・・」
すると、少華の爪が寿安の腕に食い込んだ
「行かせない・・・」
それは・・・化け物の顔だった

「みんな・・・どこなのだ!?」
井宿は、叫びながら廊下を駆け抜ける
(変なのだ・・・。みんなの気がちっとも感じられないのだ・・・。)
術を封じられていると、井宿は分かっていた
「くそ・・・豪焔・・・!!!」
すると、後ろに人の気配を感じた
「芳准」
振り向くと、そこにはかつての親友
「飛皋・・・!!」
「何してるんだよ?こんなトコで」
「お前こそ・・・」
「ああ・・・。何か迷子になっちまったよ。そしたら、お前の声がして・・・」
井宿は、錫杖を構えて警戒した
偽者だと分かっていたから
「何だよ・・・ひどいな。昔は俺たち・・・親友だったじゃないか。誰よりも分かり合えた・・・。少なくとも、俺はそう思ってたんだぜ・・・なぁ?芳准」
途端に、飛皋の顔が歪む
「なぁ・・・?なのに、どうしてあの時・・・あの時・・・俺を・・・なぁ・・・?」
左目に急激な痛みが走る
「くっ・・・!!!!」
「なぁ・・・?お前も、溺れてみるか・・・?」
よろけた井宿の背後から・・・微かな水音
騙されちゃ、駄目だ

カキィン キィン
「くそ・・・!!!」
星宿は、行く宛てがない廊下の壁を切りつけようと試みたが、どんなに剣を叩きつけても皹すら入らない
「みんな・・・どこにいる・・・。返事をしてくれ・・・」
壁を叩きつけて、うめいた
「・・・・・・・・!!!」
足音が聞こえる
「誰か・・・いるのか!?」
そこには、自分の愛した人
「柳宿・・・!!!」
星宿は、駆け寄った
「無事だったのだな・・・よかった。他のみんなは・・・」
「星宿様・・・」
「早く他のみんなを探し出して・・・美朱と光を助け出さなければ・・・」
「本当に・・・そんな事を思ってらっしゃるんですか?」
その言葉に、柳宿の顔を見る
柳宿は、潤んだ瞳で星宿を見上げる
「・・・柳宿?」
「本当は・・・私がほしいだけなのでしょう・・・?星宿様」
途端に、柳宿は星宿に口付けをした
「・・・・!!!!」
偽者だと分かったが・・・体が動かない

「はあっ!!!!」
キィン
「・・・駄目か・・・」
一方、本物の柳宿は星宿と同じように素手で壁の破壊を試みたが、無理だった
「・・・腕輪、反応しなくなってるわ。普段の怪力も出ない・・・やられたわ」
床に座り込む
みんなで来なければ、よかった
きっと他の仲間も・・・
「柳宿・・・」
誰かに声をかけられ、咄嗟に振り向く
「翼宿!?」
最愛の男の姿だった
「あんた・・・無事だったのね!!井宿は・・・雪は!?」
「なぁ。柳宿・・・俺、ちょい疲れたんや・・・」
途端に、翼宿は柳宿をそっと抱き寄せる
「え・・・翼宿・・・?」
「いつまでも・・・一人で頑張っとるん、嫌になってん。お前なら分かっとるやろ?」
「たすき・・・何言ってんのよ・・・今は、そんな事言ってる場合じゃ・・・」
床に追い詰められ、手首をそっと掴まれる
「ちょっと・・・休憩せん?」
そっと、首筋に舌がかかる
「ちょ・・・たすきっ・・・」
「気持ちえぇんやろ?声・・・出したらえぇやん」

「・・・・・・・・・あんた・・・・・・・・翼宿じゃない・・・・・・・・」

その声に、翼宿の偽者は顔を上げ、不敵に笑った
途端に、その顔は化け物に変わった


「烈火神焔!!!」
「烈火神焔!!!」
「烈火・・・・・・ぜぇぜぇ」
本物翼宿も、鉄扇から炎を出すのに必死だった
「あかんわ・・・ちょい休憩~・・・」
当の翼宿の熱さは変わらなくて
「みんな・・・どこにおるんやぁ~・・・」
間抜けな声を出す
すると
「た・・・・・・・・・・すきっ・・・」
「柳宿!?」
翼宿は、顔を上げる
しかし・・・その声の主はどこにもいなくて
代わりに・・・柳宿の艶のある声が廊下に響く
「柳宿・・・っ!!おんどれ・・・どこで何して・・・」
すると、正面に豪焔の顔が浮かび上がった
「豪・・・焔・・・!!!」
『どうだ?翼宿。愛する者が快感に喘ぐ声は・・・』
「おんどれ・・・!!!今すぐ止めろ・・・!!!」
『無駄だ。貴様・・・なぜ、あの男など愛した?死んでしまって、今は記憶をなくして他の人間へと生まれ変わっているというのに・・』
「貴様に・・・どうこう言われる筋合いはあらん・・・!!」
『そうか・・・。しかし、お前は結局仲間を抱いて褒美を与えてもらいたかった。自分の頑張りを認めてほしくて、包容力のある柳宿を選んだ・・・。貴様は、結局抱いているだけで十分な・・・ただの男だ』
途端に、柳宿の声が高くなる
「じゃかあし・・・・・・・・・・!!!!!!」

「足掻け。足掻くのだ。朱雀七星。貴様らの脳の髄まで追い詰める・・・」

それは、豪焔から与えられた朱雀七星の苦悩だった
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