ENDLESS STORY

「張宿」
柳宿は、張宿に声をかけた
張宿は、部屋の寝台の上で泣いている
そっと、頭を撫でる
「張宿・・・。一体、何があったの・・・?」
「ぬりこさんっ・・・軫宿さんは・・・」
「平気よ。ちょっとびっくりしただけだから・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「けど、軫宿は張宿を助けて、今も張宿の事心配してるのよ?何かあった?」
柳宿になら、言える気がした・・・が、秘密にしておきたかった
「僕・・・」
「話したくないなら、無理に話さなくていいのよ・・・?みんな、きっと分かってくれるわ」
柳宿は、無理に他人の気持ちをこじ開けようとはしない人だった
「僕・・・僕・・・聞いちゃったんです・・・」
「何を?」

「・・・・・・・・・・・軫宿さん・・・・・・・・・・・僕の・・・・・・・・・・・・・・・・・実のお兄さんだって・・・・・・」

「えっ・・・?」
「僕・・・もし、それが本当なら合わせる顔がないです。軫宿さんの優しさが・・・辛いです」
「・・・・・・・・・・・・」
「軫宿さんが、僕らに気を遣って自分から家族を抜けたのなら・・・僕は申し訳ないです・・・」
まさか、出会うとは思わなかった
同じ星の元に生まれた者として、また再び

「情緒不安定なんや。まだ、子供やから・・・堪忍したれや」
翼宿は、軫宿の肩を叩く
「今は、柳宿に任せよう。我々には、時間がない。子供の張宿を巻き込まないように、せめて私たちだけでも・・・」
星宿は、早速剣に気を集中させているところだった
「すまないな・・・」
「何を言っているのだ。軫宿のせいじゃないのだ」
井宿も、優しく微笑む

「ママ・・・」
「どうしたの?光」
「この戦いが終わったら、僕達帰るの・・・?」
「そうよ。向こうでパパも待ってるしね」
しかし、息子の表情がなぜか曇って見えた
「どうしたの?光・・・」
「ママ・・・ごめんなさい。僕、まだ・・・」

「・・・・・・・・・・雪ちゃんの事?」

母親の鋭い勘に、光は顔を赤くする
「光って、奥手なんだねvパパ似かな?雪ちゃんに、まだ未練あるんだ?」
「未練って・・・そんな言い方・・・」
「嘘嘘v・・・だけどね、光。ママ達はいつまでもここにいてはいけない存在なの。みんなにもみんなの人生があって、いつまでも一緒にはいられないのよ」
美朱は、残念そうに光の頭を撫でる
自分は、天地書の人間を自分の世界に呼び寄せた立場として、少々胸が痛む訳だが
「・・・光。それなら、おいらと一緒に会いに行くのだ?」
「井宿?」
その話を聞いていた井宿が、光に声をかけた
「え・・・?会いに行ってもいいの・・・?」
「平気なのだ。一日くらい・・・君にも子供らしい事をさせてあげたいのだ」
「井宿・・・でも・・・」
「子供に、こんな戦いは酷なのだ。平気なのだ。いざとなったら、おいらも彼を護れる。前のように、女性の罠にまんまとはまらないようにだけすれば・・・」
井宿は、反省しているようだった
自分が、かつて仲間を襲ってしまった事を
「これは・・・せめてもの償いなのだ」
「何言ってるの!!井宿のせいじゃないよ!!こうして、また優しい井宿に戻ってくれたしねv」
「それに・・・光には借りがあるのだ。おいらを元に戻してくれたのは光なのだ」
井宿は、光の頭を撫でる
「明日の朝に、出発するのだ。夕方には必ず戻るように。それまでに、雪ちゃんと最後の思い出を作るといいのだ」
「・・・うん!!」
井宿は、美朱に向き合った
「その間に、星宿様や柳宿には、軫宿と張宿の関係をどうにか修復するように伝えておくのだ。おいらは、あの二人を信じている。何があったかは知らないが・・・知らない方がいいと思うのだ」
「そっか・・・あたしも協力するよ・・・。だけど・・・翼宿は?」
「あいつを連れて行ったら、身も蓋もないのだ。何せ、雪ちゃんのかつての憧れの存在。行ってしまったら、余計に戻りづらくなるだけなのだ」
「そう・・・だよね」
その会話を、陰で聞いていたのは
「ヤらしいで・・・井宿」
つまらなそうに、鼻を鳴らした翼宿であった
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