ENDLESS STORY

「さよか。そんな小さいお嬢ちゃんがねぇ」
事情を聞き終えた翼宿の母親と姉の愛瞳はため息をついた
「暫く・・・置いたってくれへんか?こいつの母親が迎えに来るまで」
「分かった・・・あたしらも寂しゅうなってたトコや。娘が一人ずつ減っていって、愛瞳もいつ嫁に行くか分からんけんね?」
「おかん、あたしは暫く所帯は持たんってぇ~」
「よろしく・・・お願いします」
「えぇよぉv遠慮せんでも!!今夜は、歓迎会だねぇ、雪ちゃんv」
母親は笑顔でそう答える
「一応・・・親父もおるさかい。仲良くしたってくれや」
「え・・・?お父さん、どこにいるの?」
「さっきから、隣に座っとるやろ」
「存在感・・・・・・・ないんです」
雪は隣にいつの間にか座っている翼宿の父親に悲鳴をあげた
「まあ、最初は住みづらいかもしれんが、勘弁せぇや。雪」
翼宿は、苦笑いで雪の頭を撫でる
「ところで・・・俊宇?そちらのお嬢さんの紹介がまだなんじゃあないかい?」
突然、母親は翼宿の隣に座っている女性?の話題を出した
「あ~・・・せやから、こいつはなぁ!!」
「初めまして・・・私、翼宿と同じ七星士の柳宿です。いつも・・・お世話になってます」
「あらまぁ!!七星士だったんですかい!?偉いべっぴんさんだ事ぉ~俊宇!!こんなんで仕事集中出来んの!?」
愛瞳が、翼宿をどつく
「さっきから、いちいちじゃかあしいんじゃ、姉ちゃん!!こいつとは・・・そんなんやあらへん・・・」
さすがに、これ以上はタブーだ
何せ、柳宿はこの世界にいてはいけない人間
柳宿も、そこは理解していた

「ほな・・・後は、頼んだで」
「気つけるんやで」
「くれぐれも・・・無理すんなや」
翼宿と柳宿は家を出る
「雪。ちゃんとこのおばはんの言う事聞くんやで。きっと、母ちゃん迎えに来たるからな」
翼宿は、もう一度雪の頭を撫でた
「たすき、また会いに来てくれる?」
「おう。お前も遊びに来い。厲閣山に。山賊切って歓迎するよって」
「うん・・・たすきの首飾り、大切にする・・・」
「おう。なくしたら、承知せんで!!」
「じゃあ・・・ね?雪。ちゃんとおばさん達の言う事聞くのよ?」
柳宿は、そっと雪の傍にしゃがみこんだ
「ぬりこ・・・もう・・・会えないの・・・?」
その言葉に、柳宿はギクリとなった
「どうして・・・?」
「だって・・・ぬりこ、遠くの国の人なんでしょう?」
その言葉に、柳宿はハッとなった
「会えないの・・・?もう、雪と・・・」
雪が、ぐずついた
「雪・・・ごめんね。もう会えないかもしれないけど・・・けどね、絶対忘れないわよ?雪の事は。こんなに可愛い名前で愛らしい子、忘れられる訳ないわ。お母さんと幸せに暮らしてね?」
「ぬりこ・・・」
雪は、柳宿に抱きついた
柳宿は、そっと頭を撫でてやる
そんな光景を、翼宿は黙って見下ろしていた

カァカァカァ
夕暮れ時
烏が、上空を駆け抜ける
翼宿は馬の手綱を引いて、柳宿はその後ろを歩いていた
暫く、言葉を発しないまま
「雪・・・無事にお母さんに会えるといいわね」
「せやな。きっと大丈夫やろ・・・」
二人は、自分たちが可愛がっていた娘を手放したように切なくなった
しかし、しょうがない。切り替えなければ・・・
「ありがとね・・・?嘘・・・ついてくれたのね」
「何が?」
「あたしの・・・居場所」
その言葉に、翼宿は足を止める
「あたしさ・・・すっかり忘れてたわ。死んでるのよね・・・もうこの世にいない。いつまでも雪の傍にいちゃあ、雪が可哀想だもの」
「んな事ない」
「あんたの・・・傍にも・・・」
そっと振り返ると、柳宿の頬を涙が伝っていた

「ごめんね・・・。好きになっちゃって・・・」

言いたくなかった言葉
だけど・・・今の自分の存在は、彼を傷つける
何年経っても何十年経っても消えない傷をつける
「もう・・・あんたの傍にいちゃ・・・いけない・・・」
その瞬間、翼宿は柳宿を抱きしめた
「翼宿・・・?」

「お前は・・・・・・・死んでない」

「え・・・?」
「ここにおる。「柳宿」や。そして・・・今は、お前は「玲春」や・・・」
忘れかけていた還るべき場所の存在
「阿呆・・・・・・・・・・・・何でお前が謝んねん・・・俺は・・・もう傷つくのには慣れたんや・・・」
そう。君が、あの爪に貫かれたあの日から・・・
「やから、今だけでも・・・幸せって・・・言わせてくれ・・・」
ここにいる。それだけが僕の救いなのだから
「た・・・すき・・・」

「もう消しはせん。お前だけは・・・絶対に、俺が命を懸けて護る。例え、お前がいつか記憶をなくして、玲春に戻ったって、お前みたいな奴・・・絶対に忘れん。いつまでも、俺の中でお前は生きとる。せやから・・・今だけでも俺の傍におってくれ」

運命に逆らってしまう願いだったけれど、愛したい。君を・・・

「たすき・・・・・・・・・・・・・愛してる・・・愛してるよ・・・」

今だって、これからだってずっと好き

今、繋がった二人の想い
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