ENDLESS STORY

「柳宿」
名を呼ばれて振り返る
大好きな声
「明日、雪を俺の実家まで送るで。本人も分かってくれた。俺とお前で・・・送ってほしい言うとった」
「・・・そう」
「俺らが情けない顔しとったら、あいつが悲しむ。笑顔で・・・見送ってやろや」
「そうだね」
「ほな、明日・・・」

パタン
「翼宿」
今度は、自分の名を呼ばれて振り返る
「星宿様」
「色々と・・・大変だったな」
「すんません。こんな大事な時に、いつまでも油を売ってしもて」
「いや。雪の気持ちを考えたお前達の気持ちは大事だ」
そこで、沈黙
「・・・翼宿」
「はい」
「さっき・・・柳宿が泣いていた」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「あやつは、本心でお前を傷つけたかった訳ではない。分かってやれ」
「星宿様・・・」
星宿は、窓の外の月を見上げ言った
「私も・・・すっかり自惚れてしまっていた。柳宿の愛に凭れ、気づいたら柳宿の目は別の場所に向いていた」
「・・・・・・・・・・」
「そして、今でも変わらずその男の事を愛している」
「星宿様。俺・・・」
「今更、邪魔をするつもりはない。だがな、確かにお前達の恋路は決して応援できるものではないのだ。私も柳宿も今や同じ世界の人間。しかし、お前は違う。私とて、愛する妻や息子を今すぐ抱きしめてやりたい。しかし、それは一時の再会と共にまた永遠の別れを意味する。だから、私は会えない」
「・・・・・・・・・・・・」
「しかし、そなたらは違う。最初から決められた星のもとに定められた戦士。こうやって幾度となく再会を重ねてきた」
「・・・はい」
「しかし、それもそろそろ限界だ。我々はまた記憶をなくし、再び我らがあるべき場所へ戻らなければならない」
今、記憶をなくした永安、玲春、長生は自宅で眠ったままである
「そうすれば、柳宿がそなた自身の本当の幸せを願うのは・・・愛しているからこそだ。翼宿」
「俺・・・・・・子供だったんですわ。今でも、あいつが死んだってホンマは信じられなくて」
あの夜に感じたぬくもり
嘘じゃない

「愛は・・・時に全てを失う。柳宿を心から想っているならば・・・お前らが素直になる事だぞ」

星宿はそう言って、去っていった


「ほな、行ってくるさかい」
次の日の朝
翼宿は、柳宿と雪を馬に乗せ、宿を出る
「あのっ・・・ちょっと待って・・・」
そこに光が駆けつける
馬に乗る雪を見上げ
「雪ちゃん・・・元気でね。雪ちゃんは、一人じゃないよ。いつだってみんながいるから・・・負けないでね」
「光・・・」
雪は、ほんのり頬を染める
「ありがとう。光も・・・頑張ってね」
雪は、久々に笑顔を見せる
「ほんなら・・・」
「気をつけてね」
「無茶はしないのだ」
馬は、ゆっくりと歩き出した

「雪」
馬に乗りながら、翼宿は声をかける
「よかったやん。光の奴、いっちょ前にえぇ顔しよって・・・なぁ?柳宿」
「ほーんとvさすが、美朱の息子ってとこかしらv」
「そんな事ないよ~。光は、雪の大事なお友達だも~ん」
馬の上でかわされる温かい会話
それは、もうすぐ来る別れを意味するものだったけれど

「着いたで。ここや」
農家が広がる翼宿の実家
そこの一角に、翼宿は馬を止めた
「柳宿は・・・初めてやな。前に魏と美朱は来たんやけど」
「いっがい~あんたの家って農家だったんだ!?なのに、何よそのナリは~農家のおじさんおばさんが泣くわ」
「じゃっかあしい!!黙って、感心しとれや!!」
「俊宇~~~~~~~~」
「んあ?」
ガコン
突然、翼宿の頭を薪が直撃した
「~~~~~~~つう~~~~~~~」
「あらまぁv当たり所が悪かった事vあんたは、また厲閣山にこもりっきりで家にも帰らんと!!ちゃんと仕事しとったんかいな!!」
未だに家を出て行かない姉の愛瞳が、翼宿とそっくりの三白眼をきらつかせて駆けてくる
「姉ちゃん・・・貴様はぁ!!誰のお陰で、紅南の治安が今も安泰や思うとるんや!!」
「久々に帰ってきたと思ったら、そんな減らず口を・・・ん?」
愛瞳は、目をぱちくりさせている柳宿と雪を交互にじろじろと見た
「あ・・・あんた・・・式も挙げんと、勝手にこんな綺麗な嫁さんもろて、あろう事かこんな子供まで作っとったんか!!!」
「はぁ???姉ちゃん。勘違いもえぇ加減にせぇ・・・」
「ちっ違います・・・あたしは、その・・・」
「俊宇~」
「母ちゃん、乳重い・・・」
「帰っとったら、家に顔出しぃな。まったくこの子は・・・」
柳宿と雪は顔を見合わせ、呆れ顔で笑った

ひと時の・・・至福
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