ENDLESS STORY

「残るは、張宿だけなのだ」
「私たちだけで、張宿の居場所を何とか突き止められないだろうか・・・」
「張宿の魂が乗り移った学礼は、まだ生まれて間もない赤ん坊なのだ。我々から最も見つけにくい存在」
「逆に・・・魔神が学礼ちゃんの正体を知っていたなら、私たちより先に突き止められる可能性は大きいよね」
井宿、星宿、美朱の話し合いを軫宿はただ黙って聞いていた
「軫宿・・・心配でしょ・・・?仲良かったもんね・・・張宿と」
「・・・・・・・ああ」
軫宿は、分かっていた
自分は、本当は張宿にとって・・・
カタン
入口から物音がして、皆はそちらを見た
「翼宿・・・柳宿・・・?」
そこには無言で立つ翼宿と柳宿・・・そして、雪の姿だった
「どうしたの・・・?雪ちゃんのお母さん・・・・・・見つからなかったの・・・?」
「いや・・・・・・・・・・・・軫宿、雪の傷治せるか・・・?ちぃと、向こうで色々あってな・・・いっぺん戻ってきたわ」
「ああ・・・・・・・・・診せてみろ」
「あの・・・柳宿」
「ごめん・・・疲れた。ちょっと、部屋戻るわ」
柳宿は、美朱の問いかけにも応じずにその場を去った
「え・・・・・・・・・・・・何か・・・あったの?」
「・・・・・・・・・・・・何もあらん」
翼宿は、そっぽを向いた

「柳宿・・・?」
美朱がそっと部屋を訪ねる
柳宿は、軒先に腰かけている
「どうしたの・・・・・・・?翼宿と・・・・・・・・何かあった?」
「何もないわよ・・・ちょっと、疲れちゃって。向こうでね・・・雪のお母さん見つかったんだけど・・・その前に、雪が父親に見つかって、殴られちゃって・・・翼宿が怒っちゃって連れ戻してきただけなのよ」
「そう・・・なんだ」
とりあえず、結果報告
「それで、翼宿の提案で暫く雪を・・・翼宿の実家に預ける事にした」
「それが・・・一番いいかもね」
「そう・・・」
柳宿は、俯く

「柳宿・・・話して?あたし・・・今、一応母親であり妻なんだよ・・・?女の気持ち・・・分かってるつもり」

「変なの・・・あたし、オカマよ?」
「へへ・・・柳宿は柳宿だよ」
「・・・・・・・・・・・・・・警告されちゃった。娘娘に」
「娘娘に?」
「そう・・・・・・」

『柳宿』
『どうしたの?娘娘。いきなり・・・』
『柳宿・・・・・・・・・こんな事を言うのは酷だけど・・・・・自分の立場分かってるね?』
『え・・・?』
『柳宿は・・・辛いけど、もうこの世の人間じゃないね。必要以上に人間と関わる事は許されない。それが天の掟』
『・・・・・・・・・・・・・・・』
『雪ちゃんとは・・・もう縁を切るべきね。それが彼女にとって一番良い事・・・・・・・・・それに、翼宿とも』
『・・・・・・・・・・・・・・・』
『凄く辛いと思うけど・・・・・・だけど、宿命ね。柳宿なら・・・分かるね?』

「柳宿・・・」
柳宿の瞳から、涙が零れた
「ごめ・・・」
「いいよ」
「分かってる・・・・・・・つもりだった・・・・・・・あっちに行ってからもね、ずっとあいつの事しか頭になかったの・・・。恥ずかしい話・・・だから・・・嬉しかった。結ばれて・・・・・・・・・・・・・・・好きだったから」
「うん・・・」
「けど・・・けどね・・・もう、あたしは・・・」
美朱は、そっと柳宿を抱きしめた
「いいよ・・・柳宿。いつでもいいんだよ・・・人を本気で好きになる時って・・・誰も決められないよ」
そのやりとりを、星宿は陰で黙って聞いていた

雪の傷は完全に治った
「さすが・・・軫宿やな」
「まあな・・・まだ、健全だ。こういう時に使わないで、この力は役に立たないからな」
「そんな事ないやん。お前は、しっかり俺らのフォローしてくれとる」
「たすき」
「どや。もう、痛くないやろ?」
「たすき・・・あの」
「話があるんじゃないか?俺は、出ている」
「おお・・・・すまんの。軫宿」
軫宿は、空気を読んで部屋を出て行った
「何やねん。改まって」
「あの・・・・・・ぬりこと・・・喧嘩しちゃったの・・・?たすき」
その言葉に、翼宿は押し黙った
「別に・・・してへんって。あいつも疲れてた言うとったしな・・・人間・・・いつまでも元気な時もないんや」
無理に笑う
「雪のせいで・・・たすきとぬりこ、喧嘩しちゃったんだよね・・・」
「な・・・何言うとんねん!!!んな事あらん!!余計な心配すんな!!」

「雪・・・雪ね、仲良しなたすきとぬりこが好きだよ」

その幼い願いに、翼宿はなぜか心が痛んだ
「ふ・・・・・・・阿呆。餓鬼がいっちょ前に・・・」
沈黙が流れた
「・・・・・・・あのな、雪。またお前を傷つけてまうかもしれんけど・・・さっき・・・お前の母ちゃんに会ってきたで」
その言葉に、雪の顔が強張った
「泣いとった。お前を助けてやれんで、悔しがってた。まだちゃーんと、雪の事大事にしてくれとったで」
「本当に・・・?」
「せやけどな、母ちゃんもその・・・女の事情があるらしくて、今はまだ会えん言うとった。せやから、俺の実家にお前を預けとる間に、母ちゃん・・・お前を迎えに行ってくれるらしい」
「・・・・・・・・・・・・」
「俺らと離れんの・・・・・・嫌な気持ち分かるけど・・・・・・・やけど、まだ闘いは終わっとらんねん」
「・・・・・・・そうだよ・・・・・・・ね」
雪は、大人しく従った
「でも・・・闘いが済んだら・・・雪、たすきとぬりこともう一度会いたい・・・これからも会いに来てほしいよ・・・」
その言葉に、翼宿は押し黙った

自分は出来る。してあげられる

しかし・・・・・・・・・・柳宿は・・・

「雪・・・・・・・・・・・あのな・・・・・・・・・・・・・柳宿は・・・・・・・・・」

言うべきなのか?
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