ENDLESS STORY

コトン
「どうぞ」
「ありがとうございます・・・」
茶を薦められて、魏はやっと一息ついた
先ほどまで、鈴乃の遺骨は渡せないと意地を張っていた主人だったが、魏をやっと中に入れたのには訳があった
「悪かったね・・・あんな雨の中、放っておいてしまって」
「いいえ・・・僕こそ、理不尽な事ばかり言ってしまって・・・」
「いや。自分たちの事しか考えていなかったのは、私の方だ。許してほしい」
「いいえ・・・」
「私の名前は、大杉巧です。鈴乃お嬢様・・・いいえ。鈴乃は母親です」
「・・・・そうなんですか・・・・!!!???」
「ええ。母が死んでから、もう10年になりますね。母親が不思議な魔導書に吸い込まれた事は、祖父から聞いていました。僕も興味はありましたが、そんな奇怪な伝説に関わってはたまったものではないと、触れないようにしていました。しかし・・・今、こうして母が死んで、当事者がここにいる。・・・知りたいんです。母に・・・君に何があったのか」
「俺は・・・」
魏は、途切れ途切れに話した
白虎の巫女の伝説、鈴乃と婁宿の運命、朱雀の巫女と青龍の巫女の戦い、自分の転生・・・そして現在まで。
語るのには、実に一時間は要した
勿論、巧だって最初は信じられない顔つきをしていた
しかし、その表情は次第に現実味を帯び、最後には感嘆したように大きく頷いた
「よく・・・話してくれたね。魏君。君なら・・・信じられそうだよ」
「本当・・・ですか・・・?」
「しかし、約束してほしい。必ず・・・必ず、仲間を救ってほしい。日本を・・・救ってほしい。母親の命に懸けて、お願いだ」
「はい・・・約束します!!絶対に・・・奴らの思い通りにはさせない・・・」
巧は、もう一度頷くと、祭壇から何かを持ってきた
「私の・・・お守りの遺骨です。これを・・・召喚に使いなさい」
それは、小瓶に入った遺骨の欠片だった
「巧さん・・・!!!ありがとうございます・・・!!!」

これで、やっと・・・・・やっと救える。あいつらを。


「何・・・言うとんねん。お前・・・」
今、発せられた柳宿の言葉を翼宿は信じる事が出来なかった
「だから・・・父親になってあげたらって・・・言ったのよ」
「・・・阿呆抜かせ。そんなん簡単に出来る訳ないやろ」
翼宿は、廊下の手すりから見える景色に目を背ける
「・・・あんた・・・生きてんのよ?これからも・・・ずっとそういう人作らないで・・・おくつもり?」
「・・・・・・・・・」
「雪もあんたに懐いてるし、麗華さんだってきっと綺麗な人なんでしょう・・・?そろそろ、女嫌い卒業して・・・」
「柳宿!!!!」
その言葉に、柳宿は言葉を止める
「お前・・・本気で言うとるんか?」
唇が震える
「えぇ・・・・・・・・・」
バンッ
突然、柳宿のもたれていた壁に、翼宿は片手を突きつけた
「お前・・・これ以上、俺に辛い思いせぇ言うんか!?」
「・・・・・・」
「何か言えや!!柳宿!!」
「・・・・・・・・・・・無理でしょ!?」
その言葉に、翼宿はそっと片手を離す
「分かってる癖に・・・・・・・・・・あんた、今どこの誰と会話してると思ってるのよ・・・?」
「・・・・・・・・・・」
「あたしは・・・・・・・・もう、この世にいないの」
「・・・・・・・・・・」
「この体は、娘娘のもの」
「・・・・・・・・・・」
「玲春にも還らなければいけない。あたしは、また記憶をなくす」
「・・・・・・・・・・」
「そろそろ・・・現実見よう?」
自分たちの恋愛
遊びではない
そんなの・・・お互いが分かっていた筈なのに

バリバリ・・・ピシャアン
太極山にも、邪悪な気が渦巻いてきた
太一君は、一人必死に太極山を護っている
「太一君!!少し、休むね・・・娘娘も手伝う・・・」
「良い!!貴重なお前らを巻き込む訳には行かない・・・」
「けど・・・!!」
そんなやり取りを、宮殿の陰から見ていたのは・・・張宿
張学礼の記憶の片隅に潜みつつも、太極山と現実の世界を行ったりきたりしていた
「今・・・この世界で、大変な事が起こっている・・・僕も、早く・・・みんなと合流しなければ。けど、どうすれば・・・」
自分の転生している体は、まだ歩けない赤ん坊
どうにもこうにも、向こうに見つけてもらわなければどうしようもない
すると、自分の傍を二人の娘娘が通り過ぎた
「張宿・・・どこにいるね?」
「張宿、あっちこっちを彷徨っているね。とりあえず、魔神の手下に目をつけられないように逃げてくれればいいけど・・・」
「そうね・・・。それに、地上では・・・実の兄も記憶を呼び覚ましたって聞いたね」
兄・・・?兄って・・・?兄は、今でも健康に暮らしている筈?

「でも、太一君に聞いて驚いたね。まさか、軫宿が・・・生き別れの張宿の兄だったなんて・・・」

(え・・・・・・・)

運命に翻弄される七星士たち
タイムリミットは、既にそこまで・・・
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