ENDLESS STORY

翼宿より速いかもしれない足の持ち主
彼は気絶した永安を抱えて森の中を疾走していた
柳宿はその後を全速力で飛んで追いかけた
「待ちなさいって言ってんのが聞こえないの!!??」
側の大木を思い切り抜き取って黒い男にぶつけた
彼は大きくバランスを崩して振り返った
凝視された柳宿はたじろいたが、その目に負けないくらい彼を凝視した
「その子を離しなさい!!あんた達星宿様をどうする気!?」
「ほぉ・・・お前は仲間が取り逃がした柳宿じゃないか・・・」
相手の顔は布を深く被っていて見えない
「早く離さないと今度はもっとでっかい大岩ぶつけるわよ!!」
「やってみろ・・・やれるものならな・・・」
永安をその場に投げ捨てると彼は大きい遠吠えをした
(何・・・!?まさかこいつ・・・)
そう。彼は人間ではなかった
まさに、それは狼男


「柳宿の奴・・・遅いで・・・」
「何か・・・あったのかな・・・」
やっぱりさっきの声は届いていなかったのか
一行に不安の色が見え始めた
「俺探してくる!!」
「何言ってんのよ!!ここで離れたら敵の思うツボでしょ!!??」
「せやけど・・・」
分かってる
早く助けなきゃいけないのは
しかし今回狙われているのは七星士なのだ
その七星士と離れてはいけない
しかしだからどうすればいいのだ

自分には、本当に巫女の力はないのだろうか

翼宿の腕を掴んでいた手の力が抜けた

「・・・井宿・・・」

そう呟きながら
すると

「Da~~~~☆」

「は?」
ひょうきんな声に一行は振り返った
「おいらを呼んだのだ?」
そこには三頭身井宿が立っていた
「ち・・・ち・・・ち・・・」
「???」
「「井宿~~~~~!!」」
美朱と翼宿は二人で井宿に抱きついた
「だだだ~~~重いのだ~~~」
そんな光景を光は唖然として見ていた
「この人・・・僕と同じくらいの背だ・・・」


一方の柳宿は狼男に苦戦していた
相手の動きが素早すぎてちっとも応戦出来ない
その動きはまるで、あの青龍七星士の尾宿の様に・・・
自分の体を貫いたあの爪
柳宿はその爪の感触を思い出す度に身も凍える思いをしていた
すると柳宿はバランスを崩した
その隙に狼男が柳宿の頭上にかみつこうとした  
キィン
それを間一髪受け止めた腕輪
太極山の神力で辛うじて相手の固い牙を受け止められた
しかしそれが噛み砕かれるのもこれでは時間の問題
太極山の力も急激に弱まっていたのだ
「くっ・・・!!」
怪力を持ってでも受け止められない力
柳宿は全身汗びっしょりだった
狼男の顔が間近まで迫ってきて怖くなった
あの時の恐怖が・・・柳宿の瞳の端から滲んだ

その時だった

ザシュッ

狼男の背後から切り刻まれた音がした
途端に狼男は血を吐いて倒れた
ぼやけた視界
狼男の後ろにいたのは

端麗でしとやかで気品溢れた・・・

「星・・・宿・・・様・・・?」

そのまま柳宿は彼の腕の中に倒れた

「よかった・・・今度は護ってやれたな・・・柳宿・・・」
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