柚子ドロップス

「翼宿!翼宿!」
血まみれになった翼宿を必死に抱き上げる
「逃げろ・・・早くここから・・・」
「何言ってるのよ!?あんたを置いていける訳ないじゃない!!」
「はははっ!!泣かせる友情ごっこだなあ!玲春!お前は幸せだ!」
黒炎は、そんな光景を嘲笑う
「あんた・・・!何て事を・・・!!」
翼宿を抱く腕に力が込められる
それは、かつての柳宿が放つ闘志に感じられた
異変に気付く翼宿と黒炎
「やめろ・・・!柳宿・・・!」
「目覚めたか・・・柳宿」

ドクン

玲春の中で動き出したもうひとつの命

『翼宿をこんなにして・・・許さない!!』

グサッ

鈍い音
「ぐ・・・!?」
顔を歪めたのは、今度は黒炎だった
「これ以上・・・2人に手を出すな」
血まみれの刃を引き抜いたのは、芒辰
「くそっ・・・後一歩のところを・・・!」
周りの兵士達も、あらかた片付けられていた
「ずらかるぞ・・・!」
黒炎は、悔しそうに傷口を抑えながらその場を去った

「翼宿!翼宿!」
「酷い傷だ・・・すぐ救護室へ!」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・玲春」
「皇帝様。先ほどは、ありがとうございました」
翼宿の寝床につきっきりの玲春に、芒辰は声をかける
「あれほどまでに勢力が拡大していたとは・・・我々も迂闊だった。許して欲しい」
「いいえ・・・皇帝様のせいではありません」
「しかし、お前のせいでもない。自分を責めるなよ?玲春」
「ありがとうございます・・・」
「翼宿も、見た目ほど大した傷ではない。回復をしっかり待つのだよ」
「はい・・・」
パタン

翼宿・・・あたしのせいで、ごめんね

どうして、大好きな人と再会出来たのに大好きな人を巻き込んでしまうのだろう?
もう、この人の傍を片時も離れたくない。わたしがあなたを護ってあげたい
涙と共にこみ上げる思い

そんな玲春の気持ちに気付かず、連日の疲れからぐっすり眠っている翼宿

「翼宿・・・」

唇が静かに重なる

翼宿は起きていた
その唇の柔らかさを感じながら・・・
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