柚子ドロップス

「すまなかったね。わたしらのせいで、旅の足止めをさせてしまって・・・」
「いいえ。本当に無事でよかったです」
今度こそ、旅のお見送り
「母さん。父さん。何かあったら、すぐにわたしを呼んでね。どこからでも駆けつけるから」
「ありがとう。玲春。翼宿さんも・・・気をつけてください」
今度はとても穏やかな笑顔で、母親は翼宿を見送る

「まずは紅南。芒辰皇帝がおるから、事情を話して分かって貰うで」
「うん・・・でも、大丈夫かな?わたしのせいで、関係のない人たちが襲われたりしないかな?」
「大丈夫。遅かれ早かれあいつらは紅南も侵略しようとしてるしな。だけど、今の狙いはまずはお前や。俺の目的は、国にちりばめられた銀貨を手に入れること。早めに紅南に行って移動すれば、あいつらの目を国の外に向けることが出来る・・・」
「そっか・・・」
「まあ、そんな暗い顔すんなや!俺が護ってやるさかい!!」
明るく笑う翼宿だったが、玲春はなぜか不安な気持ちを抑えられないでいた

「やあ・・・翼宿!10年ぶりだな!」
「芒辰皇帝も、ご無沙汰してます!」
すっかり少年の面影となった芒辰皇帝が、2人を出迎える
「おや・・・その子は?」
「あ・・・こいつは、玲春。朱雀七星柳宿の生まれ変わりの女です」
「そなたが・・・何とも美しい女性になったのだな」
「初めまして・・・芒辰皇帝。胡で呉服屋を経営しております・・・」
「だけど、なぜそなたまでこの国に?」
「それが・・・今、西廊が紅南を侵略しようとしているのはご存知ですか?」
「ああ・・・先日も、国の端で戦が起きたようだ。何人かの市民が犠牲になった・・・」
「玲春は、西廊から生贄として命を狙われているんです。しかも、こいつの正体もばれてしまって」
「何という事だ・・・」
「俺の山も最近稼ぎがようなくて宮殿に銀貨を頂きに来る途中で、こいつが攫われそうになっているところを助けて・・・」
「なるほど。翼宿。それでは一刻も早く玲春をこの国から遠ざけなければ・・・」
「そのつもりです・・・」
「お前も大変だろうがな。彼女をしっかり護ってやってくれ。今、銀貨を持ってくる・・・」

「皇帝!大変です!西廊の軍が・・・」

「何だと・・・!?」

翼宿と芒辰が外へ出ると、そこには何百もの軍が門前に構えていた
「翼宿!大人しく玲春を渡すのだ!」
「貴様の動きは、全て把握している!」
「もうお見通しだったって訳かいな・・・」
「翼宿・・・お前も加勢しろ」
芒辰が、祭壇の剣を腰に構える
背後には、既に紅南の軍も控えている
「翼宿?芒辰皇帝?何を・・・」
「玲春。お前は、宮殿から一歩も出るんやないで」
国をあげて、姫を守り抜く
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