柚子ドロップス

1年後・・・
「いらっしゃいませー!!今日は、新作の服が大量入荷だよー!」
店先で威勢のいい声で、客引きをする一人の少女・玲春
彼女は、相変わらず都中の愛されキャラとなっていた
「よう!玲春!今日もべっぴんだね!今度、俺と食事でもどうだ?」
「こないだも断ったでしょー?しつこい男は、嫌われるわよ!」
誰とも交際することなく、ただただ家業を黙々と手伝っていた
「どうもー!お世話になってますー!」
玲春に負けない威勢のいい声が店中に響く
「ん?あんた、誰?」
都の者とは似つかない薄汚れた服を着た青年だった
「今日から、礪閣への届けものを引き取りにきた太蓮や!」
「・・・は?礪閣・・・」
「ああ~玲春に言ってなかったね!今月から、礪閣に取引先として指名してもらったんだよ!」
「母さん・・・そういう事は、先に言ってよ・・・」
礪閣。もう二度と思い出したくない場所
玲春の中では既にあの時の記憶はなきものになっていた
「今月から、うちも裕福な取引先との商談がいっぱいあるよって。少しでも綺麗な身なりにせんとな!」
「何だか偉そうね~・・・礪閣はどいつもこいつもそんなんなのかしら?」
自分よりも年下であろう少年をいじる
「何やて?こんなんが店番で商売繁盛するんかいな?」
「きーーー!!あんたなんかに売る服なんてないわよ!!」
懐かしい雰囲気

あの頭は・・・今頃どうしているんだろう?
また、会えるんだろうか?

心のどこかでは、まだきっと愛してる
柚子のように甘酸っぱいあの頃の記憶が、今も玲春を動かし続けている
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