柚子ドロップス

「幻狼さま!我ら救いの神!」
「礪閣への恩恵ありがとうございます!」
「いやいや・・・そんな大層なことは・・・」
礪閣は、あれからみるみる復興していった
山賊も、市街の人々や皇帝と有効な関係を築いているようだ
「これが理想の礪閣やんな」
「ああ・・・ホンマよかったわ」
功児も、安心しきった表情を見せる
「せや・・・お前に仕事が出来たんや。幻狼」
「何やねん?改まって」
「その・・・非常に頼みにくい用事なんやけどな」
「今更、頼みにくいも何もあらへんがな」

「何よ?話って」
今日も、礪閣の泉に玲春と幻狼はデートに来ていた
「まあ・・・何というか、ちょっと辞令が出てな」
「辞令?また幻狼に?」
「中々出稼ぎに出て行ける奴が少なくなってきてるからな」
「それで・・・?」

「一年くらい地方へ出張に行くように命じられたんや」

「え~・・・」
「外泊も多くなるでな。紅南にはしばらく帰ってこられん」
「そんな・・・」
幻狼は、玲春の肩に手を置いた
「すまんな・・・またお前に辛い思いを・・・」
「いいわよ。待てる!今だって、そんなに会えてる方でもないもの」
「や・・・だからな・・・」
「何よ?」

「お前のために・・・俺ら別れた方がいいと思うんや」

「また、それか・・・」
「俺みたいなおっさんじゃなくても、お前にはいい男がぎょうさんおるて」
「あのね!だから、それは・・・」
「嬉しいで。俺をずっと想い続けてきてくれたんは。それを誇りにして俺は行きたいんや」
「幻狼・・・」
唇が震える

「・・・・・・・・応援してるからね」

「ああ」
2人は、涙のキスをした
いつまでも、幻狼は輝いていてほしい
その為には、2人は別れなければならなかったのだ
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