柚子ドロップス
前を向かなければならないのに
前を向けない自分がいる
わたしは、玲春。普通の女の子。
なのに、なぜだろう?
もう、二度と出会う事のなかった「あの人」の存在が
わたしをもう一度引き止める・・・
「玲春!ちょっと、来ておくれ!」
「はーい!おばさま!」
隣家の叔母に呼ばれた少女が、家から飛び出してくる
彼女の名は、玲春・17歳
男子の出生率が高い村に生まれた珍しい女子で、華のように美しく気高い存在と呼ばれ、村中に可愛がられてきた
「この箪笥を持ってくれないかい?あたしには、とても無理で・・・」
「はいはい!こんなのお茶の子さいさい♪・・・あれ?」
「どうしたんだい?玲春」
「・・・・・・・・・・・・・・・・今日も、調子が悪いみたい」
「そうか。気に病む事はないんだよ。女の子に任せるもんじゃあないからね」
その昔、朱雀七星・柳宿の生まれ変わりと名を馳せた事でも有名な玲春
柳宿から引き継いだ能力は、並外れた怪力
しかし、数年前の闘いで柳宿の魂は玲春からすっかり抜け落ちてしまった
以来、玲春は他の女子よりは少し腕力はあるものの並外れた力は見せなくなってしまった
「永安も引っ越しちゃったし、毎日つまらないわ」
永安とは、玲春が昔思いを寄せていた男子
朱雀七星・星宿の生まれ変わりである
星宿の魂が抜け落ちた途端、彼も隣町へ引っ越してしまった
「ほらほら!玲春!店、手伝っておくれ」
母親に呼び止められて、我に帰る
「はいはい!任せて~」
屈託のない明るさが、玲春の取り柄だった
「よう。玲春!今日も、べっぴんだな!」
「どうだ?うちの愁と、今度見合いでも!」
「なあに言ってるのよ、おじさん!あたし、まだ華の17歳よ?」
玲春の接客は、村人を元気にする
「きゃああああああああああああ!!」
すると、女の悲鳴
声のする方を見るやいなや、玲春の体はふわりと宙に浮いた
「え・・・?」
「捕まえたよ、お嬢さん」
自分を抱きかかえていたのは、西廊の使徒だった
「ちょっと!西廊の使いが、あたしの娘に何の用だい!?」
「ちょっくら偵察がてら、皇帝に手土産をと思ってね。この村で、1番の美女を連れて帰る事に決めたんだよ!」
「その評価は非常に嬉しいけれど、ちょっと離しなさいよ!」
「玲春を離せ!この村の姫だぞ!」
使徒の1人に、村人が切りかかる
「邪魔だ」
「わああああああああ!!」
村人は、一気に吹っ飛ぶ
「では、貰っていくよ。お姫様」
2人がその場を離れようとした時、1人がある男性にぶつかった
「・・・・・・・・・・・・・?何だ?そこをどけ・・・」
「そこをどけ」
低く掠れた声が、その場に響く
「貴様。誰に向かって口を聞いているんだ?貴様も、あいつらと同じ目に・・・ぎゃあ!!」
その使徒の片手は、いとも簡単にその男の手によって捻り潰される
「どけ言うとるんが、分からんのか?」
鋭い三白眼。橙色の頭。
「あ・・・・・・・・」
次の瞬間、全身血まみれになって逃げ去る使徒の姿があった
「強い・・・」
「あなた様は・・・」
村人も、一斉に目を見張る
玲春は、筋肉質のその腕に抱かれていた
「お姫さん。相変わらず愛想振りまくんもいいけど、もう少し周りの目に気をつけろや」
「・・・・・・・・・・・・・翼宿」
かつて、冒険を共にした仲間・翼宿
玲春も、はっきりと覚えていた
それは、記憶を巻き戻す再会
西廊国宮殿・すぐに、使徒の敗北は皇帝・雄孫の耳にも入っていた
「そうか・・・紫魂村へのご挨拶は失敗に終わったか」
しかし、彼の表情には余裕が満ちていた
「紅南国の侵略そう簡単にはいかなそうだが、簡単に手に入れられないからこそ面白いものだ」
西廊国の紅南国侵略計画
再び、国の命運は2人の運命は回りだしていた
前を向けない自分がいる
わたしは、玲春。普通の女の子。
なのに、なぜだろう?
もう、二度と出会う事のなかった「あの人」の存在が
わたしをもう一度引き止める・・・
「玲春!ちょっと、来ておくれ!」
「はーい!おばさま!」
隣家の叔母に呼ばれた少女が、家から飛び出してくる
彼女の名は、玲春・17歳
男子の出生率が高い村に生まれた珍しい女子で、華のように美しく気高い存在と呼ばれ、村中に可愛がられてきた
「この箪笥を持ってくれないかい?あたしには、とても無理で・・・」
「はいはい!こんなのお茶の子さいさい♪・・・あれ?」
「どうしたんだい?玲春」
「・・・・・・・・・・・・・・・・今日も、調子が悪いみたい」
「そうか。気に病む事はないんだよ。女の子に任せるもんじゃあないからね」
その昔、朱雀七星・柳宿の生まれ変わりと名を馳せた事でも有名な玲春
柳宿から引き継いだ能力は、並外れた怪力
しかし、数年前の闘いで柳宿の魂は玲春からすっかり抜け落ちてしまった
以来、玲春は他の女子よりは少し腕力はあるものの並外れた力は見せなくなってしまった
「永安も引っ越しちゃったし、毎日つまらないわ」
永安とは、玲春が昔思いを寄せていた男子
朱雀七星・星宿の生まれ変わりである
星宿の魂が抜け落ちた途端、彼も隣町へ引っ越してしまった
「ほらほら!玲春!店、手伝っておくれ」
母親に呼び止められて、我に帰る
「はいはい!任せて~」
屈託のない明るさが、玲春の取り柄だった
「よう。玲春!今日も、べっぴんだな!」
「どうだ?うちの愁と、今度見合いでも!」
「なあに言ってるのよ、おじさん!あたし、まだ華の17歳よ?」
玲春の接客は、村人を元気にする
「きゃああああああああああああ!!」
すると、女の悲鳴
声のする方を見るやいなや、玲春の体はふわりと宙に浮いた
「え・・・?」
「捕まえたよ、お嬢さん」
自分を抱きかかえていたのは、西廊の使徒だった
「ちょっと!西廊の使いが、あたしの娘に何の用だい!?」
「ちょっくら偵察がてら、皇帝に手土産をと思ってね。この村で、1番の美女を連れて帰る事に決めたんだよ!」
「その評価は非常に嬉しいけれど、ちょっと離しなさいよ!」
「玲春を離せ!この村の姫だぞ!」
使徒の1人に、村人が切りかかる
「邪魔だ」
「わああああああああ!!」
村人は、一気に吹っ飛ぶ
「では、貰っていくよ。お姫様」
2人がその場を離れようとした時、1人がある男性にぶつかった
「・・・・・・・・・・・・・?何だ?そこをどけ・・・」
「そこをどけ」
低く掠れた声が、その場に響く
「貴様。誰に向かって口を聞いているんだ?貴様も、あいつらと同じ目に・・・ぎゃあ!!」
その使徒の片手は、いとも簡単にその男の手によって捻り潰される
「どけ言うとるんが、分からんのか?」
鋭い三白眼。橙色の頭。
「あ・・・・・・・・」
次の瞬間、全身血まみれになって逃げ去る使徒の姿があった
「強い・・・」
「あなた様は・・・」
村人も、一斉に目を見張る
玲春は、筋肉質のその腕に抱かれていた
「お姫さん。相変わらず愛想振りまくんもいいけど、もう少し周りの目に気をつけろや」
「・・・・・・・・・・・・・翼宿」
かつて、冒険を共にした仲間・翼宿
玲春も、はっきりと覚えていた
それは、記憶を巻き戻す再会
西廊国宮殿・すぐに、使徒の敗北は皇帝・雄孫の耳にも入っていた
「そうか・・・紫魂村へのご挨拶は失敗に終わったか」
しかし、彼の表情には余裕が満ちていた
「紅南国の侵略そう簡単にはいかなそうだが、簡単に手に入れられないからこそ面白いものだ」
西廊国の紅南国侵略計画
再び、国の命運は2人の運命は回りだしていた
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