春の予感



「この桜の花がさ、君の頭に…、いや、髪の毛に、絡んでいて、どうしても取ってあげたかったんだよ。君に伝えようかと思ったんだけど、方法がわからなくてさ、手荒な真似して悪かったね。」

申し訳なさそうにしている男子を見ると、俺もなんだか申し訳なくなってきた。


「えっ!?そうだったのか、俺全然気づかなかったよ。花、取ってくれて、…ありがとな。」

男子からさくらの花を受け取る。

ほんとは殴られるんじゃないかとおもったんだけど、そーじゃなくて、良かったーーー!

俺がそう心底思っていると

「それじゃあ、それだけだから、バイバイ。」

男子は、手のひらをヒラヒラさせて、そう言って、校舎に戻って行く。

「えっ!?あの、あんたの名前!俺、知らないから教えろよ!」

「!」

男子は、立ち止まり、振り返った。

「名乗るほどの事じゃないし。…そんなに知りたい?僕の名前?」

男子は少し照れくさそうな素振りで言った。

「えっ、あ、ん、うん。」

なんだか、俺までつられて照れくさくなる。

「僕は、蒼空、佐上蒼空。」

「そら?さがみ…そら。」

男子の名前を忘れないように反芻する。

「君は?」

「あ、俺?俺は…。」

「知ってる。」

「えっ!?」

俺は、訳が分からず、混乱した。

「凪でしょ。鷹羽凪。」

男子こと、佐上は俺に片目だけを閉じて見せた。

「ええーーーっっ!?」

(なんで知っているんだーーー!?

怖いから教えろよーーー!)

佐上は、俺のこころを察してか。

「君は何かと有名人だよ。この学校で。」

佐上は微笑みながら言った。

「ええーっっ!余計に分からんっっ!」

「これから宜しく凪くん。」

二人を春の穏やかな、風が吹き包む。

春うららかなな日和のさなか、俺にも人生の春が訪れそうな予感がした。




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