悠の詩〈第1章〉

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 5月の連休が終わると、新たに席替えがあって居心地のよかった窓際から離れた。

 丸山由野柏木とは見事に別れて、代わりに樹深と前後の席になった。

「よろしくね、柳内くん(笑)」

 相変わらず器用に呼び分ける(笑)



 そこからまた数日経った頃、家庭訪問ウィークに入った。

 5日ある内の、俺は最終日の最後から2番目。

「春海! あんた部屋きったないんだから、大掃除並みに片付けなさいよ? かあさんはもう手伝わないんだからね!」

 3日前くらいからかあちゃんにそう言われ続けて、部活でクタクタの帰宅後せっせと片付けて、当日にはなんとか間に合った。

「春海~、先生まだかしらね~」

「まだ時間になってねえよ、かあちゃん」

 30分も前から、ウロウロソワソワのかあちゃん。そういう俺も、二階の自分の部屋の窓からチラチラ外をうかがってしまう。

 土浦先生、「次のお宅までの道案内をしてもらうからな!」なんてルールを突然作って。

 初日、樹深と由野と丸山がその順番で家庭訪問だった。

 樹深は同じ学校だったから由野ん家は分かってたけど、由野は丸山ん家を知らなくて。

 当日授業が終わってから帰るまでの短い間の、丸山と由野のやりとりが面白かった。

 由野が至近距離で丸山に家の行き方を聞きながらメモしていて、丸山は耳まで真っ赤にしながら説明していた。

「…から、こう曲がって…え? 今戻るって言った? どーゆーことよー?」

「だからね、そのほっそい道に入ったら、ちょっとUターン気味になるんだよぅ…」

 丸山ん家までの道のりは複雑っぽい。次の日聞いたら、ちゃんと辿り着けたらしいけど。





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