悠の詩〈第3章〉

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 文化祭が終わってからしばらくの間、俺達3人はちょっと有名人だった。

「あっねえ、あの人、文化祭の…」
「上手だったよね」
「スラッとしてかっこいい」
「思ったよりも低いんだなぁ」
「あっこっち見たっ」

 すれ違う度に飛んでくるヒソヒソ声、誰が誰の事を言ってるのか丸分かり。

 男の俺と樹深の事は通り過ぎて、黄色い声が辿り着くのは柏木のところ。

 いつもなら無愛想な表情で無視を決め込みそうなのに、この時はさすがに無下には出来なかったようで、曖昧に困ったような顔をして軽く会釈をする。それがまた、「照れてる、可愛い」とにわかファンを煽る。

「まったくもう、キャーキャー騒ぎ過ぎなのよっ」

 と毒づいたのは由野。柏木とふたりで歩いている時にそれに出くわす度、「悠サンこっち」と柏木の袖を引っ張ってその場を去る由野を、何度も目撃した。

(なんなのあの子。いっつもひっついて)

 そんな陰口を耳にしたりもしたが、何日もしない内に聞こえなくなった。

 期末テストが間近で、噂話をしている場合では無くなったんだろう。

 テストを終える頃には、もう誰も、用も無しに俺達を振り返らなくなった。





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