レンズの向こう側

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 (★)

 最後に男に触れられたのはいつだったっけ?



 大学を卒業した後に行った研究室の仲間達との飲み会で、わりと気の合った同級生から「ずっと好きだったんだ」と告白された。

 酒の席でのそれだったから本気にしてなくて、「はいはい、ありがとね」と軽くあしらったあたし。

 すると彼は「最後に思い出が欲しい」と言って、隣の空いてた座敷の部屋へ連れ込んで、酒くさい唇をあたしに寄せてきた。

 あたしは咄嗟によけて、でもあたしも相当酔いが回っていて、彼が体ごと覆い被さるのを防げなかった。

 あたしを下敷きにした彼は、服の下に手を入れて荒々しくあたしの胸を揉み回した。

 気持ち悪さと怒りが沸いて、股間に蹴りを入れようとしたけど、彼は更に強い酔いがまわったらしく、あたしの胸を掴んだままぐうぐうと寝息を立てた。

 なんなんだもう、と思いながらどうにか下敷きから脱出して、

 「○○くん酔い潰れちゃったから、隣で寝かせてるよー」と素知らぬフリをして、早々に帰宅した。

 情けないけど、これが最後の性的出来事。

 あとはノブキのやけっぱちの時期のアレと…高校時代のあまりいい思い出のない初エッチと…それくらいしか経験のないあたし。



 だから、今ノブキがあたしを想ってあたしを求めて、あたしもノブキを想ってノブキを求めてる、この幸せな状況はあたしにとって人生初で…

 好きの気持ちが止まらないのがこんなに恐いなんて、初めて知った。

「…ノ、ブ…
 うう…こわい…」

 頭の中で唱えたつもりだったのに、声が出てしまっていた。

 ノブキが動きを止めた。

「せー、か…
 やっぱり…コワイ?
 おれのこと、コワイ…?」

 あたしはハッとした。

 ノブキがあたしから離れようとしてる。

 ちがう、そうじゃない。

 あたしはノブキの胸にしがみついて、擦り付けるように首を横に振った。

「せーか…ホント…?」

 遠慮がちに腕を回すノブキに、あたしは言った。





「ノブ…コワクナイ、から…



 …ヤメナイデ…」





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