悠の詩〈第2章〉

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 翌日の終業式には出た、ほんのちょっとだけ。昨日しっかりとテーピングして貰ったし、痛み止めの飲み薬も処方して貰ってたから。

 でも先生方の配慮で椅子を用意して貰えて、体育館の後ろで皆の立ち姿を眺めながら、校長先生の話を聞いた。

 この日も病院に来るように言われていて、まだ学校が終わらない時間帯の予約。

 コタ先生に断って早退させて貰う。職員室で成績表を受け取って、そんなに悪くはない評価を「よく頑張ったな、病院気を付けて行けな」とコタ先生は労ってくれた。



 校門へ出るまでの途中、野球部の部室が目に入った。

 式の最中に部員の何人かの背中を見つけて、誰も一切俺を振り返らなかった。

 昨日、皆はどう帰ったのかな。

 落ち込みながら? 泣きながら? シーンと黙ったまま?

 そんな想像と、その場に居れなかった罪悪感と、皆の顔をまともに見れやしない、とにかく色々混ざり合って…

 どうしようもない気持ちに駆られて、早足で校門を跨いだ。





 そして夏休みに入った。

 極力安静、痛み止めの薬もどうしてもの時以外は服用しないように、と言われその通りにしてきた。

 俺実は両利きで、ごはんを食べるのも、鉛筆持って宿題するのも、左手で事足りて全然不便じゃなかった。

 とはいえ、思いきり体を動かせないのは…やっぱりストレスが溜まった。



 一週間ぐらいして痛みが粗方和らいだ頃、「リハビリを始めましょう」と担当医師からのお達し。

 やっと安静を解かれた喜びより、完全復帰になるまで少なくともひと月以上は覚悟してと言われた事のショックの方がでかかった。

 更にそのリハビリのメニューが思いの外キツくて…

 俺、頑張れるのかな。

 らしくないと言われそうだけど、かなり気弱になっていた…



 そんな思いを抱えたまま、また数日過ぎて…



 ある日、道でコタ先生にばったり逢った。





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