ふとした風に吹かれる
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この子きっと、イサミの事好きだったな。
そう思うと、ヤキモチより先に、微笑ましい気持ちが競り上がった。
多分これは、イサミが学生時代に恋に落ちた事がないのを知っているから。
もしも、もしも彼がイサミの初恋の人、だったりなんかしたら…そんな風には思えなかっただろう。
俺はべーやん君と目を合わせてふっと微笑んだ。
するとべーやん君はビックリした顔をして、恥ずかしそうに首を竦めて…こんな事を言った。
「あの…イッサ、って小山のあだ名ですか?
ふふ…っ、なるほど、イサミのイッサ…
それは思いつかなかったなぁ…くくくっ」
「あーっちょっと! べーやん、タツミくんに変なコト言わないでよ!?」
べーやん君の思い出し笑いに、イサミが慌てて止めに入った。
イサミの中学時代。俺の知らないイサミ。興味ある。
「えーナニナニ? 是非とも聞きたいね(笑)」
「もーっタツミくんまで? ダメダメ、絶対からかうんだから!」
イサミの抗議の声は聞こえないフリして、べーやん君の話に耳を傾ける。
…