悠の詩〈第2章〉
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練習出来た時間はたった15分程度、それなのに、昼休み終了のチャイムが鳴る頃には、俺と樹深は汗びっしょりだった。
慣れない楽器相手によく頑張ったんじゃねぇかな。ぎこちなさはだいぶあるけど、俺も樹深も最初の4小節だけは演れるようになった。
そこだけ3人で合わせられるんじゃないの、と少々興奮気味でいると、
「さ、続きは放課後な。早く教室戻れ」
コタ先生がバッサリ打ち切って、俺達3人の背中をまとめて押して準備室から追い出した。
「あーあ、もっとやりたかったなぁ」
ドラムの感触がジンジンと残る両手の平を見つめてしまう。
「本当に。いっぱいやったらさ、絶対上手くなるよ」
樹深も弦を押さえる仕草をして、ワクワクが止まらないようだ。
「ふ…単純だねキミら。ま、早いとこ形になって貰わないと困るからがんばって。
あと2週間もないって事、よーく頭に入れておきなよ」
ニヒルな笑いを残して、柏木は先に教室へ戻っていった。
初心者の俺達をもっと煙たがるかと思ったけど、予想外に穏やかなアイツになんか調子狂う。
「柏木さんのレベルに追いつけるのかな…俺達?」
柏木の背中を見送ってから、俺を横目で見て樹深が言う。その言葉はちょっと不安そうだった。
「やるしかねーじゃん…てか、やるって言ったのお前だし、なんとかなるって思ったの俺だし、実際やりがいあるし、なんだかんだ上手くなりてぇし」
思いつく限りを並べ立てると、樹深は吹き出して肩を揺らした。
「春海ちゃん…いいね、春海ちゃんのそーいうトコ。俺はスキ」
「わぁお、なんも出ねーぞ?(笑)」
「(笑)(笑)」
そんな漫才めいた事をしてたら5時間目開始のチャイムが鳴って、俺達は慌てて教室へ駆けていった。
そして放課後、クラスでの準備を半分手伝って、バンドの練習へ向かおうとした。
さて、皆に何て言って抜けよう? 樹深も柏木も、もう部活での準備は終わっているから、クラスを抜ける理由を無くしてしまっている。
うまい言い訳を考えていると、由野が意外な事を言ってきた。
「あっ春海くん、悠サンも後藤くんも。
生徒会の方にも行かないとなんでしょ? 土浦先生と高浪くんから聞いたよ。
クラスの方は大丈夫だから、安心してそっち行ってね。がんばってねー」
俺達はびっくりして互いに顔を見合わせて、どうなってんだ?? と全員疑問を持ったはずだが、もう変な小細工をしなくていいんだと思ったら妙にスッキリして、
「「ありがと!」」
意図せずハモったのが面白過ぎた(笑)
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