悠の詩〈第2章〉

61/80ページ

前へ 次へ


「また高浪か~? お前もたいがい熱心だなぁ。
 …って、あれ、お前たちか? ナニやってんだ」

 コタ先生がドアノブを握ったまま俺達を見下ろして言った。

「え、あ、いや、だって、ギターがめちゃくちゃなのに、翼に合ってて、どうなってんの」

「何を言ってるかさっぱり分からん(笑) お前がどうなってるんだ(笑)(笑)」

 俺のテンパリとコタ先生の受け答えに樹深が吹き出して、一緒になってゲラゲラと俺を笑う。

 それを、準備室の奥で柏木がギターを抱えながら迷惑そうに見ていた。

 あの演奏、アイツだったの? いっちょまえに脚なんか組んで、俺にはでかそうに思えるギターは、柏木が携えるとちょうどいい感じに収まっていた。

 柏木は大きく溜め息をついて、ガタガタとそのギターを片付けようとした。

「あっまて柏木、ギャラリーがいた方がよりいい練習になるんじゃないか?」

「でも先生」

「ほらお前たち早く奥入って、ドア閉めるぞ。一応内密な事なんでな」

「先生!」

 柏木の悲鳴はお構い無し、コタ先生は俺達の背中を押しながら、後ろ手にドアを閉めて鍵を掛ける。ガチャリという音と同時に「あーっもう」と柏木が短く吐き捨てた。

 様々な楽器が犇めくこの準備室は、4人もいるともう狭くてしょうがなかった。

「音楽室を使えればよかったんだがなぁ、音楽の長谷川先生の許可が降りなかった(苦笑)
 なぁ柏木、そんな膨れっ面するなよ。いいだろ柳内と後藤なら、気心知れてるだろ?
 ほれもうあんまり時間ないぞ、もったいないからどんどん弾け」

 そう言いながら、コタ先生は僅かにあるスペースにパイプ椅子を広げて出してくれた。

 柏木はその言葉を受けると、観念したように無言で眉を潜めながら、またポロポロと弦をつま弾きだした。





61/80ページ
スキ