悠の詩〈第2章〉

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「あっ柳内くん」

 俺が横断歩道を渡りながら声を掛ける前に、丸山が先に気付いて手を上げた。

 背を向けていた由野もこちらを振り返って、小さく手を振った。

 「久しぶり」と口が動いたのに、全然声が聞こえなかった。信号機のメロディに掻き消されたんだろう、そう思った。

「おーっす。丸山は特に久しぶりだなぁ」

「ほんとうに。終業式以来だよね。後藤くんは? 一緒じゃないの」

「おー。樹深、家の人が帰ってくるまで出てこれないんだよ。でももうすぐ来るんじゃねーかな」

 言いながら、何で柏木の名前が出てこないんだろうと思った。

 でもそれもそのはず、一緒にいたと思ったけど柏木はまだ横断歩道の向こうにいた。

 さらに言えば電柱の陰になるように立っていて、よっぽど今まで俺といたと思われたくないんだな(苦笑)

「由野、こないだは電話ありがとなぁ」

 「どういたしまして」と口を動かしたのに、また聞こえなかった由野の声。

 こんな近くでさすがにおかしいと思っていると、んんっと由野は咳払いをして、

「ごめん、なんか喉やられちゃったみたいで。聞こえづらかったらごめんね」

 掠れ声に苦笑いをしながらそう言った。

 どおりで、いつもなら通る声で元気いっぱいだもんな。





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