レンズの向こう側

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「う、わ、ノブキ、ごめんっ…
 今どく…」

 ノブキの腰から両腕を解いて離れようとしたら、ノブキが空いてる手であたしの腰を強く引き寄せた。

 えっ…

 あたしの頭と腰をがっちりホールドされて、身動きが出来ない。

 突然の強引さに戸惑いが隠せない、ノブキをそっと見上げる。

 ノブキも同時にあたしを見てた。

 とても不安そう、どうしてそんなカオをするの?

「…ノブキ…?」

 声と共に白い息が、あたしの口から上へのぼって、ノブキの眼鏡のレンズを曇らせた。

 曇りが取れてしばらくしてから、ノブキがようやく口を開いた。

「せーちゃん。

 ゴメン。

 星、見れそうにない」

 えっ。それは、どういうこと?

 あたしが抗議の言葉を出す前に、ノブキは言った。



「俺、せーちゃんが好きなの。

 わかる?

 自分でもどうしようもない。

 わかる?





 …大事にしたいのに」



 最後に声を潰しながら言ったノブキに、あたしは完全に持ってかれた。

 若干放心しかけたあたしの唇を、ノブキが下から掬うように塞いだ。

 角度を変えて何度も何度も、ノブキが唇の柔らかさを主張する。

 あたしはノブキに全身を固められて、自由を奪われながらのキスに翻弄される。

 どうしよう、めちゃくちゃドキドキする…っ

 昂る気持ちの中に、ちょっと恐れみたいなものを感じて、少しだけ涙がにじんでしまった。

 ノブキはキスを止めないままそれを、すごく切なそうに見つめて…

 そして、あたしの口内に、熱い吐息と共にソレを注いできたんだ。





「…こわがらないでよ…



 …せーか…」





 ノブキ…ズルい…





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