シークレットガイド

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 #トンネル



 サイクリングロードは、幾つかの大きな道路を横断するように繋がっている。

 なので、一定の間隔でトンネルに潜って、その道路の下を通って、坂道を上がって地上に出る。

 1個目はラクラク、2個目はちょっと余裕、3個目はハァハァ、4個目以降はゼイゼイ…

 なかなか、心臓破りのアップダウン。

「ねえぇ~、少し、お茶を飲ませてえぇ」

 今ちゃんが死にそうな声で呼び止める。

「はあぁ? まだ半分の半分も来てねーぞ」

「まぁまぁ…ちょっと日差しが強いからね。水分補給はしとこうよ。
 今ちゃん? 次のトンネルん中で休憩ね」

 灯琉が先に行きたがるのをなだめて、僕達はひんやりと仄暗いトンネルに身を潜めた。

 自転車に跨がりながら、背中のランドセルから水筒を取り出して、ゴクゴクと喉を潤す。

「芦屋クン、大丈夫? キツくない?」

「…っうん、大丈夫…ちょっと疲れるけど…楽しいよ。
 うわぁ…風の通り道だね。涼しい」

 そう言った芦屋クンの顔は、疲れを掻き消すほどにキラキラと輝いていた。

「なぁ…ここ通る度気になってんだけど」

 灯琉の声がトンネルに反響してぐわんと伝う。

「【○○君メイ】ってなんだ??」

 灯琉が言ってるのは、トンネルに黒いスプレーで書かれている【○○君命!】というらくがき。僕にもよく分からない。

「あーっそれね。メイじゃなくてイノチ。○○君って○○○○ってアイドルの事さ。ねーちゃんが言ってた」

「僕のお姉ちゃんもねぇ、言ってたよぉ。命付けると好き過ぎるってコトなんだってぇ」

 中学生のお姉さんがいるえだっちと今ちゃんが説明してくれた。

 あーなるほどねー、と僕と灯琉と芦屋クンはそのらくがきを見ながら頷いた。

「まぎらわしー。俺、呪いの言葉かなんかかと思って、びびっちまったじゃんか」

 ガキ大将らしからぬ灯琉の言葉に、僕達の大爆笑がトンネルの中でこだました。





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