悠の詩〈第2章〉

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 遅い朝食をさっさと済ませて、俺は樹深に電話を掛けた。うちのかあちゃんと出掛けたなら、樹深も家にひとりのはず。あ、梓ねえちゃんもいるかな。

『もしもし後藤です。あー春海ちゃん? おはよ。どうしたの?』

 初っぱなから樹深だったので、あからさまにガッカリした。梓ねえちゃんの声聞きたかったぜ。

 そんな空気を読み取った樹深ってエスパー?

『悪かったね、姉ちゃんじゃなくて。ほんと今さっき出ていったばかりだよ。もうあと数秒、春海ちゃんが早く掛けてればねぇ?』

 クスクス笑う樹深の後ろから、相槌のようにイッサがワンと鳴いたから、樹深が更に声をあげて笑って、俺は芸人みたいにずっこけた。

 樹深と一緒にお昼を食べようと思って電話をしたけど、イッサのお世話を梓ねえちゃんと交代するまで家を出れない(皆との待ち合わせには間に合う)と言われた。昼ごはんはお母さんが出る前に作っておいてくれたって。

 じゃあまた後でな、と電話を終わらせて、俺は身仕度を済ませて家を出た。



 何も考えず外へ繰り出すのは本当に久しぶり、宿題もリハビリも全て終わって開放感しかない。

 待ち合わせにはもちろん、お昼を食べるのにもまだ若干早かったので、駅の周辺をプラプラした。

 行きつけの古本屋やゲームショップで、かあちゃんに貰った軍資金を遣ってしまいたい衝動に駆られたり(笑)… ペットショップでゲージ内の仔犬を見たり… 昔のイッサそっくりなのがいて、懐かしさを樹深と共有できないのが悔やまれた。





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