悠の詩〈第1章〉

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 教室に戻って席に着くと、親達が後ろの扉から続々と入ってきて、俺のかあちゃんも、樹深のお母さんと一緒に入ってきた。

 すぐ後ろだとなんかヤダな、という思いが通じたのか、かあちゃん達は自分の息子達からいい感じの距離を取った。つまり後ろのど真ん中、それはそれで目立つ気が(笑)

 そして最後に、前の扉から土浦先生が入ってきて、改めて俺達と親達に挨拶をした。

 ハキハキと喋る、人懐っこそうな先生。

「困った事があったら、何でも言って下さい! いつでもどこでも駆けつけます!」

 という言葉に、素直にそうしようと思える人柄だった。

 今日配られた学校だよりや教科書などの説明を受けて、最後に先生から、出席を取りながら一つずつネームプレートを配られた。

「柳内春海」

 最後に俺が呼ばれて、先生が横からネームプレートを差し出した。

「はいっ」

 俺は元気よく返事をして、ネームプレートを摘まんだ。

「家に付けて帰るのは今日だけ。明日からは学校で預かるからな」

 先生が言うのを聞きながら、生徒手帳を入れる胸ポケットの縁に、ネームプレートのクリップを噛ませた。

 小学校のペラペラな名札から、急に大人になったような、なんかくすぐったい感じがした。





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