漆黒の王女〈後編〉

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「納得がいかないか…? 私が…こんな話を知っているという事を…くっくっ」

 ゼノスは組手で肘をデスクに着き、続けた…

「私は…城から捨てられ…
 このガルバもまた森に捨て置かれていた…
 私達は、城から少し離れた所に住む優しい夫婦によって育てられてきた…
 本当の家族ではない事は、子供の頃からとっくに悟っていた…共通点が何ひとつないのだから。
 だが、それでもよかった…こじんまりだが、幸せを感じていたのだ。

 私達が成人した頃、育ての父が病に倒れ…命の灯火が極端に小さくなった…
 彼は後の事を頼むと私達に言った…
 母の事と…父の仕事の後継の事と…血の繋がりのない私達をとてもあいしていたと…
 きっと母さんは最後まで言わないつもりだろうから、男同士の話として、知ってて貰いたいと…
 その時に私達は、自分の生い立ちを知ったのだ…

 ガルバの本当の親はもうどうやったって知る術は無かったが…私は違う。
 城で捨てられていたという事は、城にいる者が都合悪さに私を捨てたという事、その者はまだのうのうと城にいるかもしれないという事…
 沸々と…怒りが沸き…

 父が息を引き取り、父の引き継ぎが始まる前に私達は…父が利用していた城への抜け道を使って、城に潜入した。
 抜け道の事は子供の頃から知っていた…父には、城から許された者しか通れない道だから、遊びで使うと酷い目に遭うぞ、と脅されていた。
 今度からは私達が引き継ぐのだからと…構わず通った。

 とはいえ城からの許可はまだだったから、気付かれぬよう、変装しての潜入だった。
 物陰に隠れ、忍び足で城中を回った…
 私を捨てたやつを見つけ出し…ギタギタにしてやると…とにかくはらわたが煮え繰り返っていた…

 すぐに見つけられると思った…緑の同色人種なんて、目立たない訳がないからな。
 だが…どこにもいない…とっくに城を出ていったのか…
 途方に暮れたその時、とある部屋から争うような声が聞こえた…
 どこと思う…?
 くっくっ…ここだったんだよ。
 王が王妃に…狂わんばかりに罵声を浴びせていた…





 よくも長年私を偽りの黒で欺いてくれたな、
 私の傍には生粋の黒しかいらぬ、
 ──私の前から今すぐに消えてなくなれ、と」





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