漆黒の王女〈後編〉

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「サザン、まだ居れる?」

「うん。あっそうだシーナ、お墓参りさせて。ねえさんにも挨拶しなきゃ」

「もちろん。ザザもずっとサザンに逢えなくて寂しがってるよ。
 あっそうだサザン、向こうにね、綺麗なお花が咲いてる所があるんだよ。
 そこでお花摘んできて、お墓にお供えしようか」

「いいね。でも、どうやって?」

「…グライダーで!」

 冗談?? と思ったら、シーナは本気だった。

 バルコニーの隅に小さな物置小屋があるんだけど、そこから、あの日の折り畳み式の白いグライダーを引っ張り出した。

 時々気晴らしに飛んでるんだよね、とはにかみながら前置きして、

「ついておいで!」

 シーナは空へ飛び立った。

 美しい飛び方。やっぱりシーナはグライダー操縦の天才だ。

「姫様ーっ、また、その格好で!
 はしたないって、何度も申し上げてるのに!」

 門前の広場からじいやさんが叫ぶのを、

「あはは、サザンと一緒にお花摘んでくるから、見逃して!」

 シーナが空の上から笑いながら被せるのが可笑しくてたまらない。

「姫様の事、宜しくお願いします。お気をつけていってらっしゃいませ」

 イオさんにそう見送られながら、僕も黒いグライダーで空を滑った──





「シーナぁ」

「なあに?」

 僕は心を込めてその名を呼ぶ。

 ──これまでも、これからも。

 君はその度に潤しい黒髪を揺らしながら振り返って、

 柔らかい黒い瞳を眩しそうに細める。

 その姿は

 僕の心にずっと焼きついたままだろう





 それでも…かまわない?





 親愛なる漆黒の王女へ。










漆黒の王女〈完〉





[リアルタイム執筆期間]
2016年5月30日~11月18日

[改稿終了日]
2021年6月4日

[執筆BGM]
渡り鳥 / Something ELse






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【漆黒の王女】あとがき
【漆黒の王女】おまけ





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