漆黒の王女〈後編〉

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『シーナ? サザン?
 明日、僕とオーリィさんとでそちらに伺ってもいいかい?
 じいやさんとクルーの人達と、ちょっと相談したいんだ』

 ルニアとクルーは近かった。少しばかり丘を登るけど、馬車で半日かからないで来れる。

 おかみさん達女性陣もシーナに逢いたくてついていくと聞かなかった。

 そんな大勢で行っても、と親方とおじさんは苦笑いしたけれど、ヘクトルさんはじめクルーの人達は歓迎の意を示した。

 男ばかりの村なので、女手があると助かるとか。

 とにかく話がまとまって翌日、親方達はお昼前にクルーに到着した。

「シーナぁ!!」

 早速おかみさん、おばさん、アルテがシーナに飛びついた。

 まだ頭部の傷が癒えないシーナはベッドの上で、困惑しながらも嬉しげに彼女達を迎えた。

「シーナちゃん、無事でいてくれてよかった、ぐすっ」

「もうっ、あんた、記憶戻ったんでしょ? 代わりに私達と過ごした日々の事忘れた、なんて言わせないわよ!?」

「あは…そんなわけないよ…みんな、心配かけて本当にごめんね…」

 久しぶりに皆に逢えて、皆の肩を抱きながらシーナは涙ぐんだ。

「さあ! アタシらはただで来た訳じゃないんだ、食事を振る舞わせておくれ。
 これからの事にたっぷり力を蓄えなくては」

 おかみさんのかけ声で、数少ないクルーの女性達も集まって、たっぷりのお昼ごはんを作り始めた。

 その間、僕とシーナ、親方、おじさん、じいやさんとクルーの男性陣で集まって、おじさんの提案に耳を傾けた。

 焼けてしまった漆黒城の修繕工事を行ないましょう。

 命をなくした人達を弔い、中も外も、元通り綺麗にしましょう。

 何ヵ月もかかると思うけれど、ルニアから人手を募ってお城に向かわせます。

 クルーの方達の手もあればもっと助かります。

 皆で力を合わせて、漆黒城をシーナ達に返しましょう。

 ご協力、願えるでしょうか?

 男達はわっと沸いた。やってやろうじゃないか、と。

「姫様、いえ私達も、こんなにもあたたかい方達と出逢えたのですね」

 イオさんが涙をこらえてそうつぶやくと、じいやさんも頷いて、

「本当に…そこまでして下さるなんて。お世話になります。どうか宜しくお願いします」

 角度のよいおじぎを深く深くした。





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