漆黒の王女〈後編〉

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「あんた達こそ、何なんだ…!?
 何故こんな…シーナを、この城を、こんなことにした理由は何なんだ…!?」

 奥歯をギリギリと食い縛っていそうな、サザンの怒りに満ちた顔。

 それと対極に、ゼノスは不気味なほどに冷笑する。

「くっくっ…ユリシーナよ、そいつはお前の護衛か…?
 こんな小さな…くっくっくっ! 笑わせてくれるではないか」

 合いの手でガルバがひーっひと卑下た引き笑いを飛ばす。

 そして冷たい眼差しをサザンに向けて、ゼノスは続けた。

「どこの馬の骨か知らぬが…全てはそこの黒い王女に話した…同じ話をする気は毛頭ないのだ…
 あるとするならば…
 この魔女を火炙りの刑に処そうとしたところを…
 お前が割って入ってきて怒り心頭だという事だ!!」

 言い終わるや否や、ゼノスは杖の握りの部分を直角に折り曲げた。

 すると、そこから炎が勢いよくほとばしって、まるでたいまつのようになった。

 私の足回りに藁が沢山積まれて固められていた。ここに火を点けるつもりなんだ。

 火はすぐに回るだろう。そうなったら、サザンまで焼け死んでしまう。

 サザンお願い、私なんて置いて逃げて。

 サザンの背中に叫ぼうとしたその時、

「そんな事させるもんか…」

 サザンが低く呟いた。

「ザザの遺志を継ぐんだ、
 僕が、
 シーナの命を消させはしない…!!」

「───」

 サザンあなたは…どこまで知っているの…?

 少なくとも…

 私とザザが深く関わっている事を、

 ザザがもうこの世にはいない事を、

 それだけは知ってしまっているんだと…

 サザンのその言葉で解って、視界が涙で揺れた。



 …後ろ手に縛られた縄が、プツッと音を立てて緩んだ。





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