漆黒の王女〈後編〉
43/72ページ
焦げ臭いにおいが風に乗ってやってきた。
お城は火事に焼けて、だからあんなに真っ黒なのか。
おばあさんが言っていた、城の改修工事が始まるという話にも繋がるし、僕の読みはまんざら間違っちゃいないと思う。
だけど、それにしては…人の気配が無い。
遠目にお城を眺めてみても、工事をしている雰囲気も感じられない。
僕は庭からお城に向かって歩きだした。
長い石畳の道を真っ直ぐに歩いた先に階段、そこを上りきると広場に出た。
正面にはだんだんと近づいてきたお城の大きい門、その前にまた階段が僕を待ち構えていた。
この広場に足を踏み入れた瞬間、何故だか分からないけど背筋がぞくっとした。
嫌な気に包まれている気がした。なんだろう。
僕はゆっくり辺りを見回した。
とある一画に…高い木の塀、四方に囲って物置だろうか? 扉は無い、けど上は吹き抜けだった。
僕の背丈の倍ほどの高さだったので、僕はジャンプをして縁を掴み、上半身を乗り上げた。
「…うわあああっっ!!」
僕の視界に入ってしまったモノに、僕は絶叫した。
ズルッと塀づたいにお腹で滑り落ちて、地面に足を着いたらそのままへたりこんでしまった。
なにあれ
なにあれ
なにあれ
吐き気が込み上げて、僕は必死に抑えた。
でも無理だった、僕はそばにあった植え込みに走っていって、そこで嘔吐した。
僕が見たのは
真っ黒に焦げた人の…死体の山だった。
…