漆黒の王女〈後編〉

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 焦げ臭いにおいが風に乗ってやってきた。

 お城は火事に焼けて、だからあんなに真っ黒なのか。

 おばあさんが言っていた、城の改修工事が始まるという話にも繋がるし、僕の読みはまんざら間違っちゃいないと思う。

 だけど、それにしては…人の気配が無い。

 遠目にお城を眺めてみても、工事をしている雰囲気も感じられない。

 僕は庭からお城に向かって歩きだした。

 長い石畳の道を真っ直ぐに歩いた先に階段、そこを上りきると広場に出た。

 正面にはだんだんと近づいてきたお城の大きい門、その前にまた階段が僕を待ち構えていた。

 この広場に足を踏み入れた瞬間、何故だか分からないけど背筋がぞくっとした。

 嫌な気に包まれている気がした。なんだろう。

 僕はゆっくり辺りを見回した。

 とある一画に…高い木の塀、四方に囲って物置だろうか? 扉は無い、けど上は吹き抜けだった。

 僕の背丈の倍ほどの高さだったので、僕はジャンプをして縁を掴み、上半身を乗り上げた。

「…うわあああっっ!!」

 僕の視界に入ってしまったモノに、僕は絶叫した。

 ズルッと塀づたいにお腹で滑り落ちて、地面に足を着いたらそのままへたりこんでしまった。

 なにあれ
 なにあれ
 なにあれ

 吐き気が込み上げて、僕は必死に抑えた。

 でも無理だった、僕はそばにあった植え込みに走っていって、そこで嘔吐した。





 僕が見たのは

 真っ黒に焦げた人の…死体の山だった。





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