漆黒の王女〈後編〉
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僕の中のザワザワが頂点に達した気がする。
そして、様々な推測が僕を襲い、点と線が繋がりそうで繋がらないもどかしさを感じた。
手紙に書かれている大事な友だちとは、シーナのこと?
シーナが着けていた左耳のピアスは、ねえさんのもの?
シーナは、ねえさんが務めに行ったお城の人?
だけど、シーナは記憶を無くしていて…ねえさんの名前や写真を見ても、今まで何の反応も示さなかった。
【永久に家に帰れないかもしれない】なんて、何故ねえさんはこんな事を書いた?
シーナが僕の所へ来たのも、僕の所からいなくなったのも、お城で悪い事が起きているから?
…それなら、今僕がするべき事は…
(…ン…ザン、サザン! 居るんでしょう? 早く出なさいよ! ドーゾ!)
通信機からの声で、僕ははっとなった。
リビングに戻り、慌てて通信機の送受信のスイッチを入れる。
『ほらいた! だから待ってるだけじゃダメなんだってば、パパ!』
アルテだった。こっちに有無を言わさず、続けて捲し立てる。
『パパから聞いたわよ、シーナいないんだって?
ほんともう、何やってんのよ!
シーナ、お迎えが来て本当の家に帰ったかもしれないってのに、のんきに猟なんか出るから』
「えっナニソレ、どういうこと!?」
僕が声を荒げたので、アルテは一瞬ひるんだ様だった。
『アルテちょっと代わって』とおじさんが話に入ってきた。
『サザン聞いて。
シーナには昼前の通信で話しておいたんだけど、昨日、シーナの事を知ってるっぽい人が、大きな男の人だったらしいんだけど、局に来たんだよ。
近い内にその人が、サザンの家を訪ねに来るかもしれないと…伝えたんだよ。
こんな酷い天気の続く季節だし、それは当分先になると踏んでたんだけれど…
でも、アルテの言うように、早々にお迎えが来たのかなぁ。
でもでも、僕らに黙って、ましてやサザンに何にも言わないで、いなくなるシーナじゃないよねぇ…』
おじさんのこの話を聞いて、僕はひとつの決意をする。
僕は通信機に向かって言い放った。
「おじさん。
僕、しばらく家を空けます。
もし、親方かおかみさんから僕達のことで連絡が来たら…
グライダーで出掛けたって伝えておいて」
僕が今向かうべきは──城だ。
…