漆黒の王女〈後編〉

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「おじさん? シーナと話してたの?」

『んっ、サザンかい? 猟に出たって聞いたけど、帰ってきたんだね』

 僕が出てびっくりした様子のおじさん。でも今の僕にはそんなおじさんを気遣う余裕はない。

「うん。それよりおじさん、シーナは? 見当たらないんだけど」

『えっ? いないの?』

「うん…どこにも。
 ねぇ、シーナといつ話してた? 何か言ってなかった?」

『いや、話してたのはもう2時間近く前なんだけど。
 誰か来たみたいって、ちょっと見てくるって言って一旦通信を切ったんだよね。
 シーナから折り返すって言ったから、その間にお昼ごはん済ませて待ってたんだけどねぇ、全然来ないから。
 今こうして掛けてみたわけだけど…』

 言いながら、おじさんは僕の焦りを察知したようだ。

『サザン? もしかして、家の中荒らされてる?』

「いや…渡り廊下は散らかってたけど、他は特に…
 ………
 …ごめんおじさん、また後で、こっちから連絡するから」

『あっ、ちょっ、サザ…』

 ブツッ。

 おじさんの言葉を最後まで聞かずに、僕は通信を切った。

 そしてリビングを飛び出して、また渡り廊下を足早で通る。撒かれた紙々を踏んづけて、玄関の扉を勢いよく開けた。

 ビュウッと入り込んだ風を顔面で受けながら、僕は、さっき家に入る時には気付いていなかったものを見つけた。

 軒先の地面に、何個も重なった靴痕。

 強い風に晒されて薄くはなっていたけど、この村に住んでいる者には該当しない、大きな大きな靴痕を認めた。

 誰だ、これ。

 シーナ、誰と会っていた? おじさんが、誰か来たようだと言っていた。

 そいつと、何かがあって…?

 ドクンドクンドクンドクン、僕の胸騒ぎは止まらない。





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